こじらせたリーマン 20160822-20160828

こじらせていたリーマン @ro1xrc3

以前見えるところにつけるなと言われたのは覚えているが、正直最中はそれどころじゃなかった。ただただ、こいつを俺のものにしたかった。

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どんなに行為を重ねたって、そうなることはないのだろうけど。

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とはいえ、自分の中で暴れていた嫉妬という感情は、いくらか小さくなったようだった。体を手に入れて、満足するなんて。俺こそ簡単な人間だと思う。そして、最低だ。

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窓を少し開け、煙草を一本吸ってから、俺も眠った。

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そろそろチョロ松が目を覚ます頃

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ベッドから出ようとすると、おそ松に抱きすくめられる。 「なに、おそ松」 「帰るの」 前にも同じようなやりとりをした。もちろん、いつもどおり、帰るつもりだ。けど……。 「服、ぐしゃぐしゃになってるよ」 そう、おそ松の言った通り、シャツもスラックスも全て玄関で死んだようになっている。

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「晩飯も食ってないし、腹減ってるでしょ。コンビニで下着と、なんか食べ物買ってくるから、おとなしく待ってて」 おそ松は気だるげにあくびをしながら、適当なTシャツとジャージを履いて出て行った。腹減ったのも、シャツがあんなになったのも、お前のせいなんだけど。

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そろそろおそ松がドアを開ける頃

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あ、なんか踏んだ。 視線を下げると、放り出された傘が二本。昨日ばたばたと家に入ったときに、投げ出してしまっていた。乱暴に扱って悪いなあ。拾い上げて、一本は壁に立てかける。もう一本を持って、コンビニへと向かった。

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そろそろ二人が朝食をとる頃

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適当に買ってきたサンドイッチをもそもそと咀嚼する。チョロ松はまだ全裸で、下半身にシーツをひっかけている。うん。エロい。 「あとでシャワー借りて良い？」 俺がそんな目で見ているとは気づかずに、チョロ松が暢気に言う。

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「いーよ」 「ありがとう。浴びて着替えたら出てくから」 「え、なんで？はやくね？一緒に会社行けばいーじゃん」 「バカ。やだよそんなの。あからさますぎるだろう。だって僕たちは……」 「あー……わかった。そう。いいよ。全部好きにして。あーでも服は俺の貸すからな」 「……うん」

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だって、僕たちは。その続きを聴くのが怖かった。恋人同士ではないのだから、肉体関係しかない、ただの同僚なのだから。そういうことを、言葉にされるのが。

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そろそろチョロ松が出勤する頃

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まあ、当然だが、早く着きすぎた。鞄の中の弁当箱をとりだして、給湯室へいく。昨日洗えなかったのでかぴかぴだ。今の時間ならほとんど会社に誰もいないし、つけ置き洗いをさせてもらおう。

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そろそろチョロ松が給湯室で、同僚の女性にうなじの痕を指摘される頃

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弁当箱を洗っていると、同僚の女性がやってきた。観葉植物にあげる水を汲むつもりらしい。おはよう、と挨拶すると、なぜかうなじを注視される。 「……松野さん、首、赤くなってますけど、虫刺され、ですか」 「え、どこ」

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「うなじのとこです、ここ」 「あっあー……そういえば痒いと思ってたんだ。蚊に食われたんだね薬塗らないと救急箱どこだったかな」 笑ってごまかして弁当箱を食器乾燥機に入れて、そそくさとその場を後にする。

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自分のデスクへ戻って、ひとまず絆創膏を貼ったが、彼女はますます疑問に思うだろう。……まあ、誰につけられたものかは、誰にもわからないだろうけど。

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まずい。まずい。彼女には以前にも首を見られている。あのときは絆創膏を貼っていたけれど、しばらくそれが続いていたからおかしいと思っていたはずだ。そしてついに痕そのものを見られてしまった。虫刺されだって？いや、見る人が見ればわかるに決まっている。

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とりあえず後でおそ松に文句を言おう。

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そろそろおそ松が同僚と昼食を食べる頃

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はーあ。おもしろくないの。割り箸を割って、ラーメンをすする。とんこつバリカタ。ここのはスープとチャーシューが濃くて美味い。たんたんと足を貧乏ゆすりさせると、床の油のべたつきを靴の裏に感じた。

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「おそ松。飯食ってるときに貧乏ゆすりすんな」 「んー」 「なにイラついてんだよ」 イラついてる。そうなのかな。どうだろうか。朝飯をチョロ松と食べるという望みは叶ったが、しかし思ったように甘やかな空気は味わえなかった。

こじらせていたリーマン @ro1xrc3

どうしても、土曜日見たあいつが脳裏にちらつく。面白くないな。俺はこれからチョロ松とヤるたんびに、あいつの顔を思い出すのか？なにそれ絶対ヤダ。上書きしたい。俺の記憶も、チョロ松の体も。ぜんぶ、俺で。