ヒンドゥー教、マヌ法典における同性愛

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Eiichi Yamaguchi @guccie3

「古代インドのソドミー法規定に関するメモ」ということで書いてみたんだけど、こちらの意図を正しく伝えようとするには140字って驚くほど少ないんだな、と今更ながら実感。石井先生の漢字圧縮やもぎけんさんの10回連続ツイートの技術はやっぱり大したもんだな。

2012-07-15 17:16:31
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ1】=「古代インドのソドミー法規定に関するメモ」: シンガポールにおける「ソドミー法」(sodomy law:「自然に反する」性行為禁止に関する法)が元宗主国イギリスから持ち込まれたものであり、それまで用いられていたヒンドゥー法では同性間の性行為を違法化していなかった、

2012-07-15 17:19:22
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ2】という記述がWikipediaにある(bit.ly/PZ0sfA )というツイートを頂いた。ホントかよ? そこで「ヒンドゥー法には本当にソドミー法と呼ぶべき内容はないのか」を検証すべく「ヒンドゥー法」の根幹とされる『マヌ法典』による記述と、

2012-07-15 17:19:44
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ3】その背景となるダルマ文献に関する情報などを簡単にまとめてみた。あくまで(講義ネタになるかもしれない?)メモということで、詳細に関しては参照元など各自でご確認ください。 まずは渡瀬信之『サンスクリット原典全訳 マヌ法典』中公文庫(1991)から関連部分の引用を示す。

2012-07-15 17:20:38
リンク Wikipedia マヌ法典 『マヌ法典』(マヌほうてん、サンスクリット語: मनुस्मृति)は、紀元前2世紀から紀元後2世紀にかけて成立したと考えられている法典(ダルマ・シャーストラ)。世界の創造主ブラフマーの息子にして世界の父、人類の始祖たるマヌが述べたものとされている。バラモンの特権的身分を強調しており、バラモン中心の四種姓(カースト制度)の維持に貢献した。 『マヌ法典』はそれ以前のインド法典類の中でも最も優れたものであると同時に、バラモン教、ヒンドゥー教などの教義の支柱となった。『マヌ法典』は一般に、その成立以前に存在した
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ4】なお「ブラーフマナ」とは一般に日本語で「バラモン」と訳されている「宗教的知識を持ち、祭式行為の実行を許される僧侶/司祭/祭官階級」を意味する本来の用語である。

2012-07-15 17:21:13
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ5】<身分を喪失させる罪> 11.68 ブラーフマナに苦痛を与えること、嗅ぐべきでないものあるいは酒の臭いを嗅ぐこと、詐欺、男と交わることーーは身分を喪失させる[罪](ジャーティブランシャカラ)と呼ばれる。

2012-07-15 17:21:28
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ6】<身分を喪失させる罪の贖罪> 11.174 人間でない雌および月経中の女と、あるいはまた子宮でない場所および水中においてまじわるときは、サーンタパナ・クリッチュラを行うべし。

2012-07-15 17:21:46
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ7】11.125 意図的に身分(ジャーティ)を喪失させる行為のいずれかをしたときは、サーンタパナ・クリッチュラ( 11.213参照)を行うべし。意図的でないときはプラージャーパティヤ・クリッチュラ[行うべし]。

2012-07-15 17:21:56
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ8】11.175 ブラーフマナは、男と交わり、あるいは女と牛車の上あるいは水中であるいは日中に交わるとき、衣服を着けたまま沐浴すべし。

2012-07-15 17:22:22
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ9】プラージャーパティヤ・クリッチュラ 11.211 私は汝らに、神々、リシ、祖霊たちによって実行された[罪を除去する]手段について語るであろう。それらによって人は罪を除去する。

2012-07-15 17:22:31
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ10】11.212 プラジャーパティのクリッチュラ(プラジャーパティヤ・クリッチュラ)を行なうブラーフマナは、三日間は朝[のみ]、[そして次の]三日間は求めずに得られたもの[のみ]を食すべし。次の三日間は食してはならない。

2012-07-15 17:22:43
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ11】サーンタパナ・クリッチュラ 11.213 牛尿、牛糞、牛乳、ヨーグルト、酥油、クシャ草を煎じた水[を食し]、[次の]一[昼]夜断食する。これはサーンタパナ・クリッチュラといわれている。

2012-07-15 17:22:53
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ12】以上が確認できた『マヌ法典』によるソドミー法に関わる記述である。男性による同性愛、肛門性交、獣姦は禁止されており、それに関する「贖罪規定」(prāyaścit)が定められている。

2012-07-15 17:23:36
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ13】以下、補足説明。イギリス植民地下のインドでは、支配のための司法体系の一部としてサンスクリット古典文献に依拠するヒンドゥー法が用いられた(bit.ly/PZ0XGE )。この根幹となるのが一般に「ダルマ文献」(dharmaśāstra、法典類)と呼ばれる

2012-07-15 17:27:44
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ14】文献群であり、古くは紀元前6世紀ごろに遡ることができる。それらダルマ文献が植民地時代の実定法として利用されたため19世紀半ばまで註釈文献が書き続けられ、南アジア、東南アジア地域のイギリスによる植民地支配に利用されたようである。

2012-07-15 17:29:23
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ15】すでに迷惑TW認定でしょうけど最後に参考文献など。渡瀬信之『サンスクリット原典全訳 マヌ法典』中公文庫(1991), 解題。同氏による『新版・南アジアを知る事典』平凡社(2012)の「ダルマ・シャーストラ」。

2012-07-15 17:32:34
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ16】なお<「自然に反する」性行為禁止>というソドミー法自体が、その社会における道徳規範に依拠しており、古典インド文献でこの問題を論じるには性愛に関する綱要書『カーマスートラ』も検証すべきであろう。例えば「口内性交」の記述は同書で「接吻」の項目の1つとして列挙されている。

2012-07-15 17:33:36
Eiichi Yamaguchi @guccie3

【こそ17】これらの事項は多くの人々に世俗的興味を喚起する内容であるが、はたしてこれを講義や市民大学の中で活用できるかは、近年のアカデミックハラスメントなどを考慮すれば、大きな疑問残す問題である。

2012-07-15 17:35:26
Eiichi Yamaguchi @guccie3

以上、「古代インドのソドミー法規定に関するメモ」でした。

2012-07-15 17:37:28
EMA日本 @emajapan2013

「伝統的な」結婚式を挙げたビアンカップルに関する記事です。写真がとても素敵。インド人女性とアメリカ人女性がインド式の結婚式を挙げました。 bluegape.com/relationships/… pic.twitter.com/5E3QJ9230n

2014-12-15 22:09:58
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CMTC @MontyGlycon0

同性婚かつムレッチャとの結婚なので、出席したインドの人達はヒンドゥー教の中でもかなりリベラルな立場なのだと思います。bluegape.com/relationships/… マイクを持った宗教者らしき方の写真もありますね。

2014-12-16 01:08:21
リンク コトバンク ムレッチャとは - コトバンク 世界大百科事典 第2版 - ムレッチャの用語解説 - 古代インドの文献で蛮族,夷狄,外国人をさす語。アーリヤ人の住地の外部に住む者,すなわちバラモン教(ヒンドゥー教)が行われ4バルナの秩序が維持された国の外に住む者を意味する。バラモン,クシャトリヤ,バイシャの3バルナに属す者(アーリ...
CMTC @MontyGlycon0

ちなみにムレッチャにヒンドゥー教を布教したA・C・バクティヴェーダンタ・スワミ・プラブパーダは同性愛について、こういう見解ですね。ammolite4.exblog.jp/8523507 親ムレッチャ的なヒンドゥー教徒だからといって同性愛を肯定するとは限らない。

2014-12-16 01:21:51