1980年代の「角川映画ムーブメント」を回顧してみる

角川映画40周年を記念して、昭和時代(1988年まで)の角川映画48作品を一挙に上映する「角川映画祭」(7/30~9/2:角川シネマ新宿にて)が開催されるのにちなんで、当時の角川映画を振り返ってみました。
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

角川映画は、世界的な宇宙SFブームの真っ最中に、山田風太郎の伝奇時代劇「魔界転生」深作欣二監督、沢田研二主演で映画化して成功させます。その後、アジア映画界で盛んに作られるオカルト時代劇に、大きな影響を与えた作品ではないでしょうか? pic.twitter.com/nVo4LARpib

2016-07-30 10:11:11
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「魔界転生」の公開当時は「スターウォーズ」で宇宙SF映画ブームが巻き起こり、世界中でSF映画が作られました。しかし、SFXや規模ではどうしても本家にかないません。そのとき角川映画が、正面からぶつかるのではなくSF風の時代劇という切り口で攻めたのは、非常にクレバーだったと思います。

2016-07-30 12:50:53

1982年

角川映画は、当時日本を席巻していたアニメブームに参戦します。角川アニメには、少し大人向けでハイブロウなアニメを提供しようという、明確な戦略がありました。

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「蒲田行進曲」は、つかこうへいの人気戯曲深作欣二が映画化して、批評的にも興行的にも大成功を収め、風間杜夫を一躍スターに押し上げました。つかこうへいの、かなり皮肉で苦味のある戯曲を一見「人情喜劇風」に脚色したのが成功の要因でしょう。 pic.twitter.com/288tkkBskB

2016-07-30 15:12:45
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「蒲田行進曲」は「寅さん」の松竹で公開されたため、あまり角川映画というイメージがありませんでした。当時「角川春樹が金だけ出して口を出さなかったのが成功の原因」という批評に対して、角川春樹は「何を言っているんだ。この映画では、オレは口だけ出して金は出していないんだ」と反論しました。

2016-07-30 15:20:44
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角川映画は、当時のアニメ・ブームにも乗り出します。平井和正のカルト的ベストセラー「幻魔大戦」を当時はまだマイナーだった大友克洋のキャラクターでアニメ化する、という挑戦的な企画でした。後の「アキラ」のきっかけを作った作品とも言えます。 pic.twitter.com/0fXUPbeEni

2016-07-30 15:42:16
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「幻魔大戦」は、平井和正原作、石ノ森章太郎作画の同名マンガを、後に平井和正が長編小説化したものですが、次第に平井和正独自の世界となり、哲学的・宗教的な色彩が強まってから若者に熱狂的に支持されました。しかし、アニメは諸般の事情でマンガ版を基にしたため、小説版のファンには不評でした。

2016-07-30 15:48:43
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りんたろうが大友克洋と組んだ「幻魔大戦」は、当時としてはレベルの高い映像だったが、ドラマは盛り上がらなかった。そして18年後、りんたろうは大友克洋の脚本で「メトロポリス」を映画化。再び「見事な映像と盛り上がらないドラマ」を見せた。 pic.twitter.com/pqasklPfGo

2016-07-31 14:51:22
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80年代のアニメブーム吉本隆明が関心を持ち、当時、雑誌でりんたろうと対談した事があったが、吉本隆明文化論を語りたいのに、りんたろう映像演出の話をして、どこか噛み合わず、私は「なぜ富野由悠季にしないのか?」と思っていた。りんたろうは、言わば「レベルの高い映像職人」なのだろう。

2016-07-31 15:04:20

1983年

この頃、日本のエンタテインメント映画は、角川映画が牽引していたと言っても過言ではないと思います。

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1983年の「探偵物語」「時をかける少女」の二本立ては、80年代の角川映画ムーブメント中期の頂点と言ってよい強力なプログラムでした。公開当初は、トップアイドル薬師丸ひろ子とトップスター松田優作が共演した「探偵物語」がメインでした。 pic.twitter.com/G6yVv3Axtn

2016-07-31 15:36:51
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公開当初はサブ的扱いだった「時をかける少女」は次第に熱狂的な支持を集め、薬師丸ひろ子に続く角川アイドル、原田知世を生み出します。「転校生」でドラマに目覚めた映像の魔術師大林宣彦は、この作品で遂に「映像とドラマの融合」を成し遂げます。 pic.twitter.com/AOSCeYz80b

2016-07-31 15:46:04
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「魔界転生」で成功した伝奇時代劇の世界を、薬師丸ひろ子主演でジュブナイル化した「里見八犬伝」「アイドル薬師丸ひろ子」の10代最後の総決算とも言うべきヒット作になりました。当時、海外のファンタスティック映画祭に出品されて好評でした。 pic.twitter.com/SxXmup5OSP

2016-08-01 17:36:10
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今回、角川映画を振りかえって見て「80年代の角川映画に深作欣二が果たした役割は大きかったのだなぁ!」と感じた。80年代の深作欣二は、どこか似合わぬエンタテインメントを作り続けていたイメージがあったのだけれど、「80年代の深作欣二の仕事」は、改めて再評価されるべきではないかと思う。

2016-08-02 01:08:14

1984年

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阿佐田哲也の傑作麻雀小説を映画化した「麻雀放浪記」は、イラストレーター和田誠の監督デビュー作でしたが、手練れの名人芸を思わせる秀作でした。当時、戦争世代の作家の多くが「ここに描かれている戦後は本物だ」と評価していたのが印象的でした。 pic.twitter.com/WYonnwVAtG

2016-08-01 17:45:03
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「Wの悲劇」は、夏樹静子の原作推理小説を「女優・薬師丸ひろ子誕生物語」の劇中劇にしてしまうという大胆な脚色で、批評的にも興行的にも成功を収めました。結果として「アイドル・薬師丸ひろ子」に幕を引いてしまった作品でもあります。 pic.twitter.com/z8QW0GSAN1

2016-08-01 17:57:46
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映画「Wの悲劇」の中で舞台「夏樹静子原作『Wの悲劇』」は断片的にしか描かれませんが、非常に迫力があります。この舞台は出演もしている蜷川幸雄の演出でした。蜷川は、映画で断片的にしか使われないのを承知で「本気で演出した」と語っています。蜷川版「Wの悲劇」をフルで見てみたい気がします。

2016-08-01 18:29:11

1985年

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「カムイの剣」は、あまり知られていない作品ですが、角川アニメの最高傑作だと思います。りんたろうの演出、スタイリッシュな作画、宇崎竜童の音楽が高いレベルで融合した秀作でしたが、アニメファンと一般映画ファンの狭間に、沈んでしまいました。 pic.twitter.com/oWLKLHesKN

2016-08-01 19:49:27
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1986年

角川春樹は、次第に自らが積極的に映画を監督するようになって行きましたが、それが角川映画にとってプラスだったのかは、難しいところです。

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栗本薫の優れた青春小説に惚れ込んだ角川春樹が、角川映画10周年記念作品として自ら監督した「キャバレー」は、しかし、原作から「瑞々しい熱気」が抜け落ちて、中途半端なスタイルとムードだけが残ってしまった、個人的には少し残念な作品でした。 pic.twitter.com/6oRwY7blDG

2016-08-01 20:36:24
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

角川春樹は、1982年の「汚れた英雄」に始まり多くの監督作品がありますが、映画作家としての側面がキチンと批評されていない感じがします。ご本人のキャラクターとは逆に、アップよりロングが、動いたキャメラより静止画が好きな人で、画面の構築力はあるがドラマ演出は苦手な人、という印象です。

2016-08-01 20:50:18
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「彼のオートバイ、彼女の島」は大林宣彦監督の作品としては知名度が低いかもしれませんが、乾いたムードと詩情がブレンドされた独特の雰囲気に溢れた、大好きな作品です。片岡義男作品の映画化としても、見事に成功しているのではないでしようか? pic.twitter.com/N0rgWOQTe3

2016-08-01 21:18:23
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「彼のオートバイ、彼女の島」で、ヒロイン原田貴和子の相手役を務めた新人の竹内力を見た時には「なんと爽やかな青年が登場したのだろう!」と感銘を受けました。まさか、後に、あんなことになってしまうとは…。 時間って、コワイですね〜。 😅 pic.twitter.com/09l0liDkFh

2016-08-01 21:31:36
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