「屋台ののれん」のデザインを一覧できる冊子にテンション上がる!制作者に収集の裏側を聞いた
お祭りで見かける「屋台ののれん」を図案化しまとめた冊子がX(Twitter)に投稿され話題を集めている。
お祭りで見かける屋台の「のれん」を集めた冊子をつくったのでみてください https://t.co/7oFNuAqqWB
— ハヤシコウキ (@glamgraph_d) 2023年11月28日
「屋台ののれん」を集めた冊子を制作したのは、グラフィックデザイナーとして活躍するハヤシコウキ(@glamgraph_d)さん。投稿された動画には、冊子を手でめくり掲載内容の全貌を見せる様子が映し出されている。
「焼きそば」「りんご飴」「オムレツフランク」「タイラーメン」…よく見かけるものから「そんな屋台があるの!?」と驚くようなものまで、80種ののれんのデザインが収録されたこの冊子。のれんの多様な色や独特のフォントはもちろんのこと、下部がどのようにカットされたデザインなのかも忠実に図案化されている。
また、のれんのバリエーションだけでなく、屋台の並ぶ日本のお祭りの風景写真や屋台の骨組み・パーツ構造を紹介するページもあり、眺めているだけで楽しい気分にしてくれる作りだ。
webで販売開始しました。どこに需要があるか謎の、趣味全開でつくった冊子ですがお手に取っていただけたら幸いです。
https://t.co/RBtjZUtjjS
— ハヤシコウキ (@glamgraph_d) 2023年11月28日
Xユーザーからは「痺れます。すてき」「こんな素晴らしい本があるなんて! レイアウトも見やすく最高!!」「これはアニメ・マンガ業界で需要がある冊子」との声が集まり、その反響もあってか投稿後に初版はすぐ完売したという。
この大変貴重かつ楽しいのれんの冊子はどのように作られたのか? ハヤシコウキさんに詳しい話を聞いた。
5年前から現地に出向きカメラで撮影
「屋台ののれん」を集めた冊子を作ったきっかけを教えてください。
普段から気になったものや面白いと思ったものを写真に撮って集めていまます。その中の一つに「屋台ののれん」がありました。見ていてとても、ワクワクしますよね…!
私は特に文字が好きなので、最初は職人が手で描いたのれんの文字に興味を持っていました。 日本の屋台は同じようなサイズで統一されているので、のれんを工夫して他の店より少しでも目立とう、差を付けようとするわけです。
形や色、素材を変えたり、イラストやキャッチコピーを入れたり、文字を装飾してみたり…。同じ規格の中で、各々がそこからはみ出そうとするパワーみたいなものがのれんに現れていてすごく面白い! と感じ、シンプルに力強く訴えかけてくる「のれん」のデザインにとても惹き込まれてしまいました。
冊子はもともとタイのバンコクで開催されるイベント「BangkokArtBookFair」に向けて作ったもので、海外の方に日本の屋台の魅力を伝えたいという思いが発端にありました。ですが、Xでポストしたところ日本の方たちにすごく興味を持ってもらえたので、とてもびっくりしています。
ちなみに「BangkokArtBookFair」では、初日には売り切れてしまうほど好評だったそう。海外・日本を問わず、のれんは人の心に訴えかけるパワーを持っているようだ。
のれんの図案はどのように収集してきたのでしょうか。
最初に目をつけて写真を撮ったのが5年ほど前でした。
その時はまだ「面白いなー!」ぐらいで冊子にまとめようとは思ってなかったです。プライベートでお祭りに行った際、ついでに撮っとこうという感じで枚数が増えていきました。
収集場所は私が住んでる関東周辺のお祭りが中心です。熊谷うちわ祭り、東京の祐天寺み魂まつり、浅草の浅草寺、あとは年末年始のお寺などでも屋台が出ていますので、見かけた際は必ず写真を撮っていました。一番直近で行ったお祭りで良かったのは、10月に開催していた埼玉の川越祭り。屋台が数100件近く出ていてとても見応えがありました。
ここ数年コロナの影響でお祭り自体が中止になり、屋台を見かけることがほとんどありませんでしたが、最近また各地で復活してきているようで嬉しいです。
東北や関西ではまた少し違った屋台がみれるのでしょうかね? いつか地方によっての屋台の違いなども知れたら良いなと思っています。
収集方法は直接現地に出向き、手持ちのカメラ(RICOH GRⅡ)で撮影しています。
余談ですが、アンパンマンとかドラえもんなどの有名キャラクターが描かれているのれんも結構あって、ツッコミどころが多くて面白いのですが、一部の方から怒られそうなので今回掲載はやめておきました。
冊子の中に屋台の骨組みや使われているパーツを解説しているページがあるのですが、それに関してはYouTubeで組み立て方を説明する動画を何度も見返して、自分の中で整理しながら図を描き起こしています。
のれんはどのような手法で図案化しましたか?
もととなっているのは写真ですが、のれんによってはシワがよっていたり、文字が掠れていたり、一部見えなくなっていたりするのでそのままでは使えません。
「Photoshop(画像編集ソフト)」でしわやかすれを修正したあとに「パス化」し、「Illustrator(グラフィックデザインソフト)」再構築します。
そこからさらに「Photoshop」で、印刷されたようなテクスチャをつけ、さらに微妙な版ズレ(多色刷り印刷物で起こる文字や絵柄の色ずれ)しているような加工をします。これによって懐かしみのある、少しだけレトロな印象になるように仕上げます。
1つののれんにかかる処理時間は30分〜1時間ほどでしょうか。くだらないですが結構手間暇かけています(笑)。根気のいる作業ですが、仕事が終わったあと毎日少しずつやっていました。
編集・執筆・レイアウト・写真を全て私一人でこなしましたが、本業がグラフィックデザイナーなので、冊子をレイアウトしている時が一番楽しかったです。いち同人誌として大目に見ていただければ幸いです。
ハヤシコウキさんによると、好評を受け増刷の手配も済んでおり、12月の中頃に自身のHP上で50部を再販予定だそう(2023年12月6日現在)。
「面白いな」という小さな思い付きから5年間のリサーチを経て制作された「屋台ののれん」冊子。のれんという小さなキャンパスに「目立ちたい」と思いを込めて作られたデザインの数々は、人の心くすぐる魅力を秘めていたようだ。