フォビドゥンフォレスト・1話中編・2  駄菓子屋論戦

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まとめを更新しました。「フォビドゥンフォレスト・1話前半・3 生徒会と幼馴染たち」 togetter.com/li/1005026

2016-09-04 19:49:24
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まとめを更新しました。「フォビドゥンフォレスト・1話中編・1 寄り道」 togetter.com/li/1006814

2016-09-04 19:51:53
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「あ!春夏と瑠梨ねーちゃん間接キスだ!」 後ろのガキが絡んできやがった。一人目がはしゃぐと他のも騒ぎやがる。 俺は元凶の頭をはたいた。 「フルネームで呼ぶなっつってんだろ!」 「痛って!」 いけね。本題が先だ。 「ちゃんと千切ってやったよ!」 「痛ってえ!?」

2016-08-01 21:13:39
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ガキが頭を抑えて恨めしげにこっちを見てくる。 「 お前こっち向いてたから多分見てただろうがよ…」 ったくロクでもねぇ色ガキだ…。 「はる君、やめなよ」 「そーだそーだ!」 「君達もだよ。嫌がるの分かってるしょ」 「はーい」 瑠梨が後ろに隠れたガキ共を叱りつける。

2016-08-01 21:13:49
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ああそうだよ。片桐春夏が俺の名前。ハルカの時点で女っぽくて嫌になるのに、こともあろうに春夏ってなんだよ。普通この音なら「遥」の字を使うだろ。なんならこれ一文字でも良いだろ。生命力に溢れた春や夏をイメージしたんだそーだが、まんま過ぎるだろうがよ。捻れよ。

2016-08-01 21:14:16
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「あんた達、静かにしとくれよ。今いいとこなんだから」 店のばーちゃんの面倒そうな声。目線はこっちに向けずに携帯ゲームをしてやがる。機種までは見えねぇが、腕の動き的に多分パズルゲームだろう。いつもこんなんだが、ちゃんと来客には気づくし、不届きな万引き野郎も見抜くから恐ろしい。 17

2016-08-01 21:17:34
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本当は画面見ずにプレイしてんじゃねぇか?そう思わずにはいられねぇ。実際、ジャンル問わず俺がゲームでまともに勝てたことがねぇ程の腕だ。いや別に俺が達人ってわけでもねぇけどよ。 「ごめんなさい。もう少し休んだら帰りますから」 瑠梨が謝った。 18

2016-08-01 21:20:39
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「アンタは良いのよ…そこのアホガキ共に言ってンのさ」 「だとよアホガキ共」 「ちぇーっ」 「アンタもだよ」 「…アホですみませんね」 このばーちゃんに限らず、風科の爺さん婆さんは瑠梨には甘いんだ。いや甘いも何も実際、今瑠梨になんの落ち度もねぇけどよ。 19

2016-08-01 21:25:51
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「しかし売っといてなんだけど、こんな時間に買い食いしてていいのかいアンタら」 ゲーム機を置いてばーちゃんがこっちを向く。 「ああ、今夜お祓いがあるんですよ」 「そういうことかい」 「お祓いの直前は何も食べないほうが良いから、今ちょっとだけお腹に入れておこうかなって」 20

2016-08-01 21:29:42
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「ったく鳥姫様は大変だねぇ……夜ってことは、また猟友会かい?」 お祓いってのは、普通夜にやるもんじゃない。宗教的な理由以前に、時間を取るのが面倒だからだ。少なくとも風科で夜に祓うのは9割僚勇会絡みだ。 「あはは。おばあちゃん、だから私は鳥姫の巫女で、鳥姫様は神様のほうだから」21

2016-08-01 21:37:21
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地元の年寄りでもたまにやる間違いだし、単なる略称のつもりかも知れねぇが、瑠梨的には大違いだ。いちいち怒りゃあしねぇが、必ずきっちり訂正する。D○Ⅴの主人公を勇者と言われる様なもんだな、と前に言ったら一緒にするなと怒られた覚えがある。ちなみにコレの正解は主人公の息子が勇者だ。 22

2016-08-01 21:46:52
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「そうかい。悪いね、祭りん時に神様降ろすもんだからつい混ざっちまうんだわ…それで」 「うん。僚勇会で設備点検とかがあるみたいで」 「やっぱりかい…てことは、アンタもかい」 「ああ、そうだぜ」 ばーちゃんが溜息を吐く。 「アンタの方は森の中まで入るんだろ?」 「ああ」 23

2016-08-01 22:00:33
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「ったく風科の猟友会ってのは…こんなガキにまで無茶させて…」 ばーちゃんは俺から目線を外し、カウンターの左側、俺達と反対の壁の方に目をやる。 「ロクなもんじゃ無いよ全く」 「んなこと…言うもんじゃねぇだろ」 否定してぇところだったが、言っても無駄だろうし、俺は表現を抑えた。 24

2016-08-01 22:10:45
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ばーちゃんはもう一度こっちに向き直る。 「アタシがとやかく言うことじゃ無いけどね、親はアンタを熊だの虫だのの餌にする為に育ててんじゃないんだからね。そンことだけは覚えとくんだよ」 そしてそれだけ言うと、また壁の方を向いちまった。目線の先にあるのはまだ新しいカラー写真だ。 25

2016-08-01 22:31:11
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「わぁってるよ。俺が食われるとしたら『熊』の腹を内側から掻っ捌いて出る用意がある時だけだ」 「私も…もう悪いことが起きないように頑張ってお勤めさせてもらいますから」 ばーちゃんは応えなかった。  26

2016-08-01 22:40:32
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しばらく畳に腰掛けて休んでると、ガキ共が帰り始めた。時計は5時半近い。いきなり暗い話を始めたせいか、いつもより帰りが早い感じの奴や、ゲームを途中で切り上げたっぽい雰囲気がある。悪ぃことしちまったな。そんな中で一人の眼鏡のガキが俺を手招きしてきた。俺だけを呼んでる感じだ。 27

2016-08-01 22:51:52
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コイツは確か、親の帰りが遅いんだとかでいつも6時半位まではここにいる奴だ。ただコイツに話を振られる覚えがないもんで怪訝に思ったが、取り敢えず瑠梨を置いて畳に上がり、ガキのとこまで行った。 「何だ?」 「あの、片桐さん」 さんってお前…。 「ちょっとお聞きしたいんですが」 28

2016-08-01 23:13:28
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声を抑えながら話しかけてくる。周り、というか瑠梨に聞かせたくねぇ話か? 「北里さんの誕生日プレゼントってもう用意されましたか」 「…まだ半月も先だぞ?」 意外過ぎる話題に面食らう。鳥姫の巫女である瑠梨のことを知らねぇ奴は風科には殆どいねぇ筈だが、誕生日までは有名じゃ無ぇ筈だ。29

2016-08-01 23:21:05
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「女性、特に好きな人へのプレゼントは早めに準備したほうが良いですよ」 「違ぇよ、このマセガキめ」 こん、と頭を小突く。アホなこと言いやがって。いやそれとも…。 「…そういうお前こそ瑠梨のこと好きなんじゃねぇのか?」 「ええ、そうです」 当然とばかりにあっさりと認めやがった。 30

2016-08-01 23:25:15
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「凄ぇなお前は」 「素直なだけです」 そう言うと中指で眼鏡のズレを直した。気取った仕草だったが、この瞬間だけは俺より大人に見えた。コイツ俺より5歳位は下だった筈なんだけどな。 「じゃあお前こそなんか用意しろよ」 「片桐さんは」 「瑠梨にも相談してなんか適当に選ぶよ」 31

2016-08-01 23:31:38
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「本人に聞いちゃ…うんですか!?」 一瞬瑠梨のとこまで聞こえそうな声を出し、慌てて抑えた。そんな驚くか? 「アレだろ。内緒にしといてサプライズにしろってこったろ?」 「はい」 「毎年毎年でサプライズになるかよ」 「あ、あ~…そうですね」 良かった。こういうとこは歳相応か。 32

2016-08-01 23:35:24
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「まぁでもよ。例えば簪が欲しいっつわれたらよ。色や柄とかでサプライズ出来るだろ」 「なるほど」 「そういう感じで良いんだよ。要らねぇもん贈られても困るだろうし、ちゃんと希望聞いたほうが確実だぞ」 「いえ、僕は贈りませんよ」 「は?何贈るかの相談じゃなかったのかよ」 33

2016-08-01 23:42:30
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「はい。僕はただ、今年は特別なものを送ってあげて欲しいと思っただけです」 「なんで今年に限って?」 「去年の誕生日から…色々あったじゃないですか」 眼鏡は瑠梨を、そしてばーちゃんを見てから俺に視線を戻した。 「まあ、そうだ、な」 たしかにこの1年、瑠梨には色んな事があった。 34

2016-08-01 23:47:46