@AXSA0229 「まあ、俺が呼ぶまで俺の部屋にいてください…………念の為言っておきますけど、返事してはいけませんよ?」
2016-09-02 08:23:10@white_tsumekusa 桃香山は返す言葉を噛み殺した。憎かった。ニセモノに騙されてしまった自らの失態が。 最後にもう一度だけ念を押して、真草は桃香山を自らの部屋に押し込めた。
2016-09-02 08:43:01@AXSA0229 「桃香山さん、終わりましたよ」 「おーい」 「正直危ないモノじゃありませんでした」 「やっぱりびっくりしました?」 「んー、ドア開けてください」 「失敗して手が汚れて」 「やけにベタベタしててドアノブ汚したくないんで」 「んと子さんに手伝ってもらったんです」
2016-09-02 08:46:06@AXSA0229 「桃香山さん?開けてください桃香山さん」トントン 「桃香山さん?」 トントントントントントントントン 「桃香山さん」 トントントントントントントントントントントントン 「ねえ」 トントントントントントントントントントントントントントントン 「開けろ」
2016-09-02 09:06:44@AXSA0229 ピタリ、と扉を煩い程叩く音が不自然に止んだ。秒針の動く音すら止まったような静寂の中、桃香山は視線を感じた。目の前?違う。ドアノブ?違う。床と扉の僅かな隙間に黒い二つの眼が覗いていた。口元が見えていない筈なのに桃香山はソレが笑ったのを感じた。 「ミツケタ」
2016-09-02 10:37:35@white_tsumekusa 突然耳をつんざくような音がしてドアが掻き破られた。陰の気がぴりぴりと頬を裂く。無我夢中で叫んだ。「真草殿ーーーッ!!」
2016-09-02 13:45:41@AXSA0229 目を固く瞑り次の瞬間来るであろう鬼の恐怖に震えた。然し何時まで経っても予感した終わりは来ない。恐る恐る目を細く開けばそこにあったのは細く小さな真草の背中だった。「真草殿、」声をかけようとして絶句する。真草に似た、然し陰の気の溢れる鬼が真草の細首を締めていた。
2016-09-02 13:52:07@white_tsumekusa 長く伸びた赤黒い爪が肌に喰い込んでいく。鬼は桃香山に見せつけるように真草を高く吊るしあげる。 ぎり、と桃香山の奥歯が鳴った。真草の肩越し、醜く笑んだ鬼へ手をふりかざした。「その手を離せッ」怒号とともに彼の手が吐き出した炎が瞬く間に鬼を包んだ。
2016-09-02 21:13:10@AXSA0229 赤が鬼を包み込んだ。断末魔の声は聞こえなかった。人ならざる怪異は人の様な終わりを迎えなかった。ただそこに何も無かったかの様に消えた。余りに呆気ない最後に暫し呆然とした桃香山だったが我に返り真草に駆け寄った。「真草殿、大丈夫ですか!?」
2016-09-03 00:24:09@white_tsumekusa 「………た、」「喋らないで、傷を見ますから」「…桃香山さん」「マイネ殿のところへ行きましょう、立てますか。」「桃香山さん」「いや、その前に清水で消毒を「桃香山!」「……………はい。」
2016-09-03 00:43:27@AXSA0229 「桃香山さんは、無事ですか?」その言葉を聞いて頭を抱えたくなった。どう考えても無事じゃないのは真草の方だろう。痛む米神を抑えて傷を見る。そして驚愕した。傷どころか痣すら無い首を軽く撫で真草は立ち上がった。「全く……返事をするなと言ったでしょう」
2016-09-03 00:57:22@white_tsumekusa 「すみませんでした」「言霊の力は強い。これに懲りて軽々しく返事はしないことですね」差し出された細い手を頼りに立ち上がる。その首に手を伸ばす。滑らかな肌には確かに傷一つなく、炎で熱くなった手の平にひやりと心地よかった。桃香山の眼から、涙が溢れた。
2016-09-03 01:15:01@AXSA0229 ぽんと桃香山の頭に手を乗せ真草は自分の机に向かう。一見芥溜に見える其処から小さな鈍い銀に光るペンダントを取り出して桃香山に放った。「それあげます」そう言って真草は桃香山の背を押し部屋から出す。「桃香山さん存在が強い割には怖がりなんで連れて行かれない様に」
2016-09-03 01:22:00@white_tsumekusa 振り返ると騒ぎを聞きつけた住人たちが早くも扉の修理に取り掛かっていた。新たな材木の影で真草の姿は見えない。 桃香山は真草に渡されたペンダントを見た。可愛らしい野草が彫り込まれている。首にかけてみると、何故だか、誰かに見守られているような気がした。
2016-09-03 01:37:58