第8話「閉じ込められた龍」パート2

脳内妄想艦これSS 独自設定厳重注意
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

__ 頭痛の種は 一つ、また一つ __

2016-07-16 18:03:30
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__ 第8話「閉じ込められた龍」パート2 __

2016-07-16 18:03:37
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8-2-1「どんな人が来るんでしょう…」 正規空母配属の通達があった翌日。綾波、浜風、鳳翔の三人は指定された時刻前、島の波止場で待機していた。 「そうねぇ、また賑やかになると良いのだけど」 不安そうな綾波とは対照的に、鳳翔はにこやかな様子だ。 そんな鳳翔の横顔を浜風はちらと見る。

2016-07-16 18:04:53
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8-2-2「(結局…理由は分からなかったな)」 入渠中に扶桑から聞いた『鳳翔さんは戦場に立つ事は出来ない』という話。 扶桑はその後詳しい理由を話す事は無かったし、提督や本人には聞かないよう頼まれた。 「(鳳翔さんだけじゃない。綾波の話だと扶桑さんも妙に研究に詳しいらしいし…)」

2016-07-16 18:06:13
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8-2-3 浜風は数日前に綾波から聞いた『艦娘の血』の話と、石の話をした際の扶桑の様子を思い起こす。 「(どうやらこの島の住民達は、裏に私達の知らない部分をまだまだ抱えてる…)」 「あ!あれがそうかな?」 浜風の思案は綾波の声で中断される。 指さす先には、島を目指す船影が一つ。

2016-07-16 18:07:02
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8-2-4 船影はみるみる内に大きくなり、島へと到着した。 波止場に横づけされたその船体は綾波も浜風も見覚えがある。自分達も同じ船に乗せられ、この場所に降り立ったのだから。 …だが、その船から降ろされて来た艦娘の状態は、明らかに異質だった。 波止場の三人もその様子に唖然とする。

2016-07-16 18:08:47
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8-2-5「さっさと歩け!」 地面に付きそうな程に長い白い髪を後ろで編み込んだ艦娘。 彼女は目隠しと手枷を付けられた状態で、3人の兵卒に誘導される形で船から出てきた…さながら、囚人のように。 「目隠しと手枷を外してやれ」 タラップを降りきり、リーダーと思しき兵が指示を飛ばす。

2016-07-16 18:10:55
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8-2-6「お前達、彼奴の配属についての通達は受け取っているな?」 拘束を外させている間、リーダーは綾波達に声を掛けてきた。 「あ…はい」 「ならいい、彼奴の『管理』は任せたぞ。もう沢山だ」 それだけ言うと兵達は引き上げの準備にかかる。 艦娘はと言えば、その場に座り込んだままだ。

2016-07-16 18:12:28
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8-2-7「ここで永劫鎖に繋がれているんだな!」 リーダーは最後に刺々しく言い放つと、タラップに足をかける。 一体何が… 綾波が頭で理由を考えようとしたその瞬間、事は起こった。 「ぐはぁ!?」「はぐぅっ!!」「げほぉっ!?」 船に上がろうとしていた兵士達が次々に吹き飛ぶ。

2016-07-16 18:14:34
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8-2-8 視界の端に見えたのは、それまで波止場に座り込んで俯き加減のままでいた艦娘が突如跳ねたところ、そして乗船しようとする兵士達に凄まじい速さの蹴りを浴びせてまわったところ。 リーダーに至っては振り向いた顔面に膝がクリーンヒットし、歯が吹き飛ぶのが目にとまった。

2016-07-16 18:14:45
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…理解が追い付いた時には、派手な水飛沫がが3つタラップ脇に上がっていた。

2016-07-16 18:15:50
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8-2-9 ふんっ、と不機嫌そうに鼻を鳴らすと、その艦娘は茫然としている三人のもとへ近寄り、お辞儀をし、名乗る。 「お見苦しい所をお見せしました。…雲龍…と申します」 「あ、あの…兵士さん達を…」 兵士達を気遣いおろおろする綾波を他所に、雲龍はさっさと歩き出そうとする。

2016-07-16 18:16:20
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8-2-10「ちょ、ちょっと…!」 制止しようとする浜風だが、彼女は意に介していないようだ。 …だがその時ー 「ふわっ!?」 身の丈程もある雲龍の編んだ髪。歩いた拍子に揺れた先端が履物のヒールに引っ掛かってつんのめり、雲龍は『びたんっ』という漫画のような音を立てて派手に転倒する。

2016-07-16 18:17:44
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8-2-11「あの…大丈夫ですか?」 鳳翔が声を掛けるも、雲龍は身を起こさない。 「あ、あの…」 変な場所でも打ってしまったか。それとも恥ずかしくて動けないのか。 そろりそろりと近寄った綾波は、雲龍の顔を覗き込んでぎょっとした。 そこに垣間見えたのはそんな感情ではなく…

2016-07-16 18:18:33
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凄まじい苛立ちと『憎悪』。 「…お見苦しい所をお見せしました」

2016-07-16 18:19:50
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8-2-12 蹴落とされた兵士を介抱するため鳳翔は波止場に残り、執務室までは二人で雲龍を先導した。 …最悪な時間だった。綾波と浜風は掛ける言葉を見つけられず、雲龍はまた移動の間中苛立ったオーラを纏い続けていた。 おまけに彼女は時々転倒しそうになり、都度不機嫌の色を濃くしていた。

2016-07-16 18:21:11
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8-2-13「こっ、ここが司令官の執務室ですっ!」 執務室の扉の前に着いた時、綾波はまさに救われたような気持ちだった。 これ以上この空気の中に居るのは息が詰まって精神衛生上宜しくない。 「司令官、お連れしました」 浜風のノックに、風見が応える。 「あぁ、入ってくれ」

2016-07-16 18:22:57
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8-2-14 しかし、雲龍を伴って執務室に入ると、綾波と浜風は目を疑った。 「(えっ…?)」 執務室に入った途端、それまでの雲龍の剥れた表情は一転し、明らかに狼狽え、その目には驚愕が現れた。 「あー…お前さんが新配属の正規空母で違いないか?」 風見は硬直している雲龍に声を掛ける。

2016-07-16 18:24:19
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8-2-15「は、はい…雲龍型航空母艦1番艦…雲龍、です」 「あーっと…緊張してるか?先ずは肩の力を抜いてくれ…私がここを預かっている風見だ、以後宜しく頼む」 「はい、その…宜しくお願いします…」 目は泳いでいて、動揺は誰の目から見ても明らかだった…が。 「(何で急に?)」

2016-07-16 18:25:30
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8-2-16「さて雲龍、着任早々で済まないのだが、ここは辺境な上に人手不足でな。特に航空戦力は無いに等しく、前線に立つ空母はお前が初めてという有様だ…そこで、隊列に加わってもらう前に一度艦載機を飛ばして見せて貰いたいのだが」 …雲龍の感情がまた動いた。今度は明らかに…表情が暗い。

2016-07-16 18:27:02
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8-2-17「…艦載機…」 「…どうした?」 …言葉を繋ぎつつも風見は雲龍の感情の変容を観察している。そして、彼も執務室に入った段から雲龍の様子がおかしい事には勿論気付いている。だが前例から考えてもこの浮かない表情は尋常ではない…以前の五十鈴でさえここまでではなかった。

2016-07-16 18:28:03
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8-2-18「いいえ…何でも」 「そうか。それなら、一時間後位でどうだろう?この建物の裏手には演習場がある。場所はそこで…それまでは自室で休憩してもらうのが良いか、今案内役を呼ぼう…」

2016-07-16 18:28:27
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8-2-19 雲龍の去った執務室。扉が閉まり切った後、たっぷりと間を置いてから風見は綾波と浜風に声を掛ける。 「あれは、何かあったのか?」 「えーっと」 …綾波は波止場からここに至るまであった事を説明した。 拘束状態での下船、転倒、不機嫌な様子、憎悪の表情…そして、兵士の一件。

2016-07-16 18:29:44
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8-2-20「あー、頭痛の種が一個増えたのだけは確実に理解した」 話を聞き終えると、風見はいつも以上に盛大な溜息をつく。 「鳳翔が今この場に居ないのはそのせいか。それに何だ、拘束?オマケによくコケそうになってたって?」 「はい、何度も。でもそれについてはちょっと見覚えがあります」

2016-07-16 18:30:49