ハコスタアイドルフェスティバル Ep0
- t7s_masarugi
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【Episode 00 ハコスタアイドルフェスティバル!】 目の前のモニターには、二人の女性が映っていた。 一人は、伝説的なアイドルグループであるセブンスシスターズの一員、羽生田ミト。 もう一人は、僕らのナナスタのアイドル、春日部ハルだ。
2016-07-14 20:25:22彼女たちはお互いに炎を操り、戦っている。 春日部ハルは自分の心を写し出した様な真っ赤な炎を。 羽生田ミトは視た者の心を奪うような、青い『ブルーフレイム』を。 「どうしてこんなことになってるんだ……」 僕は今日の出来事を思い出してみることにした――。
2016-07-14 20:43:56―――――――――― というわけで本日の朝、僕はナナスタにいた。 ナナスタとは『次世代アイドル劇場型スタジオ777』の略称であり、僕はそこの支配人をしている。 今日も朝からレッスンがあり、早く来て掃除をしているハルのような子もいれば、毎回ほぼ遅刻のモモカのような子もいる。
2016-07-15 03:34:11「支配人さん、お掃除手伝ってもらってありがとうございます!」 と、掃除をしながら太陽のような笑顔で声を掛けてくれたのは春日部ハル。 このナナスタの一人目のアイドルにしてみんなのまとめ役だ。 彼女は趣味が掃除らしく、ナナスタの掃除も自主的にしてくれている。
2016-07-15 03:51:54僕も別に掃除が嫌いなわけではないが、好きなわけでもないので、素直に尊敬してしまう。 「いや、大丈夫だよ。丁度手が空いてたし……。ハルこそ、いつも掃除してくれてありがとう。助かってるよ」 「いえいえ、好きでやっているので! そういえば今日はサンボンリボンのライブがありますよね!」
2016-07-15 03:57:05「うん。昼頃だし、ライブには間に合うようにここを出なきゃ」 サンボンリボンとは、ナナスタのメンバーから選出された『さわら』、『かじか』、『しぃちゃん』の3人で結成されたガーリー・ポップユニットだ。 この3人は実際に姉妹であり、結束も強い。今回のライブもきっと成功するだろう。
2016-07-15 04:02:16奔放な性格のサワラと天然なカジカにいつもシンジュが振り回されてはいるが……。 「おはようございます~」 と、少し眠そうに入ってきたのは角森ロナ。 「おはよう、ロナ」 「おはようロナちゃん!」 「えへへ……今日は転ばずにここまで来れました!」 嬉しそうに笑うロナ。
2016-07-15 04:06:37「いや……いつも転ばずに来てほしいんだけど……」 怪我が心配だ。アイドルなのに。 怪我と言えば怪我で入院している『夜舞サヲリ』を思い出す。彼女は毎回「大丈夫なのかそれ……?」と聞きたくなる(というか聞いた)レベルの怪我を頻繁にしているのだが、なぜかいつも元気である。すごい。
2016-07-16 02:31:32サヲリもサンボンリボンのライブを観られないことを残念がっていたが、やはり体が大事だ。 ただ、彼女の回復力はすごいから案外1日ぐらいで退院してくるかもしれない。 「おはよう、お兄ちゃん、ハルさん、ロナさん」 「おはよう、マコトちゃん」 「お、おはよう……マコト」
2016-07-16 15:14:00玉坂マコト。ここ、ナナスタのアイドルであり、僕以外の男性が嫌いという変わった子で、僕をお兄ちゃんと呼ぶ。 彼女とは色々あった……。 が、今はみんなとももちろん僕とも打ち解けていて大切な仲間である。 「さてと、僕はこの書類を向こうに運んでくるよ」
2016-07-18 20:02:43と、動きだそうとした時。 「あっ」 足が滑った。 「支配人さん!?」 「支配人しゃん!?」 「お兄ちゃん……!?」 支えを失った体は見事に倒れ、頭はテーブルに衝突する。 ゴッ、という鈍い音と痛みと共に、僕の意識は失われていく――。
2016-07-18 20:06:00―――――――― 「イタタタタ……」 起きると同時に、頭に痛みが走る。 「ここは……?」 辺りを見渡すと、ここはナナスタの医務室のようだった。 レッスンの時に怪我をしたり体調が悪くなったときのために医務室があるのだ。応急処置することとベッドで眠ることくらいはできる。
2016-07-18 20:08:38どうやら僕はそのベッドで寝ていたようだ。 「あ、支配人!」 「コニーさん! 今は何時……」 「もう! 支配人ったらダメダメだず! ナナスタについたら支配人が気絶しててみんなで運ぶの大変だったんだよ?」 「す、すみません……」 コニーさん、フルネームは六咲コニー。
2016-07-18 20:47:00このナナスタのマネージャーであり、自称、敏腕ジャーマネ。 いつも超絶高テンションだが、思いやりに溢れていて、ナナスタのシスターズ候補生たちの良き相談役だ。 ただ彼女はかなりのトラブルメイカーであり、いつも事件を巻き起こしていて、その始末にいつも僕は追われている……。
2016-07-18 20:50:09「もう……女の子に重いものを運ばせちゃいけないんだよ?」 「はは……気を付けます、ありがとうございました」 「まったく……今日は『ハコスタアイドルフェスティバル』の日なのに……」 ……え? 「ハコスタアイドルフェスティバル……?」
2016-07-18 20:51:45「なーに『ハコスタアイドルフェスティバルってなんですか?』みたいな顔してるのさ、支配人!」 「いや、あの……ハコスタアイドルフェスティバルってなんですか?」 そんなものは聞いたことがない。 「え……」 驚いた顔をするコニーさん。 「えええええええええええっ!?」
2016-07-18 20:53:47―――――――― 「支配人さんが……記憶喪失……!?」 驚くハル。当然だろう。僕も驚いている。 「いや……記憶喪失ではないよ、ハルのことも覚えてるし、今日サンボンリボンのライブがあることだって覚えてる」 でも。 「ハコスタアイドルフェスティバル……っていうのがなんなのか……」
2016-07-18 22:26:43全く知らない。覚えていないんじゃない。知らないんだ。 僕は1つの可能性を考えていた。 パラレルワールド。 平行世界とも呼ばれ、簡単に説明すれば、この世界と平行して存在するもう1つの世界のことだ。 僕は、その世界へ頭を打った衝撃で飛ばされてしまったんじゃないか?
2016-07-18 22:32:42『ハコスタアイドルフェスティバル』がなかったハズの世界から、『ハコスタアイドルフェスティバル』があった世界へ。 だとしたら、元の世界へどうやって戻ればいいんだろう。頭をまたぶつければ戻れるかもしれないが、そんな度胸はないし、自分から気絶するほどの勢いで頭を打つのは不可能だ。
2016-07-18 22:34:46「……まあ、なんとかなるさ!」 現状、戻れる方法はないし、こんなことをナナスタのみんなに言ったら頭を打った衝撃で頭がおかしくなってしまったんじゃないかと思われてしまう。 「で、ハコスタアイドルフェスティバルとは一体なんなんですかね……?」
2016-07-18 22:37:58「ハコフェスとはね、支配人……」 ごくり。 「アイドルたちが己の誇りを賭けて仮想空間で戦うんだず!」 「いや、わけがわからないですよ!」 「なんでよ、支配人!」 「なんでアイドルがいきなり戦うんですか! 全然フェスティバルじゃないですよ!」 「お祭りって感じじゃん!」
2016-07-18 22:42:34「どう思うハル!?」 「メラメラって感じです!」 そうかもしれないけどそうじゃない! 「でも、仮想空間で戦うとか危険じゃないですか!? そもそもそんなことできるんですか!?」 「できるし安全だよ! いまは西暦2034年だよ!? 昔じゃあるまいし余裕だよ!」
2016-07-18 23:38:13「そんなこと知ってますけど仮想空間とか聞いたことないですよ!?」 「それは支配人が記憶喪失だからだよ! ここは栄華を極める国指定国際娯楽都市区画、『TOKYO-7th』だよ!? 仮想空間ぐらいある!」 「うう……」 そう言い切られるとそうなんじゃないかという気になってきた……。
2016-07-18 23:40:45「……あ」 わかったぞ。これはドッキリなんだ。本当はハコフェスなんてなくて、みんなは僕を驚かそうとしてるんだ。 ふふふ……ここは気付かないフリをして驚いてあげよう。 「どうしたの支配人?」 「いや、なんでもないです」 「……ならいいんだけど」 不思議そうなコニーさん。
2016-07-19 00:53:47「ところで、どうしてみんなが仮想空間で戦うことになったんです?」 「ふっふっふー……実はとある有名なゲーム企業が、『仮想空間で特殊能力を使って戦うゲーム』を開発してたみたいでね……その企業のお偉いさんがなんと!」 「なんと……?」 「ナナスタのアイドルたちのファンでね……」
2016-07-19 00:59:40