懐かしい受験参考書の英語を今の目で眺めると

1
uroak_miku @Uroak_Miku

1)『英文解釈教室』という英語参考書があります。1977年刊行で、今も本屋に並んでいる古典です。私も姉のおさがりでこれを使いました。

2016-10-12 14:51:02
uroak_miku @Uroak_Miku

2)1979年から、今のセンター試験の前身ともいえる共通一次試験が始まっています。それまでは各大学が一次試験を実施していたのを、国家機関による統一的試験に切り替えたのです。四択式の問題に。

2016-10-12 14:52:32
uroak_miku @Uroak_Miku

3)となると予備校も全国共通のカリキュラムを設けるべきではないか、たとえば福岡の生徒が途中で名古屋に移っても同じカリキュラムで学習を続けられるようにすべきだと駿台予備校の内部では議論された。共通一次試験の開始を前にしてのことです。

2016-10-12 14:54:28
uroak_miku @Uroak_Miku

4)『英文解釈教室』はその動きのなかで書かれた本です。著者はたしか当時の駿台予備校の英語科の長かそれに近いポストでした。

2016-10-12 14:55:17
uroak_miku @Uroak_Miku

5)今の私は、この本はむしろ英作文の教科書として使えるのではないかと考えています。そういう使い方ができるのは上級者限定ではあるのですが。

2016-10-12 14:56:39
uroak_miku @Uroak_Miku

6)今読むと、著者の伊藤和夫が冠詞や時制の使い分けニュアンスをわかっていなかったことがよくわかる。そういう自分の苦手分野をどう迂回して見た目は論理的な体系を作り上げるかという問題意識の上に組み立てられた本です。

2016-10-12 14:58:18
uroak_miku @Uroak_Miku

7)例をあげて検証してみます。第一章にこんな英文があります。 pic.twitter.com/EX5303ZQ7f

2016-10-12 15:01:04
拡大
uroak_miku @Uroak_Miku

8) >Public libraries have a vital educational function. (公共図書館は極めて重要な教育的機能を担っている)

2016-10-12 15:02:54
uroak_miku @Uroak_Miku

9)主語が複数形であることに気を付けてください。この後、今度は定冠詞単数形に代わる。 >The Library that created the impression in the public mind that books and libraries were

2016-10-12 15:04:45

the Library ---> the library

uroak_miku @Uroak_Miku

>for some people but not for all would, in the long run, be a harmful, futile institution.

2016-10-12 15:05:48
uroak_miku @Uroak_Miku

10)「本とか図書館なんてものは一部の人間が使うものだと大衆に誤解させるような図書館は長い目で見ると害悪でしかない」

2016-10-12 15:07:14
uroak_miku @Uroak_Miku

11)どうして libaries が the library に変わってしまうのか『英文解釈教室』の著者は何も語ってくれない。

2016-10-12 15:08:38
uroak_miku @Uroak_Miku

12)具体から抽象に議論のギアが切り替わったことを、どうしてこの本の著者は説明しないのか?理由はおそらく、冠詞の機能について彼はよくわかっていなくて、わかっていないこともよくわかっていて、それで構文分析に逃げたのです。

2016-10-12 15:10:13
uroak_miku @Uroak_Miku

13)the library は「例の図書館」とも取れるし「図書館というもの」とも取れる。どちらが正しいのかは文脈次第として、どうして後者の解釈が成り立つのか、きちんと説明できるひとは少ない。

2016-10-12 15:12:37
uroak_miku @Uroak_Miku

14)この場合の the を私は「種類の the」とか「システムの the」とか呼んでいます。

2016-10-12 15:13:50
uroak_miku @Uroak_Miku

15)たとえば Wikipédia で lion(ライオン)を検索してみてください。説明文の主語は the lion です。「例のライオン」ではなく「ライオンというもの」で使っています。世界にライオンが何万頭いるのかわかりませんが、どういうわけか the が使われている。

2016-10-12 15:15:49
uroak_miku @Uroak_Miku

16)「ライオンという生物の基本設計」と解釈すると理解できるはずです。ライオンでもヘビでもヒトでも、史上最初のものは神様が作られた。神はライオンという生体システムを開発し具現化した。だから the lion で「ライオンというもの」となる。

2016-10-12 15:18:11
uroak_miku @Uroak_Miku

17)文法書にあたると「発明品には the がつく」とよく解説があります。The automobile causes air pollution.(乗用車が大気汚染の原因である)など。これも「乗用車というメカニカル・システム」ですね。

2016-10-12 15:21:28
uroak_miku @Uroak_Miku

18)つまり人間の発明品か神の発明品かの違いはあるけれど the lion も the automobile も同じ語法なのです。

2016-10-12 15:22:40
uroak_miku @Uroak_Miku

19)かなり抽象的なものいいのときにはぴったりですね。

2016-10-12 15:23:50
uroak_miku @Uroak_Miku

20)libraries のときは、私たちが日ごろ使っている図書館を思い浮かべよというニュアンスで、それが途中で the libary に変わることで、抽象的議論にギアが切り替わる…そういう文ですこれは。 pic.twitter.com/Wsl82UsDV7

2016-10-12 15:25:57
拡大
uroak_miku @Uroak_Miku

21)ところが伊藤和夫先生はそのあたりのことは一切触れない。主語をどう見抜くかという話に逃げてしまう。 pic.twitter.com/K2DEwiaDhl

2016-10-12 15:27:50
拡大
uroak_miku @Uroak_Miku

22)旧制高校の英語ですね教え方が。著者はまさに旧制高校世代ですし。

2016-10-12 15:29:18
uroak_miku @Uroak_Miku

23)今となっては清々しいがり勉の夢の跡なり。

2016-10-12 15:32:26