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・・ラピスラズリ・・ 1. 「ただぁーいまぁ」 「お帰り。お疲れさま」 「ええ匂いする!」 「ん、ご飯できたとこ」 「ええとこ帰ってきたぁ」 ** 手を洗いながらふふっと笑う章。 「ん?」 「なんかええなぁって」 「?」 「ただいまって言うん」 「うん、」
2016-06-10 21:38:302. 章とは一緒に暮らしてるわけじゃない。でも章が家に来るときは『お邪魔します』じゃなくてそう言って入ってくる。 「つっかれたぁ…」 背中からギューッとする章。 「ほら、ご飯食べよう?」 「んー、ちょっとだけ後で」 かわいい笑顔で首をかしげる。 「冷えちゃうよ」
2016-06-10 21:39:183. その腕を解こうすると、その手を抑えてまっすぐに私を見つめた。 「動かんといて」 ゆっくり顔が近づく… (グゥー) 「…お腹すいた」 「みたいな、」 しゃーないなぁって笑う章。わたしが大好きな笑顔。
2016-06-10 21:40:225. *** 「どうやったら一週間でこうなるの?」 こないだ一緒に片付けたばかりの章の部屋。 「来るたびに汚くなってる」 「ちゃうし!散らかっとるだけで汚なない!まとまってんねんで?」 ここが楽器置き場で、ここが鞄置き場やろ、ここが絵を書くとこで…
2016-06-10 21:42:066. 章のコトバは 聞こえなかったふり。 「今日も一日片付けだね」 「何でぇ、めっちゃええ天気やんか!どっか行こ、なっ?」 「章くん」 部屋を指さす。 「…はい」 怒るときだけ「くん付け」止めてや、とブツブツ言いながら転がった青いボールを手にする。
2016-06-10 21:42:438. ** 「章!裸足で玄関におりない!」 「左から履かな気持ち悪いんやもん!」 見れば左の靴は遠くに離れたとこにある。 「靴多いからなぁ」 「違います」 「ん?」 「靴が多いからじゃなくて玄関も散らかってるからです」 「…」 「ここに出すのは3足まで。いい?」
2016-06-10 21:44:119. 「なんか今日怒られてばっかりや」 アヒル口でふくれる章がかわいくて思わず吹き出した。 ** 「終わったぁ」 「部屋広くなったね。」 「な!床が見える」 「どのくらいもつかなぁ」 「ずっとこのままやで」 「、」 「…努力します」
2016-06-10 21:44:5110. 「それにしてもホント章の部屋には青いものがいっぱいだね」 「せやなぁ」 部屋を見渡しながら笑う章の視線が私で止まった。 「ルリも」 「ん」 瑠璃、瑠璃色。章が大好きだって言ってくれる名前。 「ルリ、」 「ん?」
2016-06-10 21:45:2711. 「もっとアオでいっぱいになりたい」 重なる唇に身を任せた。 pic.twitter.com/tTjcZh8b4S
2016-06-10 21:47:2512. *** 「瑠璃の身体ってホンマにきれいな」 肌を撫でる。 「傷一つない」 「なんかいつも運がいいみたい」 危ない目にもあったことない。 「そっか。守られてんねや」 「ね、くすぐったいよ」 お返し、と章の身体に指を這わせる。 「傷だらけだ」
2016-06-11 12:45:5913. 「昔っからやんちゃ坊主やったからなぁ。どこでどうやって怪我したか全然覚えてへん」 不思議そうに傷をなぞる。 「さっきルリにつけられたんはわかんねけどなぁ」 「しょお//!」 「んはは。冗談やって」 …… …… ふと視線が落ちた。
2016-06-11 12:46:3414. 「章?」 「ん、いや。幸せやなぁって」 「って顔じゃなかったよ?」 「なんかすごい幸せなときってさ複雑な気持ちになるっていうか。うまく言えへんのやけど」 困った顔をする。 「幸せすぎて怖いってやつ?」 気持ち悪いな俺、その表情そのままに笑った。
2016-06-11 12:47:1115. 「身体、しんどい?」 「ううん、」 「ホンマに?」 「うん、」 「ルリ、俺。もう一回抱きたい…」 「ん、」 「好きや」 「わたしも」 章の声、章の身体、章の香り… その全部が好き。
2016-06-11 12:48:1516. *** 「あ、そうだ。週末大阪行くことになったの」 ソファーでくつろぐ章にコーヒーを渡す。 「出張?」 「うん」 「どんくらい?」 「3日」 「お疲れさんやなぁ」 んじゃ、その分もイチャイチャしよっか身を寄せる章とふざけ合う朝。
2016-06-11 12:49:1717. *** 忙しくて出張先からはなかなか章に連絡ができなかった。 (あれ?) 先を歩く背中が章に見えた。 (まさかね) こんなところにいるはずがない。けどすごく似てる。 遠ざかる背中を見つめながら、わたしどれだけ好きなんだろうって苦笑いした。
2016-06-11 12:50:2318. *** 出張から帰って荷物を片付けているとチャイムが鳴った。 「ただぁーいまぁ!」 「お帰り!」 「っていうか、おかえり。出張どうやった?」 「ただいま。すっごい忙しかった」 「お疲れさん」 広げられた腕、その胸に自然に飛び込んだ。 「章はどうしてた?」
2016-06-11 12:53:1419. 「あー、俺もバタバタしとった。もぉ頭痛くなったもん」 「そっか、章もお疲れさまだね」 「ありがと」 たった三日離れていただけだったけど、話したいことがいっぱいで。 章によく似た人を見かけたことなんてすっかり忘れていた。
2016-06-11 12:53:3520. *** 仕事帰りにスーパーに寄る。 お米に手を伸ばしかけて、隣にある袋に気づいた。 (さすがに、これはないか。でも…) えいっ、ちょっとした遊び心でかごに入れた。 ** スーパーを出ると外はもう真っ暗だった。 「あ!章!」
2016-06-11 12:54:5121. 横断歩道を渡る章の後姿。大きく手を振る。章は気づかない。 「しょ、」 開きかけた口を結ぶ。 (電話のほうがびっくりするかな) 聞こえてくる聞き慣れた着信音。 でも章は、 出なかった。 pic.twitter.com/X9thKspqf2
2016-06-11 12:55:3722. (どうしたんだろう) もやもやした気持ちを抱えながら結局そのまま家に帰った。 電話をとらなかったから、だけじゃない。章がなんだかいつもと違っていたような気がして。 (章じゃなかったのかな) 着信音はたまたま? ブーッブーッ…
2016-06-11 12:57:0523. バイブにしたままの携帯がテーブルの上で振動する。 (もしもし、俺) 「章、」 (着信残ってたから。電話したやろ?) 「うん。さっきね、通りで見かけて」 (え?俺さっきまで寝てたで) 「え、」 (頭痛くてさ。それ、人違いや) 「そっか…」
2016-06-11 12:59:0924. 声かけなくて良かった。 「あ、大丈夫?行こうか?」 (ありがと、大丈夫。寝たら治った) 「良かった」 (あ、あのさ。明日行くって言うてたやんか。無理かもしらん) 「仕事?」 (うん。ごめん、今日さばけんかったで。その分) 「そっか、」 (ん?寂しい?)
2016-06-11 12:59:4725. 「んーん」 (寂しがってくれよ) 章の優しい笑い声。 「ふふ、ならなおさら今日は早く休んで。あまり無理しないでね」 (ありがとぉ。じゃおやすみ) 「おやすみなさい」
2016-06-11 13:00:10