第8話 「閉じ込められた龍」 パート1

脳内妄想艦これSS 独自設定要注意
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

__ 第8話「閉じ込められた龍」パート1 __

2016-07-06 23:01:35
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

8-1-1「全く、初期の適用は結局全て失敗に終わったという事か!」 有馬中将の怒声が高重要性観察房に響き渡る。 中将の怒鳴り声があまりにも大きく、その一瞬観察房のにエコーがかかったように響き渡っていくも、次の瞬間には清潔な見た目ながら陰鬱な空間が戻って来る。陰鬱な、静寂。

2016-07-06 23:03:26
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8-1-2「残念ながら。適用された38名の内3名は艦娘として完成せず、35名は混濁が続いています」 中将の怒鳴り声には慣れているのか、秘書と思しき女性は特に竦みあがる事も無く平淡に資料を読み上げる。 「理論上は上手く行く予定だったのに…!やはり割れてしまったのが問題だったか…!」

2016-07-06 23:04:32
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8-1-3 中将は癇癪を起こし手近な観察房の窓を叩く。ガラスは強化されており、割れたりすることは無いが大きな音を響かせる。 これにも秘書はとりわけ反応しない。 …しかし、秘書の女性以上に、観察房に入れられた人間達は無反応である。 熟睡していると言うべきなのか、横になったままだ。

2016-07-06 23:06:00
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8-1-4「それで、例の『コア』はどうされますか、中将」 有馬はアゴを人差指と親指で撫で回しながら考える。 「…何とかして代替えを用意する必要有り、だが其方は後回しだ。割れた側も中央に送って検証する必要性が出てきた…ダミーの作戦を此方で用立てる。手配自体は任せたぞ」

2016-07-06 23:07:17
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8-1-5「承知しました。それと…T-83号についてですが」 「あいつについては知らん!しぶとい奴めが…数日中に北か東か南、適当な『場所』に送るようにだけ手配しろ!」 不満を全身から滲ませながら、有馬は観察房の出口をくぐって行く。 残った秘書は黙ったまま手元の書類をめくる。

2016-07-06 23:08:01
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8-1-6 しかし、ポケットからペンを取り出す秘書の表情は既に先程までの感情の無いものでは無くなっている。 「そうね、人任せにしたんならどんな結果になってもそれは自己責任…」 不敵な笑みを浮かべて眼鏡を持ち上げ、彼女はペンを走らせる。 それが『彼女』の望む結果に近づくように。

2016-07-06 23:09:08
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8-1-7「貴方の道はまだ途絶えないわよ」 彼女はT-83と刻印された独房に笑みを飛ばし、その場を立ち去った。 …T-83号独房内。 女性が一人…身の丈程もある白い髪を無造作にベッドの端から零し、他の独房の住人同様横たわっている。 だが他と違うのは彼女が目を開けているという事。

2016-07-06 23:09:50
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8-1-8 先の有馬中将同様に全身から不満のオーラを滲ませているその女性は、ただただ不貞腐れた顔で、何の装飾も無い独房の白天井を見つめていた。 …それがただの「退屈」である事は、誰の目から見ても明らかだった。

2016-07-06 23:10:56
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8-1-9「わーわーわー!ちょっともー!追って来ないでー!」 監獄島から南の海上…警備隊からの本部に入った連絡により、比較的大規模な深海棲艦の部隊南西の島々へとのが接近中である事が判明。『鳶』の面々にはこの日、敵勢部隊の掃討にあたる艦隊の裏で敵の増援を食い止める任務が与えられた。

2016-07-06 23:12:14
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8-1-10 増援部隊の更に背後を取った鳶の面々は、初めの内は順調に敵を退けていた。 しかし、反撃に転じてきた増援部隊の中に混じっていたある深海棲艦によって戦況を逆転されてしまっていた。 …眼から迸る青い閃光が特徴的なヲ級である。 「こいつら!他の艦載機より動きが鋭い…!」

2016-07-06 23:13:12
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8-1-11 浜風は頭上から高速で突っ込んでくる爆撃機を間一髪で避けると、威嚇目的の魚雷を手近なロ級に撃ち出し、全速力で飛び交う爆弾達を撒きにかかる。魚雷が当たったか確認している余裕は無い。 「二人は回避に徹して!何とか数を減らしてみるから!」 すれ違いざまに五十鈴が叫ぶ。

2016-07-06 23:14:16
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8-1-12「五十鈴さん!?いくらなんでも無茶…」 綾波の制止は彼女を狙うト級の砲撃に遮られてしまう。 「あぁ、もうっ!!」 綾波はパラレルスライドで目前を狙った砲撃をかわすと、両手の連装砲を束ねて砲撃をト級に叩きこむ。 「やっぱり制空権を握られてるのは苦しいよ…!」

2016-07-06 23:14:47
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8-1-13 並程度の制空力が相手ならば五十鈴の対空射撃も有り戦闘で劣る事は無い。 だが、編成に航空戦力を持たない「鳶」にとってやはり空母は脅威、強力な空母ともなれば不利は避けられない。 「くうぅっ…!」 五十鈴は前線で集中砲火を捌きながら1機、また1機と艦載機を落としていく。

2016-07-06 23:15:45
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8-1-14 だが、無理を通し続ける事は出来ない。 艦載機をかわした際の隙を突かれ、砲撃が五十鈴の足に直撃する。 「あぐうぅっ!!」「五十鈴さんっ!」 バランスを崩した五十鈴に爆撃の魔の手がー… ー! 「くうっ!」 五十鈴が被弾する直前、扶桑が覆い被さるようにして彼女を庇う!

2016-07-06 23:17:28
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8-1-15「っ…主砲!副砲!撃てーっ!」 傷を負いつつも扶桑は手近な敵に向けて反撃。 「綾波!」 この一瞬、扶桑と五十鈴に攻撃の目が集中! 「うん!」 浜風と綾波は一転攻勢に転じると、すれ違う手近な駆逐艦と軽巡に雷装を惜しみなく撃ちこみながらヲ級に突っ込んでいく!

2016-07-06 23:19:09
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

8-1-16「こっのぉおおお!!」 激しい銃撃が掠め、二人の身体にも傷が増えていく。だが、直撃を回避しつつも二人は速度を落とさない。そして、遂に肉迫距離! ドドッ!!ドガァッ!! 浜風と綾波の接射が連続してヲ級に命中し、体が後方に吹き飛ぶ… だが、ヲ級はまだ沈むに至っていない!

2016-07-06 23:20:28
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

8-1-17「そんなっ!?」 綾波は一瞬落胆するが、その時後方で扶桑が声を張り上げた。 「二人とも射線を空けなさい!!」 綾波と浜風は条件反射で飛び退くー 直後、吹き飛んだヲ級の身体に扶桑の放った砲撃が続けざまに叩きつけられる!

2016-07-06 23:24:14
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「や、やった…」 水底へ消えていくヲ級…だが戦闘は終わってはいない。 「油断しないで!周りを片付けるの!」 五十鈴の苦痛混じりの声。 息つく暇も無いとはまさにこのことか。

2016-07-06 23:25:48
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8-1-18「大破1、中破1、小破2か…よくこの程度の被害で済んだものだ。敵航空戦力を見誤った私の失敗だ…」 風見は心底申し訳なさそうに五十鈴達に言う。 「…任務の達成、見事だった。4人とも直ぐに入渠して来るといい」 風見に達成報告を終え、4人はドックへと向かった。

2016-07-06 23:27:47
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8-1-19 4人が部屋から出ていくと、風見は大きく溜息をつく。 「しかし、参ったな…空母の配属がない限りあいつらには苦労をかけっぱなしになってしまう…」 「そういう事であれば」 独り言への突然の返事。風見はぎくりとする。 「…って、お前か」 執務室に入ってきたのは大淀だった。

2016-07-06 23:29:28
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8-1-20「これは良い知らせに当たるかもしれませんね。提督にとっては悪い知らせ半分ではあるでしょうけど」 大淀は数枚の電報を風見に手渡す…見ずとも内容の察しはついたが。 「…正規空母の配属か。最近は一体どうなっている?第肆型実装以後失敗例が逆に増えているとしか思えん」

2016-07-06 23:30:21
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8-1-21「その辺りは相変わらずだんまりですので何ともですが…あ、到着は明日みたいです。皆さんにも伝えておきますね」 「あぁ、頼んだ…」 大淀に伝言を頼み、風見は再度手元の資料に目を落とす。 果たして今度はどんな艦娘がやって来るのか。 …今度もまた、助ける事は出来るのか…

2016-07-06 23:32:03