第13話 輸送任務と黒い波 パート2

脳内妄想艦これSS 独自設定注意
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

__ 波間の影から、それは現れた __

2016-10-09 21:47:07
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__ 第13話 輸送任務と黒い波 パート2 __

2016-10-09 21:47:12
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13-2-1「提督、間もなく目標地点に到着します」 『OKだ。島を出る時にはもう一度連絡をくれ』 じっとりと暑い海風を切って『鳶』の4人はオリョール海の島々の内、海域の端にある小島に到着する。 島には先んじて拠点から小隊が上陸しており、着いた時には既に準備が整っていた。

2016-10-09 21:49:12
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13-2-2「お待ちしていました。『鳶』の皆さまですね」 部隊の隊長は、敬礼すると丁寧に綾波達に挨拶をする。 「これが今回使用する、ダミーの輸送物資ね」 海辺に並べられた輸送物資…のダミーを一瞥し、五十鈴が部隊長に確認する。 「はい、一見すると立派な物資ですが、中身はカラです」

2016-10-09 21:50:14
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13-2-3 戦闘を目的とした艦隊が派遣された時には、異変は探せど探せど姿を現さなかった。姿の見えぬ敵の矛先は、あくまで輸送隊にある。 そこで計画されたのが、『鳶』による偽の輸送作戦であった。 2艦隊が消失した輸送ルートで、ダミーの輸送物資を使って敵をおびき出そうという訳だ。

2016-10-09 21:52:28
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13-2-4「私からこんな事を言っても今更でしょうが…この作戦は明らかに危険ではありませんか?」 小声になった部隊長が、何やら収まり悪そうに五十鈴に話しかけてきた。 「そうね。でも、原因を突き止めない事には何も変わらないでしょう?」 「それは…はい、確かにそうなのですが…」

2016-10-09 21:53:00
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13-2-5「何よ、歯切れ悪いわね」 「その…我々の間でもこの一件は大きな騒ぎとなったのですが…今や、どの部隊もこの海に近づきたがらず任務担当がたらい回しにされています」 五十鈴の不審げな表情に、部隊長はおずおずと胸中を話し始める。 「かく言う我々の部隊も最初は拒否したのですが」

2016-10-09 21:53:55
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13-2-6「…許可されなかったのね」 「仕方がなかったのです。お恥ずかしい話ですが、我々は数ある部隊の中でも末端の類で評価も低く…なし崩しに担当とされてしまいました」 話しているうちに彼の血色が悪くなってきているように見える。かなり緊張しているようだ。 「…皆、恐怖しています」

2016-10-09 21:55:04
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13-2-7「この島に至るまでの航路でさえ恐ろしかった。消失地点からは遠いとはいえ、もしかしたら正体不明の敵に遭遇するかと思うと…あぁ、すみません、伝えたいのはそんな話では無くて。要するに、この囮作戦は我々のような末端の仕事で…貴方達のような戦力が宛てがわれているのが不思議で…」

2016-10-09 21:56:14
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13-2-8 一息に胸の内を吐露した若き隊長は、緊張した面持ちで五十鈴を見ている。 今の境遇や、この任務の事…そして、目の前の艦娘に失礼な事を言ってしまったのではないかという不安で心中がぐちゃぐちゃなのが五十鈴には手に取るように分かる。 「心配してくれてるのね。ありがとう」

2016-10-09 21:56:27
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13-2-9 五十鈴は彼ににっこりと笑みを返す。 彼女のその様子に、ふっと彼の緊張と不安も和らいだ。そして安堵すると同時に、曇りが晴れた頭に笑顔が沁みこんで、頬が赤くなる。 「…自分は、その…」 「…でも、それは無用な心配なのよ」

2016-10-09 21:58:27
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13-2-10「え?」 恥ずかしさから彷徨わせていた視線を彼が五十鈴に戻した時には、彼女は既に決意を秘めた目で誰とも分からぬ敵の待つ水平線を見つめていた。 「…私達も『末端』の艦娘だから、ね」

2016-10-09 21:58:41
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13-2-11「綾波、そっちの固定具も確認しましたか?」 「うん…オッケー。それにしても、車の牽引でもするみたいだね」 運貨船を各々連ね、それぞれにダミーの貨物。 部隊も引き上げ、作戦に『鳶』の4名以外の参加者は居ない。 「それじゃそろそろ…」 「待って」 出撃号令を浜風が遮る。

2016-10-09 22:01:32
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13-2-12「ソナーに反応有り。近づいて来ています」 「潜水艦!?」 各々が素早く戦闘態勢に入る。無論、消失事件以外での戦闘も想定の範疇なのだ。 「私に任せなさい」 五十鈴はニヤリと笑うと、誰よりも早く爆雷投射の準備を整え… 「先制爆雷、食らいなさい!」 間髪を入れず爆雷を放…

2016-10-09 22:02:17
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13-2-13「どぼーん!」 元気よく海面に飛び出したのは、艦娘。 「げ」「えっ」「あっ」「は?」 …鈍化した時間の中で綾波がチラリと横を見ると、既に爆雷は発射された直後であった。 「のわー!避けて、避けてー!!」 五十鈴の叫び声に間一髪、潜水艦娘達は着弾点から逃れるのだった…

2016-10-09 22:03:31
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13-2-14「すみませんすみません」 「いや…こっちも確認不足で…ごめんでち」 パニックが収まって後、五十鈴は平謝りだった。 「いつもこっそり休憩場所に使ってる場所だったからねー、先に誰かがいるなんて思わなかったなの」 「とはいえ、下手すれば完全に直撃コースでしたよね…」

2016-10-09 22:05:19
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13-2-15 話によると、佐伯から来たこの潜水艦隊…伊58、伊19、呂500、伊29はこの海で頻繁に任務を務めており、『鳶』が部隊との合流に使ったこの孤島の浜辺を、任務中こっそりと休憩所代わりにしているらしい。 「この近辺では天然資源もよく見つかるから、働きづめでち…」

2016-10-09 22:06:08
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13-2-16 伊58…ゴーヤは憂鬱そうに語るが、後ろでは既にそんな彼女を尻目に随伴艦がビーチバレーを始めている。 「た、大変そうですね…」 綾波は苦笑いを返す他にない。 「っとと、他所様に愚痴をこぼしてどうするか…お仕事の邪魔してごめんでち。見た感じ、これから輸送任務でちか?」

2016-10-09 22:07:46
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13-2-17「そんなところね。それにしても…」 五十鈴はそこで沈黙した。目がすっと細くなり、何か考えている様子だ。 「?」 「…ねぇ、最近この海はどんな感じ?私達はこの航路を使うんだけど…深海棲艦の動きとか、活発になってないかしら?」 海図を見せ、五十鈴がゴーヤに問いかける。

2016-10-09 22:10:06
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13-2-18「んー、いや、特に活発って事は無いし、この航路なら安全だと思うでち。寧ろ最近はめっきり敵艦の数も減ってるかな?」 「そう、それならいいんだけど。…後、もし良かったらなんだけど、資源のよく採れる場所を私達にも教えてもらえないかしら?今後の参考にしたいのだけど」

2016-10-09 22:10:40
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13-2-19「ええー、そっちの鎮守府の勤務体系がブラックになっても知らないでちよ…」 口ではそう言いつつも、ゴーヤは親切に海図の何点かにマーキングしてくれる。 「このあたりが主な回収箇所でち。でも、ちょっと取れ高の落ちてる所もあるから、他のポイントも探してみた方がいいかな」

2016-10-09 22:12:47
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13-2-20「有難う、きっと提督も喜ぶわ」 海図を畳んで荷物に入れ、五十鈴は綾波達に合図を送る。 「それじゃ、私達はそろそろ任務に出るから…またどこかで会ったら宜しくね。後、爆雷の件は本当にごめんなさい」 「いえいえ。次会うのがこの海の資源回収場所じゃないことを祈ってるでちよ」

2016-10-09 22:12:58
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13-2-21 …それから数分後、『鳶』は運貨船を伴って先の輸送部隊の消失地点を目指して進んでいた。 「あれは何を確認してたの?」 道すがら、雲龍が五十鈴に先のやり取りについて聞く。 「深海棲艦の活動状態は序でで、メインはあの潜水艦達の航路を割り出す事よ。危険かもしれないから」

2016-10-09 22:13:58
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13-2-22「…結果は」 「少なくとも私達の目指してる艦隊の消失地点からは逸れているわ」 先程の海図を取り出し、資源の回収ポイントを指でなぞる。 幸いどの順番で回ったとしても、作戦地点近辺には交わらない。 「でも、辻褄が合わないですよね」 横で聞いていた浜風が話に入ってきた。

2016-10-09 22:15:28