・・ラピスラズリ・・

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26. *** (はぁ、疲れた…) 結局私も残業になって、暗い夜道を一人歩く。 少し心細くなって携帯を取り出した。 《章》 画面にタップしようとして思い直した。 (仕事中かな) ため息をついて立ち止まったとき、後ろで気配がした。 (え…) 誰かいる?

2016-06-11 19:23:50
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27. 身をすくめて早足になった。 後ろの影が追いかけてくる。立ち止まると同時に足音が止まる。小走りになる私。足音がついて来る。少しずつ確実に縮まる距離。 (ヤだ。何、) 携帯をギュッと握りしめる。かける余裕はなかった。 (どうしよう…)

2016-06-11 19:24:52
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28. いよいよ気配が近づいたとき、角を曲がったところで数人の人が歩いているのに出くわした。俯き加減にその集団に紛れる。黒い影はわたしを追い越していった。 (章の…香り?) 顔を上げたときにはその姿はなかった。 *** 違う、章は今仕事中のはず。

2016-06-11 19:25:49
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29. 同じ香水を使っている人なんてたくさんいる。それに章なら声をかけてくれる。 (何…、) 言葉にできない不安が胸をよぎったとき携帯が鳴った。 (俺。今どこ?) 「帰ってる途中」 (そっちも遅かったんや。あんな、思ったより早よ上がれそうやねんけど、)

2016-06-11 19:26:21
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30. いつも通りの声。 (もしもし?ルリ?) 「章…」 (ん?どした?なんかあった?) 「家、来て」 (おん、そのつもりで電話してん。あとで行くわ) 「ねぇ、」 (ん?) 「…ううん、何でもない。待ってる」 (うん。気をつけて帰りや?)

2016-06-11 19:28:16
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31. *** 「つけられた?」 章の動きが止まる。 「、ような気がした。」 章と一緒にいるだけでさっきまでの不安が和らいだ。 「でも、勘違いかもしれない」 笑ったつもりが章は表情をこわばらせたままだった。 「どんなやつ?」 章は硬い顔で言った。

2016-06-11 19:28:38
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32. 「え?」 「もしかしてやけど。…俺に似とった?」 「顔は見てないけど。どうして?」 「…俺、最近言われんねん。俺にそっくりな男が無表情で歩いてた、って。」 「うそ…、」 「ルリ、ちゃんと思い出せ。最近変なことなかったか?」

2016-06-11 19:29:01
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33. 香水の香り。大阪、スーパーで見かけた後ろ姿。 「ルリ?」 …わたし、誰かに見られてる。 pic.twitter.com/KO4v0GsRj2

2016-06-11 19:29:41
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34. *** 「できるだけ早よ帰るから。何かあったら連絡し?」 昨日章はそのまま泊まってくれた。 「戸締りせなやで」 「うん、」 ** 夕飯の材料を買いに出る。いつの間にか雨が降り出していた。 (あ、) 雨の中、傘もささずにたたずむ男の子。

2016-06-12 17:22:53
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35. 「一人?お母さんは?」 声をかけるとその子はゆっくり振り向いた。 章にそっくりの、でも…冷たい目をした男。 (ここに…おったん?) 「っっ!!!」 * 「ルリ!」 「っっ!!…章、」 「大丈夫か、うなされてた」 いつのまにか眠ってたらしい。

2016-06-12 17:24:26
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36. シャツが汗で濡れていた。 「お、かえり」 「ん…ただいま」 胸が痛くなるほど鼓動が早かった。 *** 「眠れへん?」 ベッドで何度も寝返りを打つわたしに章が目を開けた。 「ごめん、起こしちゃった」 「ええよ。おいで」 両腕を広げる章。

2016-06-12 17:25:14
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37. 「、章…」 手を握る。 「うん、」 章はわたしの左耳に髪をかけて手のひらで右頬を包んだ。 目を閉じたわたしに章の唇の温もりが伝わった。 ** 「章、もっと…」 「けど、」 かすれた声。 「もっとっ、」 章の喉がゴクリと動いた。 「ルリ、」

2016-06-12 17:25:54
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38. 「お願い…」 この不安を消して。 「わかった」 激しくなる動きと今まで感じたことのない刺激。 「忘れさせたる」 身体がバラバラになりそうになりながら必死でついていく。 「危ない目にはあわさへん、」 (っっ!) 薄れゆく意識の中、章が倒れ込むのを感じた。

2016-06-12 17:27:17
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39. *** 「なぁ、ルリ」 「ん?」 身体にけだるさを感じながら章に寄り添う。 「一緒に暮らへん?」 「え、」 「いろいろ考えてん。今回のことが理由ってわけじゃないけど。そうじゃなくても俺もルリといたいし」 「章、」 「すぐにとは言わんから。考えてみて」

2016-06-12 17:28:05
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40. (わたしのそばには章がいてくれる) 頷くと、章は髪をなでてくれた。

2016-06-12 17:28:49
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41. *** 「ほな行って来る」 「うん」 「今日はここに戻るから」 「うん、ありがとう」 ゆっくり重なる唇。 「ん…章。時間」 「アカン、止まらんくなりそうやった」 笑った章は“右足”から靴を履いた。 pic.twitter.com/W1pTGMpeaA

2016-06-12 17:30:02
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42. *** (馬鹿げてる。) どっちから靴を履くかなんて。いつも意識してるわけじゃない。昨日だって章はわたしを。 (昨日の章はいつもと…) ブンブンと首を振る。違う、あれはわたしが煽ったから。 けど。 (もし誰かが章と入れ替わって…)

2016-06-12 17:35:01
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43. 大阪で会った男、スーパーの帰りに会った男。香水の香り。章にそっくりだという男の影。 (まさか。わたしが章のこと気づかないはずがない) どうかしてる。 …よぎる昨夜の章。 ガチャ、 玄関が開く音に心臓が跳ねた。 「ただぁーいまぁ」 「お、かえり」

2016-06-12 17:35:48
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44. 「ルリ?顔色悪いで」 心配そうにのぞき込む。 「ううん、平気」 「けど、」 俯いたわたしの頬に章の手が伸びる。びくっとして思わず後ずさった。 「え…、」 動きが止まる章。 「どした?」 「ごめん…章。今日は帰って」 「え?」

2016-06-12 17:36:14
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45. 「一人になりたい」 「どういうことやねん…」 近づこうとした章からまた一歩離れる。 「何、や。それ…」 「ごめん、」 「俺が…怖いってこと?」 章の顔にショックの色が広がった。 「ルリ、」 「…帰って」 小さな声しか出ない。

2016-06-12 17:37:05
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46. 沈黙のままどのくらい時間がたったんだろう。 「わかった…。今日は、帰る」 無理して笑顔を作ってくれているのがわかった。 「ちゃんと休め?あとで連絡するから」 「…ん、」 目が見られない。 小さなため息が聞こえた。

2016-06-12 17:37:27
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47. ** 「あ、ルリ」 玄関に向かう章が立ち止まった。 「部屋、まだきれいやで」 「…え?」 「1か月もった。しかもなっ、靴もちゃんと3足しか出してへんねんで?」 すごいやろ、とおどけて笑う。 「とにかく、めっちゃきれいやねんから俺の部屋。今度、遊びに来てな」

2016-06-12 17:37:57
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48. (どのくらいもつかなぁ) (ここに出すのは3足まで!) わたしと章しか…。 ほな、行くわと靴を履く章。 (左足から、) わたし、こんなときさえチェックしてる。 「章…」 「ん?」 「待っ…て、」 もう身体が動かなかった。 (気持ち悪い)

2016-06-12 17:38:30
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49. 吐き気がして床に座り込む。 「ルリ!」 「行かないで…」 「わかったから、」 「ごめん…、ごめんね」 「ええって、」 「怖いよ」 「大丈夫やって!俺おるから!」 震える身体ごと章は抱きしめてくれた。 pic.twitter.com/cNyOfSIv8j

2016-06-12 17:39:27
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50. 「ちょっと休んどき」 簡単なものなら作れるで?章はわたしをソファーに座らせると台所へ向かった。んー、と唇を指先で弾きながら冷蔵庫や戸棚を開ける。章が明るく振舞ってくれてるのがありがたかった。 「あっ!!」 突然嬉しそうな声が上がった。

2016-07-20 20:45:04