Side Story1 「艦娘の血」

脳内妄想艦これSS 独自設定要注意
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS-1-1「スポーツ万能タイプか。確かにそんな雰囲気ではあるな」 監獄島鎮守府の食堂。島に住むほぼ全員が集まったとしても、埋まるのは広い食堂の僅かに一角だけである。 傍から見ればどうしても物寂しく見えてしまう光景。 その中にこの昼は五十鈴、綾波、風見、鳳翔の4人が居た。

2016-07-03 15:02:39
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SS-1-2「特にテニスは大会でも成績を収めてて…そのおかげもあって今に至った部分もあるんですけどね」 五十鈴が『杏理』の意識を取り戻した翌日、鳳翔の作った定食を頬張りながら4人は彼女の人としての過去の記憶を辿っていた。 「艦娘になったという事にか?どういう繋がりが」

2016-07-03 15:04:16
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SS-1-3「私は…『杏理』は、艦娘になる前に交通事故に合っています。どうも怪我の絶えない運命みたいですね」 自分で言いつつも肩をすくめる五十鈴。 「信号無視の車に撥ねられ…命に別状は無かったものの、半身不随となりました。これが、当時の私の心にとっては回復しようのない痛手でした」

2016-07-03 15:06:10
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SS-1-4「夢を断たれてしまったのですね…」 呟くように言う鳳翔に、五十鈴は黙って頷いた。 「私は失意から生きる事を放棄しようとしました。そんな時、運び込まれていた舞鶴の病院にやって来たのが、艦娘化プロジェクトの研究者達でした」 「…情報を嗅ぎ付けて来たわけか。ハイエナ共め」

2016-07-03 15:08:08
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SS-1-5 風見は嫌悪を籠めて吐き捨てた。 「それでも、その時の私にとってはまたとない話でした。今ならちゃんと思い出せます…突然病室に入って来た人達、私の身体を機密の試験に提供して欲しい、と…機密を聞けば後戻りは出来なくなると告げられ…私は周りの反対を押し切って誓約書に印を」

2016-07-03 15:11:51
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS-1-6「あの、司令官、艦娘になると怪我は治るものなんですか?」 質問の主は綾波だ。確かに現在の五十鈴からは交通事故の後遺症は見て取れない。 「身体の構造が書き換えられるプロセスの間に身体の状態は正常に戻るんだ。仮に死にかけだったとしても完治する…条件は幾つかあるが」

2016-07-03 15:12:39
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SS-1-7「条件の1つは『艦娘化』でなくてはならないという事。『艤装型』も身体は艦娘になっているハズなのだが、此方では傷は癒えない。これも『艤装型』に人選が必要な理由の1つとなっている。 そして、条件の2つ目は「死んでいない事」だ。生きた人間しか艦娘化の反応は起こらない。

2016-07-03 15:14:54
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SS-1-8「そして、身体の細胞自体は活発な方が望ましい。要するに五十鈴…事故当時の杏理君のような人間は最適な被験者という訳だ」 風見は烏龍茶を呷ると五十鈴に向き直る。 「良ければ誓約書の下りから今の姿になるまでの話も聞かせてもらえるか」 「はい。覚えている事は少ないですが…」

2016-07-03 15:16:46
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS-1-9 五十鈴の話では『機密』の話に入った後、杏理は艦娘となる事、それに伴い今現在の記憶は無くなってしまう事を告げられた。しかし、自分の身体の『使い道』に魅かれこれに承諾した彼女は、病院から目隠しをされたままどこかの施設に移送され、注射器で何かを投与されたらしい。

2016-07-03 15:18:25
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SS-1-10 その直後から意識は朦朧とし始め、僅かに覚えているのは横になった体位のままで狭い機械の中に通された事だという。 …その辺りで杏理としての記憶は途切れ、次に目が覚めた時には記憶も身体も『五十鈴』に変異。舞鶴に配属され、舞鶴での活動を経て今日に至るようだ。

2016-07-03 15:20:22
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SS-1-11「どこかにそれっぽい資料とか無いのかな~」 昼に話を色々と聞いて『艦娘化』について興味を刺激された綾波は、風見の許可を得て資料室を訪れていた。 とはいえ、研究の根幹が本土に移ったタイミングで研究資料自体は人と一緒に引き払われてしまっており、目ぼしい物は殆ど無い。

2016-07-03 15:21:29
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SS-1-12「私や兄さんの変化と、五十鈴さんの変化はやっぱり全然違うみたいだし、ちょっと位勉強しておいた方が役に立つかなって思ったんだけどな…」 埃っぽい書棚の間で綾香は溜め息をつく…と、不意に通路の向こうから聞き覚えのある声が近づいてくる。 「あら、何かお探しかしら?」

2016-07-03 15:23:36
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SS-1-13「あっ、扶桑さん?」 「呟きからして、艦娘化のお勉強かしらね?」 …ばっちり聞かれてしまっている。 資料室に入った時、人の気配はしていなかったと思ったのに、ちょっと迂闊だったかもしれない。 「でも、残念ながらここには当時の資料は残っていないわ」 「そうなんですか…」

2016-07-03 15:24:33
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SS-1-14「でも、そうね…私の知っている事なら教えてあげられるわ」 手招きに従って資料室の奥へ移動すると、ホワイトボードが置かれた小さなスペースが現れた。 「えっと、どこから説明したらいいかしら?」 扶桑はホワイトボードに置いてあったマーカーが使えるか確認しながら綾波に聞く。

2016-07-03 15:27:45
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SS-1-15「どこと言われると、うーん…いっぱいありすぎて。研究の最初の方とか、どうやって艦娘になっているのかとか…聞いてみたいです」 「それなら『第壱型』とその前段階の辺りを説明するわね。艦娘化のプロジェクトが発足してから、最初に採用されたのがこの方式なのだけど」

2016-07-03 15:29:19
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS-1-16「実際にはそこに辿り着くまでも長かったみたいね。それはそうよね…人の体を艦娘に作り変えるなんて、おいそれと出来る事じゃないし」 扶桑はボードに『第壱型』と書くと、吹き出しを加えて『前段階』と添えた。吹き出しの中には、移植、投薬等々様々な単語が書き込まれていく。

2016-07-03 15:31:07
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS-1-17「綾波ちゃんがここへ来た日に提督がファイルを見ていたわね。あれがこの時期の内容なのだけど、この時期が一番無茶なやり方をしていたと言えるかも知れないわ…」 ボードに文字を書き込みつつ、扶桑の表情は暗くなる。 「そして、間もなく第壱型のベースとなる特性が発見された」

2016-07-03 15:32:11
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS-1-18「艦娘の…魂?組成?とでも呼ぶべきなのかしら。これを直接的に人が得ることで、『人の体と心が艦娘の側に引っ張られて徐々に変異を起こしていく』という特性ね」 「五十鈴さんは注射器で何かを投与されたって言っていましたが…目に見えない魂なんてどうやって扱っているんですか?」

2016-07-03 15:33:26
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS-1-19「便宜的に魂という言葉を使っているけど、ホントにそういうものかは不明なの」 曖昧な答えを返しつつ扶桑は新たな文字をボードに足す。 「鍵になっているのは私達を元来作り出していた手段である『建造』だから…艦娘化に用いられる薬剤はこの技術を参考にして生成されているわ」

2016-07-03 15:34:39
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS-1-20「あれ、でも建造自体そのメカニズムって」 扶桑もその点は重々承知、という顔だ。 「ええ、『何故そうなるか』は解明されていないわね。故に、オリジナルの時代から艤装型、艦娘化に至るまで、過程は作成されたけど大元の部分は不明なままの物を使用していると言って間違いは無いわ」

2016-07-03 15:36:32
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS-1-21「建造の応用とオリジナルの艦娘のDNA情報等を複合させて作られた液体…」 扶桑は人と艦娘を結び付けた矢印の上に簡単な注射器の絵を描くと、そこに単語を書き込む。 …『艦娘の血』

2016-07-03 15:39:15
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

「その液体は、赤黒くて血のように見える事から『艦娘の血』なんて呼ばれたりもしてた。少なくとも第参型と呼んでいる方式までは基本これに改良を重ねて使っていたと考えられるわ…なので、細かい部分は変わってるかもしれないけど、五十鈴さんが注射されたのも、恐らくはこれね」

2016-07-03 15:40:16