#完全ノープラン艦これ与太話 【アンセム・オブ・プロジェクト・サタン 丙:ブラック・オンスロート】
最早ほとんど白炎のオバケと化したピュリプレゲトンが、早霜に抱きついた!「捕まえたアアアアアア!」「アーッ!アーッ!アアアアアアアーッ!熱い!熱い!アッ!アガーッ!」炎が早霜を包む!「アババババ!オゴゴーッ!アーッ!ギッ、ギギギッ!アバーッ!」KRA-TOOOOM! #KZNPLN
2016-09-05 23:12:01白い閃光が周囲の色をすべて奪い去り、そののち、一時の静寂が訪れた。シュウシュウと煙が舞い、その中央に、影が見える。1隻は白い灰めいて呆然と立ち尽くし、全身の穴という穴から煙を吹き上げている。もう1隻は黒焦げになって横たわり、ぴくりとも動かない。 #KZNPLN
2016-09-05 23:14:57「……早霜」静寂を破ったのは、今まさに壁面を登って足場地帯へ到達した長波だった。「早霜。早霜ーッ!」傍らで灰となって立ち尽くす鬼怒には目もくれず、長波は早霜の残骸を抱えた。直後!「ア、ア、アアアーッ!」「イヤーッ!」 #KZNPLN
2016-09-05 23:18:39灰となった鬼怒は突如呻き声をあげ、足元の長波に殴りかかった。その拳を止めたのは高波のハイキックだ。「総司令ーッ!」次いで不知火のカタナが鬼怒に斬りかかる。鬼怒は無言でこれを弾いた。そのうごきはおよそ生物のそれではなかった。「ギ、ギ、ギギギギギ」鬼怒が呻く。コワイ! #KZNPLN
2016-09-05 23:22:12「総司令。聞こえますか総司令」カタナを弾かれた不知火は着地し、再びイアイの構えをとる。「オートマッピング・ジツは健在です。早霜は生きています。早霜はまだ戦っている!」長波はがたがたと震えながら、早霜を担ぎ上げた。「総司令。退避して下さい」 #KZNPLN
2016-09-05 23:27:32「ア……」長波の動きが止まった。ぐるぐると意識が回転する。「ア、ア……」高波が、不知火が、那智が、3隻が、オバケじみた灰の怪物にカラテを向ける。「退避して下さい。まだ間に合います。中層には医療ドックがある!早く、早霜をそこへ!」 #KZNPLN
2016-09-05 23:31:05「……姉様」高波がぽつりと呟いた。その声は今までの、どの声よりも大人しく、弱々しく、だが、突き刺さるような鋭さがあった。「信じて下さいです。姉様。私達、うまくやります。今回も。今回こそ」記憶が混濁しているのだ。 #KZNPLN
2016-09-05 23:35:25「ニャシシシーッ!」ヘルズゲートのカラテ魚雷が飛来する。阿賀野がそれを撃ち落とし、しかと駈け出した長波の脇にピタリと張り付いて並走した。「長波=サン!道中は私が援護します!」「……ああ。ああ。ああ!」長波は叫んだ。「アーッ!よし!……ここは任せるぞ!頼む!」 #KZNPLN
2016-09-05 23:37:453隻はそれぞれの武器を構えた。「当然です」「わかりましたです」「了解だ」灰の怪物もグルリと腰をもたげ、彼女らを見据えた。「……消えたんだァ、火が。ありがとう、ありがとう……ギギギギギ」 #KZNPLN
2016-09-05 23:42:42怪物は長波を、追撃するヘルズゲートとあわせて一瞥した。「逃げるのかァ……あいつ……」「逃げる?バカな」カタナのように鋭い、ハガネ色の瞳がぎらついた。「言っただろう。マイヅル者のケジメは総司令がつける。私は総司令のカタナだ。総司令が私を振るい、私が貴様をケジメする」 #KZNPLN
2016-09-05 23:47:57――ゴブンコ・ライブラリ下層、制御室。ヌル博士は呼吸を整え、大型UNIXで地形図を確認する。嵐と伊8はここより下の階を転々と逃げ回り、こちらの警戒網を誤魔化さんと工作を続けている。彼女の司る下層防衛システムも戦闘行為の余波をうけ、万全ではない。 #KZNPLN
2016-09-05 23:56:18何より大きな不確定要素はあの謎めいたサイバネ装束だ。ヌル博士はプロジェクト・サタン中枢メンバーとして、リアルニンジャたる元帥あきつ丸の恐るべきアトモスフィアに常に曝されてきた。その彼女が、嵐本人からはニンジャ性を感じ取れなかった。あの装束を展開するまでは。 #KZNPLN
2016-09-05 23:58:16「ヤセンブリンガー。間違いなくあれはニンジャ。エグゾスケルトン式の、論理ニンジャソウル?或いは気配の遮断、高度なステルス・ジツ……?どういう仕掛けかしら……」不確定要素を多数有する以上、このイクサは防戦側が一方的に優位に立つ。ヌル博士は攻めあぐねていた。 #KZNPLN
2016-09-06 00:05:09包囲。消耗。或いは誤爆。攻勢に出る契機を待つヌル博士の首筋に、じとりと汗が浮かぶ。その汗粒は玉のように転がり、胸元に達し、グニャリと伸びて、白衣の上をウネウネと這い出した。今や、彼女の豊満な胸の上は汗玉たちがのたうつようにダンスを踊り狂って叫んでいる。「……エ?」 #KZNPLN
2016-09-06 00:08:10汗玉たちがギョロリと一斉に伊8を向いた。その顔は青白く、能面のようで、暗く黒く窪んだ眼孔がヒュウヒュウと風の音をたて、歯のない口がカタカタと歯ぎしりを鳴らし、その音が虹色の芋虫に変じて耳にズルズルと這入り込んで鼓膜にキスをした。「ア、アイエエエ!?」 #KZNPLN
2016-09-06 00:10:19虹色の芋虫はその場でタマゴを産んで果て、その死骸を、今しがたタマゴから孵った虹色芋虫の幼虫たちがバリバリと食べる音が鼓膜に直接叩き付けられ、聴覚すべてを覆い尽くす。「ア、ア、ア、ア」やがてモゾモゾと無限に這い出す芋虫の幼虫らが全身を這い巡る。 #KZNPLN
2016-09-06 00:12:02ヌル博士は堪らず椅子を蹴飛ばし、その場に倒れ込み、皮膚が感じる不快感と快感のすべてをまとめて刷り込み続ける芋虫の幼虫から逃れようともがいた。「アッ、アッ、……アッアッアッ、アッ……ア、ア」ヌル博士の全身が痙攣し、しめやかに失禁した。芋虫はもういなかった。 #KZNPLN
2016-09-06 00:14:51「イヤハヤ、少し遅いなァと思いましてな」薄気味悪い声が響いた。ヌル博士は息を荒げながら、どうにか椅子に這い戻った。「ハァ……ハァ……ゴメンナサイ……ハァ、ハァ」「良い、善い好い」パン、パン。乾いた拍手が聴こえる。「予定が多少、前後しただけの事です」 #KZNPLN
2016-09-06 00:17:58「ヌル博士、ご苦労イヤご苦労。予定通り、自分が来るまでにアハトを確保していただければ万事順調ではありましたが、ナァニ、瑣末事。ゆるりとご休憩下さい」嵐と伊8の周囲の天井から、ボタボタと、芋虫めいた虹色の粘液が垂れ落ちてきた!「自分で確保すれば良いだけの事」 #KZNPLN
2016-09-06 00:22:59#完全ノープラン艦これ与太話 第2部最終話【アンセム・オブ・プロジェクト・サタン 丙︰ブラック・オンスロート】終わり。【丁:ザ・サン・アバヴ・クラウズ】に続く。 #KZNPLN
2016-09-06 00:26:31