カレシになったれまこ

沙織に頼まれて仕方なく彼氏のフリをすることになった麻子のお話 をダラダラと呟いたものをまとめました。
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事の発端

mic @Mich2824

#カレシになったれまこ ある夏休みの一日、沙織の妹が大洗女子学園艦に遊びに来ることになった。常日頃から架空の彼氏自慢をしていた沙織は慌てて実在する恋人を作ろうと奔走する。が、当然すぐに見つかるわけがない。そこで沙織が白羽の矢を立てたのは麻子だった。胸が薄いし声も低めだから男装すれ

2016-07-24 00:05:09
mic @Mich2824

ばちょっと顔を合わせるくらいならば妹の目を誤魔化せるというのが沙織の言い分だった。当然反発する麻子。 「お前は私をなんだと思っているんだ」 「お願いよ麻子ー!プリン奢るから!」 「そんなもので誤魔化されるか!見栄を張ったツケは自分で払え!」 取り付く島のない麻子に困り果てる沙織。

2016-07-24 00:09:11
mic @Mich2824

「そもそも髪が長い時点でバレるだろう」 「大丈夫!最近はロン毛にしてポニテにする男子だっているらしいし」 「漫画とかゲームの話じゃないのかそれは…」 「麻子にしかこんなこと頼めないのよー!」 「お前な…!」 聞き分けのない沙織を見て溜息をつく麻子。 「そんなに私は女らしくないか」

2016-07-24 00:11:53
mic @Mich2824

怒気を孕んだ口調から一変して、寂しげに呟く麻子。 「お前に勧められた通り、カチューシャもつけてるし髪だって梳かしてる。化粧も少しずつ勉強してる…それでも、そんなに私は女らしくないか」 俯いてぽつぽつと心情を吐露する麻子を見て自分の軽はずみな言動を悔いる沙織。 「ち、違うのよ麻子」

2016-07-24 00:14:34
mic @Mich2824

「何が違うんだ!」 「違うの…ごめん、ごめんね麻子。私、麻子に甘えてた…いざって時にはいつだってかっこよく私を助けてくれるから、それが当たり前みたいに感じちゃって…ごめんね。麻子を傷つけちゃったよね。」 幼馴染だからといっても言っていいことと悪いことがある。親しき仲にも礼儀あり。

2016-07-24 00:19:09
mic @Mich2824

麻子の言う通りに、正直に妹に事実を語ることに決めた沙織はその旨を伝えて、今度とびっきり美味しいお菓子を作って麻子にちゃんと謝りに行こうと考えつつとぼとぼと帰っていこうとする。 その背中を見て麻子の胸中にじんと何かがこみ上げる。 沙織はいつだって私の世話を焼いてくれた。

2016-07-24 00:23:42
mic @Mich2824

日々の課題や定期試験、アマチュア無線免許の取得。これまで沙織を手伝ってきたのは何も洋菓子に釣られたからではない。 ずっと世話になっている恩を少しでも沙織に返してあげたかったからだ。 誰よりも優しくて面倒見のいい大親友を、自分の方からも支えたかったからだ。 麻子は沙織に呼びかける。

2016-07-24 00:26:50
mic @Mich2824

「…一日だけだからな」 「え?」 「一日だけだ。それと、今度陸に上がった時に水戸のフルーツパーラーに連れていけ」 「え?いいの!?男装!?」 「…おう」 つい先程まで曇り空だった沙織の顔にぱっと陽の光が差すのを見て麻子は照れくさそうに笑った。 青い夏空に、入道雲が高く聳えていた。

2016-07-24 00:31:56

デートの準備:まずは形から

mic @Mich2824

「次!これ着てみて!」 「…まだやるのか、もうさっきのでいいんじゃないか」 「ダメよ麻子。どうせ今回しか使わないんだから何でもいいとか考えてるんでしょう」 図星だったのかぐっと押し黙る麻子。それを見て眉を逆八の字にする沙織。 「もー、1回しか着ないからこそ着てて後悔しないような

2016-07-24 01:16:56
mic @Mich2824

ものを選ばなくちゃいけないの!それにカレシのファッションセンスがイケてないと私のセンスまで疑われちゃうじゃない」 「誰が彼氏だ、誰が」 「そりゃあ、麻子に決まってるじゃん?」 妹の来艦はまだしばらく先だというのに既にその気になっている沙織にげんなりとする麻子。引き受けなければ

2016-07-24 01:19:09
mic @Mich2824

良かったと後悔したが時既に遅く、麻子は沙織のされるがままにカジュアルなジーンズやら七分丈のパンツやらよく分からない英字がプリントされたシャツやらを着せられる人形となっていた。 「…沙織。お前、私を玩具にしてないか」 「そ、そんなことないわよ!」 ああ、嘘だ。顔に書いてある。

2016-07-24 01:21:09
mic @Mich2824

やれやれと肩をすくめつつも、麻子は手渡されたタンクトップと半袖のジャケットに腕を通す。 十数着の試着を経て、ようやくお眼鏡にかなうコーディネートが定まって店員を呼ぶ沙織。 「もちろん、これは私が払うからね」 「…ああ、ありがとう」 会計台で店員と軽くおしゃべりしながら支払いを

2016-07-24 01:25:16
mic @Mich2824

済ませる沙織をぼんやりと眺めつつ、麻子はまるで自分が沙織のヒモになっているかのような気分になった。 今日は女物の服を着ているから誰の目から見てもそんな関係には見えないはずである。 ただ、先ほどの沙織の彼氏発言が麻子の調子を狂わせていた。 「おまたせ麻子。じゃ、帰ろっか」

2016-07-24 01:26:46
mic @Mich2824

「…ちょっと待て、少し着替えたい」 「着替えるって、何に?」 「…ん」 麻子が恥ずかしげにすっと指を前に向ける。その先には沙織の腕にぶら下げられた、つい先程購入したばかりの衣服が詰まった紙袋。 「少し待っていろ」 試着室のカーテンを締めて麻子は男物の服に着替え始めた。

2016-07-24 01:28:24
mic @Mich2824

お気に入りの白いカチューシャを外し、持参していた髪留め用のゴムで後ろ髪を適当にくくる。 姿見にはついさっきまで映っていた幼気な少女はおらず、小柄で中性的な容姿の美少年が現れていた。 これが自分の姿か。 自身の女性らしさが乏しいことにちくりと胸が痛みつつも、不思議の国へと迷い込んだ

2016-07-24 01:32:52
mic @Mich2824

ような奇妙な高揚感に襲われる麻子。 試着ブースから現れた麻子の姿を見て、沙織は一瞬どきりとした。 顔立ちは変わっていないのに、身に纏うものが変わっただけで印象ががらりと違う。 「…待たせたな」 「…麻子?麻子だよね?」 「そうだ」 「あ、そうだよね、うん。麻子以外ありえないよね」

2016-07-24 01:34:46
mic @Mich2824

それじゃあ帰ろうか、と沙織はそっと麻子の手を取る。 麻子はそれに応じて、沙織の指を小さな手で握る。 「…帰り、どこか寄ろうか」 「アイスが食べたい」 「じゃ、いつものさつまいもアイスのところで」 「ん」 麻子を見て、自分の隣に本当に彼氏が歩いているような錯覚に囚われる沙織。

2016-07-24 01:36:48
mic @Mich2824

試着室から連れ出す時につないでいた手はいつの間にか離れて、その代わりに二人の腕と腕が絡み合っていた。 「麻子が、本当に私のカレシだったらどうなってたのかな」 「…悪い冗談はよせ」 「はは…うん、そうだよね。酷い冗談だね。忘れて」 冗談。 ただの冗談だ。 冗談にしては生々しかった。

2016-07-24 01:40:09
mic @Mich2824

スポーツ万能で学校一の秀才。ねぼすけなところが玉に瑕だけどそこが女の母性を掻き立てる感じで、きっと男の人だったら引く手数多のイケメンだったんだろうな。 「…何考えてる、沙織」 「何も。ただ、アイス何にしようかなって」 「私はチョコ入りにする」 「ダブルにする?」 「トリプルだ」

2016-07-24 01:42:03
mic @Mich2824

太っちゃっても知らないからね、といういつもの台詞を沙織は口に出来なかった。 カップに入った三段重ねのアイスクリームを二人してスプーンでつついている様子をありありと思い描くことができてしまった。 麻子のような素敵な恋人がいつか私にできるのだろうか。

2016-07-24 01:46:19
mic @Mich2824

きっとそんな男の人は新しい星を見つけてそこに武部星だなんて名前を付けられる確率よりもずっと低いんだろうなと、沙織は右腕に麻子の体温を感じつつ熱に浮かされた頭で考えていた。

2016-07-24 01:47:28

デートの準備・口裏合わせ

mic @Mich2824

少し顔を合わせるだけとはいえ打ち合わせができていないと会話にすぐにボロが出て虚偽がバレてしまうと考えた麻子の意見で沙織は『カレシの設定』を考えることになる。 「嘘をつくって大変ね…」 「最初から嘘なんてつかなくていいように努力しろ」 「してるわよ!でも素敵な出会いがないのは仕方な

2016-07-24 07:49:48