【虚空からの訪問者】

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

深緑の天空龍レックウザは星を救うため、大気を貫き無限の宇宙へ飛翔した。その背に自らが認めた人間を乗せ、迫り来る隕石に猛スピードで突撃する ｢そこだ！あそこを狙って！｣ 主の指示があれば、ポケモンはより力を引き出すことができる。主が示した1点目掛け、メガレックウザは渾身の一撃を放つ

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

((しっかり捕まっているのだぞ！))｢わかってる！さあいくよ！｣ポケモンの言葉を理解できる稀有な少女、ルナ。2人が出会ったのはほんの一時前だが、両者の間には既に強い絆が生まれていた。 ｢よし！そこだ！｣((いくぞ！))｢((ガリョウテンセイ！！！))｣

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

メガレックウザの大技が、隕石を貫く。迫り来た巨大隕石は爆発四散し、星は滅亡の道を免れた。メガレックウザは方向転換し、雄大な青き星を眺める。だがすぐに、背中にいるはずの主の姿がないことに気付く。 ((ルナ！ルナ！？どこへ行ったのだ！))

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

辺りを見渡しても、ルナの姿はない。よもや、宇宙の暗黒に呑まれてしまったというのか。光り輝く無数の星と永遠に続く暗黒の中に主の姿を見つけることは、ついに叶わなかった。

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

【虚空からの来訪者】

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

｢ううーん…｣あまりの暑さに、気を失っていた少女は目を覚ました。そこは太陽が燦々と照りつける砂浜であった。 ｢あっつ…やだ、日焼けしちゃう｣ 蹌踉ける身体に力を振り絞り、少女はなんとか日陰へ向かった。だがそれでも暑いことに変わりはない。 ｢だめだ、耐えられない…ゲッコウガ…｣

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

少女は腰に繋げられたカプセル状の球体をかざす。((イヤーッ！))なんということか！小さなボールからカラテシャウトと共に飛び出してきたのは、青い肌に長い舌をマフラーめいて首に巻いた蛙である！その姿はまるで、古の時代に滅びた筈のニンジャめいていた ｢ゲッコウガ、私に冷凍ビーム撃って｣

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

((そんなことをすればオヌシが死ぬ))｢仕方ないじゃない暑いんだもの…｣気怠く話す少女にゲッコウガは呆れ顔だった。 ((それよりもルナ＝サン。状況確認をするべきでは))｢状況確認…？｣((我らは今、何故ここにいるのだ))｢何故って…｣ ルナと呼ばれた少女はおぼろげな記憶を辿る。

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

｢私は確か、空の柱にいて…ヒガナさんと…そうだ、レックウザ！｣ルナは跳ね起きた。 ｢レックウザと一緒に宇宙に行って、隕石を破壊して、それから…｣ その後のことが思い出せない。あの宇宙から、どうやってここに来たのか。そしてレックウザはどこへ？

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

｢宇宙から落ちてきたのかなあ…うーん、でもそれだと流石に生きてないよね…｣ ルナは鞄から多目的デバイス、ポケギアを取り出し、タウンマップアプリを起動する。｢とりあえず、ここは何処なんだろう。島っぽいし、ナナシマまで来ちゃったのかなあ｣

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

だが、タウンマップ画面はエラー表示になってしまった。 ｢げ、壊れた…防水仕様のはずなんだけどなあ｣ ルナは項垂れた。これは限定仕様のお気に入りのポケギアだ。本当に壊れてたらショックで寝込んでしまいそうだ。 ｢仕方ない。とりあえず島を探索してみよっか。ゲッコウガ、いこ｣

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

ルナはゲッコウガを連れ、島を歩き回る。だが島には妙な雰囲気が漂っていた。 ｢あ、見てこのヤシの木。すごい成長してる。どっかの地方にはこんなポケモンもいるんだってさ｣ルナは高くそびえ立つヤシの木を指差して笑った ｢あー、わかった。この雰囲気の原因｣

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

島の内側、外側、そしてこのヤシの木を見てルナは納得したように手を叩いた。 ｢ポケモンがいないんだ。全然。気配すら感じない。自然豊かなのにポケモンがいないなんて珍しいなあ｣ ((む、だが生物はいる様子))ゲッコウガは何者かの気配を嗅ぎとり、海に向かってカラテを構える

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

｢なになに、珍しいポケモンかなあ？｣ルナは本能的にモンスターボールを握った。ポケモントレーナーとしてのサガである。やがて海から出てきたのは、白い肌に物騒な艤装を身につけた…深海棲艦である！ ｢えっ、何あれ。人？｣ルナにとっては、それが何なのか知る由もない

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

｢ふう、やっと着いたか｣空母ヲ級は背伸びをして脱力した。 ｢全く、夏姫さまも人遣いが荒い。リゾートの場所を先取りしてこいなど｣｢そんなの、潜水棲姫様にやらせればいいんすよ。はあ、毎回苦労する雑兵の身にもなって欲しいもんすね｣お供の重巡リ級が愚痴を漏らした

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

｢そういうことはあまり言わない方がいいぞ。私だから見逃すが、もっとクソ真面目な人なら処断…ん？｣ ｢やば、目が合っちゃった…｣深海棲艦達はそこで初めてルナに気がついた ｢何だお前は｣｢あ、いえその…通りすがりです〜あはは｣ ルナはじりじりと後退した。危なそうな人からは逃げるに限る

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

｢通りすがりだと？まさか、この絶好のリゾート地を人類に先に知られていたというのか…｣｢不味いっすよ先輩。先取り失敗したってバレたら何されるか…｣｢うむ…｣ 2人の深海棲艦は何かを相談していた。やがて話が纏まったのか、再びルナに向き直る

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

｢おい、人間よ｣｢は、はひっ！｣言うが早いか、リ級は物騒な武器をルナに向けてきた。｢すまぬな。お前に恨みはないが、ここで消えてもらう｣｢消えっ！？そんな無茶苦茶な！｣｢本当にごめんよ！でないとあたいらが処断されるんだ！｣｢悪く思うな…せめて丁重に葬ってやるから勘弁してくれ｣

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

｢ええい、仕方ない！ゲッコウガ！冷凍ビームよ！｣((ドーモ。ゲッコウガです。イヤーッ！))命の危機を感じたルナはゲッコウガに指示を出す。刹那、ゲッコウガは短くアイサツを済ませると両手を合わせ、氷点下の冷凍ビームをリ級目掛けて放った。｢うわっ！なんだいこれ！｣リ級の艤装が凍りつく！

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

｢なんかよくわからないけど、向こうが2人ならダブルバトルってことよね？｣ルナは腰から2個目のボールを投げる！｢お願い、ムウマージ！｣飛び出したのはゴーストタイプのポケモン、ムウマージだ！ ｢ムウマージ！シャドーボール！｣((任せて！))ムウマージは霊気のエネルギー弾をリ級に放つ！

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

｢グワーッ！｣((イヤーッ！))｢グワーッ！｣シャドーボールを受けたリ級にゲッコウガが影から素早く追撃！リ級はそのまま吹き飛ばされ、海へ落ちてゆく！ ｢な、なんだこの魔物達は！あいつは魔物使いなのか？｣ヲ級は杖をかざし、艦載機を飛ばさんとする。

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

((あれチャンスかも！))｢いいよ、思いっきりやっちゃえ！｣ヲ級の動作を見たムウマージはニヤリと笑い、天空に力を集中させる。快晴の空には瞬く間に暗雲が立ち込める。 ｢何！？｣｢今よ！かみなり！｣((えーいっ！))ムウマージが起こした雷が、ヲ級の杖目掛けて落ちる！

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

｢ぐああ！何だと！？｣辛うじて耐えたものの、ヲ級は膝をつき、その身体は痺れて動かない。 ｢くっ…ここまでやられるとは…何より、天気がリゾートどころではなくなってしまう…｣ムウマージが発生させた暗雲は未だ残り続けていた ((この後に及んでリゾートの心配するのね…))

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

((さあ、ハイクを詠め。カイシャクしてやる))ゲッコウガがミズ・スリケンを手にヲ級に擦り寄る。ルナはそれを腕で制した。その手にはモンスターボールが握られている ｢あれ、ポケモンじゃなさそうだけど、人間でもなさそうだよね。捕まえられないかな？｣((…オヌシの好きにすればよかろう))

雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

｢お、おい。何をする気だ！｣｢いくよーっ！モンスターボール！｣ルナが投げたボールはヲ級にクリーンヒット！その身体が瞬時に小さなボールに収められる。しかし！ボールは爆発四散し、ヲ級は解放された！ ｢おいやめろ！殺す気か！そんな狭いところに閉じ込めようとするな！｣