第8話 「閉じ込められた龍」 パート4

脳内妄想艦これSS 独自設定注意 雲龍さん大暴れ
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

__ 第8話「閉じ込められた龍」パート4 __

2016-07-23 21:50:46
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

8-4-1「落ち着いたか?」 執務室の角にある対談用のスペース。 取り乱していた雲龍こと…照海も不機嫌な顔こそしていたが、今は風見と向かい合っていた。 「では、そろそろ話してもらおうか。俺が佐伯から消えた後、お前に何があったのかを」 「…直後がどんな感じだったかは多分想像通りだ」

2016-07-23 21:52:07
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8-4-2 照海は重い口を開き始める。 「上官様が居なくなっちまったからな、俺の配属も変更になった…けど、どこへ行っても厄介者扱いされて、タライ回しみたいな状態だった」 「だろうな」 風見は話を聞きながら茶を淹れ、照海にも勧めた。 「お前のやり方は昔から荒過ぎるんだよ」

2016-07-23 21:53:17
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8-4-3 照海はフンと鼻を鳴らす。 「その程度なら俺だって慣れっこだ。けど、2週間程前にとびきりおかしな事が起きた…藤見少将がな…死んだんだ」 「何だと?」 口に湯呑みを運ぶ最中だった風見の手がピタリと止まる。 「あの藤見少将が?死因は?」 「…殺人、ということにされている」

2016-07-23 21:53:51
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8-4-4「死んだ時刻は深夜帯と見られてる。そして、調査の進む内に、その時藤見少将に接触出来た人物は消去法で俺のみ…という事になった」 「お前がやったのか?」 風見が若干緊張した視線を照海に送る。 「馬鹿、んな訳あるか。だが、調査が進んでも他の可能性は自殺位しか出て来なかった」

2016-07-23 21:54:51
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8-4-5「彼が自殺、とは確かに考えにくいな…」 藤見少将は佐伯に居た頃風見も度々世話になった上官にあたる人物だ。 大らかで人当たりはよく、しかし豪胆な性格だった。 「俺もそうは思う、だがそのせいもあって俺への容疑は晴れなかった…誰かに嵌められたんじゃないかと、思ってる…」

2016-07-23 21:55:41
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8-4-6 照海が湯呑みを持つ手に力が込められているのが見て取れる。 「…何となく読めたぞ。罪に問われたお前に目を付けたのが艦娘化の研究者ご一行という訳か」 「あぁ、そうだ。俺の行く先は…ブタ箱の中どころか…よりによって…」 照海の顔に影が差し、強烈な怒りのオーラが滲み出始める。

2016-07-23 21:56:54
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8-4-7「…研究の内容については良く知らない。『第肆型』とか、奴らはそんな風に呼んでいたと思う。連行された場所で変な腕輪を着けられて…処置はそれだけで後は独房の中だった。だが、次第に意識が朦朧とし始めて…自分が自分じゃ無くなっていくような、そんな感覚が襲ってきた」

2016-07-23 21:57:26
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8-4-8「その姿になった時の事は、覚えているか?」 「あぁ…」 照海は湯呑みを机に戻す。このままだと握り潰してしまうと感じたからかもしれない。 「その感覚に何とか抗おうとしていたが、ある時意識がぷっつりと逝った。その次に目覚めた時には別のベッドの上で…既に姿は変わっていた」

2016-07-23 21:58:00
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8-4-9「当初の予定では『俺』という人間は消えて記憶も全部上書きされる予定だったらしいな?…だが、目を覚ました時、自分の身体が変わっちまった事も、知らない記憶が頭に溢れている事も分かったが、俺が『俺』のままだという事をはっきりと感じた」 「…」 風見は黙って話を聞いている。

2016-07-23 21:58:37
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8-4-10「目を覚ました時に、俺が艦娘になっていると思って有馬中将が話しかけてきて…あの時は俺も頭が真っ白だった…中将も含めあの場に居た全員を殴り飛ばしちまった。あぁ、でもその時の中将の驚いた顔は傑作だったな」 …照海は自分の手をまじまじと見る。 「何度も夢であれば、と思った」

2016-07-23 21:59:55
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8-4-11「朝起きたら元に戻ってないだろうかと、再度入れられた独房の中で何度も思った…だが、現実は非情だったよ。俺が押し込められた監獄は研究所の独房でも、この島でもない。俺は、俺が何よりも嫌っていた艦娘の身体の中に閉じ込められたんだ」 …照海は自分を落ち着かせるように息をつく。

2016-07-23 22:00:48
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8-4-12「それから暫くはずっと観察房の中に入れられてて…突然『配属が決まった』とか何だとかで、目隠しと手枷を強引に付けられて船の中。そして、着いたのがここだ。適当なタイミングで正体をバラすべきかとも考えていたのに、まさかアンタに今こんな所で出くわすなんて思いもよらなかった」

2016-07-23 22:03:20
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8-4-12「そういう訳だ、風見さん。姿はこんなでも俺は『雲龍』じゃない、人間なんだ。昨日記憶通りには動いてみたが、発着艦はやっぱり上手くいかなかった…肝心な部分で拒絶された。やはり人間のままの俺には艦載機を飛ばす事は出来ないんだ…だから、ここで役に立つことは出来ない、と思う」

2016-07-23 22:05:31
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8-4-13「人間、か」 風見もまた湯呑みを置くと、照海の顔を見つめる。 「…な、なんだよ」 「お前の性格も変わらないな、と思ってな。その姿をして、記憶をして、まだ認めたがらないんだな」 「何だと…」 照海の眉が吊り上がる。 「昔からお前は…認めようとしない。認めたがらない」

2016-07-23 22:06:00
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8-4-14「何が言いたい…」 一度は落ち着いて来ていた怒りが再度膨れ上がるのが空気で感じ取れたが、風見は涼しい顔だ。 「言わなきゃ分からないのか?お前、自分が認めたくない現実から反発し続けていれば、いつかは周りの認識も改まるって、いつもそんな風に思っていやしないか?」

2016-07-23 22:08:00
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8-4-15「お前が艦娘嫌いなのも、軍で破天荒な行動ばかり取るのも…そして『あの夜』の事も皆そうだ。んで、その結果どうだったよ?そして、今回も…お前の中に既に居る『雲龍』から目を逸らしているんじゃないか?」 「やめろ!」 照海が勢いよく立ち上がった事で応接机が大きな音を立てる。

2016-07-23 22:08:59
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8-4-16「図星か。なら自分でも分かっているんだろう?…彼女の意思がすぐ側にある事」 「やめろと言っている!!」 照海が両手で机を叩き、湯呑みは倒れ、茶が零れる。 だが、風見はそれも全く意に介さず、照海を凝視し続ける。 「…俺に受け入れろと、そう言いたいのかよ…!」

2016-07-23 22:09:59
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8-4-17「そうだ。今はお前が認めていないだけ。お前がその側面を閉じ込めているだけだ。『お前が』閉じ込められたのと同様に、『お前も』閉じ込めているんだ…いい加減出してやれ」 「…ッ!」 照海の我慢はそこが限界だった。 殆ど条件反射に、照海は風見に掴みかかった。

2016-07-23 22:10:58
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しかし、直後床に叩きつけられたのは…照海の側だ。

2016-07-23 22:11:45
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8-4-18「がっ!…はぁっ…!相変わらず、銃だけかと思わせておけばこっちも強ぇな、風見さん…」 「…俺としては、今まであれだけ叩きつけてやったのにお前がまだ懲りていないことに驚きだよ」 照海は諦めたように体の力を抜く。 「本当…嫌な人生だ。何をやっても思い通りに行きやしねぇ…」

2016-07-23 22:12:14
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8-4-18「それは俺も同じだ、照海。だが、人間なんて元来そんな物だ…物凄くちっぽけなもので、殆ど上手くいくように出来てない。そんな中で出来る事を増やすには、どうしても結託するしかない。そして、結び付くためには…認めなくちゃならない。妥協もしなくちゃならない。めんどくせぇんだ」

2016-07-23 22:13:00
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8-4-19「だから、妥協して俺に『雲龍』になれって、そう言うのかよ。『俺』という存在をを全部明け渡して、そうなれと」 「お前は本当戦闘以外に関してはアホだな。オマケに臆病だ」 風見は手を貸して照海を立ち上がらせ、自分の額をトントンと指でつつく。 「何のために頭があり、口がある」

2016-07-23 22:13:27
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