不知火に落ち度はない特別編 「財前提督物語」

そんなわけで、今回は特別編。 ボルネオ島在住の財前提督のお話です。 彼が何故にボルネオ島に送られ、過ごしてるかの物語。いろいろ面倒くさい人のようです。 よろしければのんびりごらんください。 続きを読む
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はじめに

※ この話は艦これ二次創作的な何かのネタ帳じみたものです。
独自設定がちらほら混じってるので、適当にご笑覧ください。

今回はボルネオ島在住の財前提督のお話です。
艦娘を好き放題ヤッてるかと思いきや、いろいろ複雑なご様子。

感想はハッシュタグ #落ちぬい か コメントまでいただけますと喜びます。

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

さて、時間取れたので落ちぬいするぞい。 なお、今回は短めなボルネオ島のお話ぞい。 #落ちぬい

2016-09-03 09:07:25

本編

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ボルネオ島、ダルサラーム国支局。 財前提督の率いる艦隊基地。 その執務室に二つの姿があった。 一人は財前五葉。 そして一人は── #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:09:29
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「わざわざ挨拶に来なくても良かったんですよ、日向」 航空戦艦日向。 切れ長の目を持つ、寡黙な彼女の姿があった。 足下にはどころどころに摩り切れの入ったバッグが置かれ、彼女の服装もまた、いつもの艦娘の服装ではなかった。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:11:36
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「伊勢は既に今日の朝、飛行機で日本に帰った」 「それは何より。早く追いかけていってあげてください。業務は全て私が引き継いでおきますから」 「だからもう──その薄寒い演技は要らない」 目を細め、彼女は言う。 「君、その演技は結構疲れるだろう」 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:13:43
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「そうか──お前の言う通りだ。いちいち顔色を伺うのは面倒だからな」 財前は椅子に座り直し、被った帽子を机に置いてまとめた髪の毛を崩す。 表情に先ほどの柔和さはない。 被っていた羊の皮の下から、痩せた狼が顔を出していた。 これが財前五葉──元来の顔か。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:16:43
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「それで、どんな厄介事を持ち込んでくれる気だ?」 「特には」 肩をすくめ、腕を組む日向。 艦娘の装備は一切ないが──それでも彼女は第二世代型艦娘。 肉体強化に重点を置かれた、強化人間である。 ここで彼を仕留めようと思えば、確実にできる人物である。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:18:23
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「それでは世間話か?下らんな」 「そうだな──が、気になったんだ」 日向は歩き、そして棚のグラスに手を伸ばした。 「君とは、考えて見ればこうして話すことはなかったから」 「職務中だが?」 答えを無視するように、グラスは二つ机に置かれた。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:21:57
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「アーリータイムズか」 「どこでも買えるのが気に入ってる」 古き時代の名を持つバーボンが、グラスの中に注がれる。 氷はなく、水もない。 南国の執務室がバーカウンターへと変わっていく。 財前の階級章が、机に置かれた。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:28:06
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「三年か。君の所に就いてから」 「三年三ヶ月と十一日」 嘯く日向に財前が返す。 日向はそれに対して、僅かに眉根を寄せた。 「細かい男だな」 「お前のような大雑把な生き方をしていない」 それもそうだな、と日向はグラスの酒を傾けた。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:32:15
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「当時は正直、不安があったよ」 「貞操のか?」 「ああ。それもあったな」 財前はそも、咎により更迭された提督である。 その内容は機密とされているが、会議記録を追えば簡単に内容は知れる。 知らないのは、その手の話に興味がない夕張くらいか。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:33:49
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「そも、私も干された身なんでな。日本に帰れる日が来るとは思わなかった」 「お前も何かやったのか?」 「いいや? 少なくとも秘書艦を手籠めにしたりはしてない」 「言ってくれる」 財前も酒を傾ける。 バーボンの甘く苦い匂いが、執務室に流れる。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:36:27
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「君はそも、戦う気なんてなさそうだったしな」 「ない。国のために戦う? 冗談じゃないな」 他の提督が聞けば恐らく、噴飯物の話だろうか。 彼はさらりと言い切り、酒をあおる。 「日本も、日本人も、この国の国民にも、守る価値など感じていない」 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:39:11
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「だが、提督でいる。戦うための組織の中にいる」 「何故か、と問いたいのか」 「いいや。君が話したいのかと思ってる」 ふ、とその言葉に財前が口元をつり上げた。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:40:26
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

なんだそれは──と財前は笑う。 「つまり、このお膳立ては何かと思ったら。俺が話したいから聞こう、と言う為の趣向か」 「ああ──なんとなくそう思った」 間違っているなら、飲んだら出ていく。 彼女は三年の時間の最後をそう切り捨てた。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:43:13
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「日向。お前は俺の思った通りだな」 「何がかな」 「お前はどうでもいいんだろう。他人の事など」 ただ、その方が『何か良い』と思ったから。 それだけの理由でしかないのだ。 「……そう思うか?」 細い目をより細め、日向はグラスに酒を注ぐ。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:48:05
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「それで。どうなんだ?」 「断る──と言うのが普通の対応だろうな。そんなクソのような理由で話す奴がいるか」 アルコールと共に財前は言い放ち。 ──だがいいだろう。 財前はそう、言葉を繋げた。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:49:57
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「座れ。立ったままで聞く気か」 「わかった」 日向は短く答え、そして机に腰を下ろした。 張りとボリュームのある尻が、財前の目の前に置かれる。 「……。そこに座るか」 「君を見下ろすのは気分がいい」 肉食の獣が、そう言ってるようにも見えた。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:51:54
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「それでは話してくれ。私は飲んでる」 「今一つ格好が付かないな」 「ネグリジェ姿で話したなら変わったかな?」 「お前がやると、なんの冗談かと思うし、結局変わらないな」 ならいいだろう。 そう日向は笑った。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:53:08
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「昔──研修中の医学生が居た」 財前は酒のグラスを片手に、そう切り出す。 午後の時間の風が、カーテンを揺らす静かな時間の中で、彼は話を始めた。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:55:03
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「そいつは製薬会社の息子だった。医者を志したのも、最終的には会社の椅子に座るためのプロセスでしかなかった」 「よくある話なのかな──」 「よくある話とは言わん。が、そういう境遇の奴で、特に疑問も持たずに働いていた」 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 09:59:20
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ある日、彼はその病院の『名物』を任されることになった」 「名物? 患者のことか」 「ああ。医学誌にも小さく乗る程度の患者でな。ALSは知ってるな?」 「ルー・ゲーリック症だったか。筋肉が硬化するそうだが」 「厳密には違う。運動神経細胞がやられるんだ」 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 10:08:46
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「不治の病とは知ってるが──それで?」 「そもそも彼は新薬研究のために、その病院に研修にやってきていて。目論見通り『彼女』の担当となった」 「わかりやすい理由だな」 「ああ。実にわかりやすい理由だ。」 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 10:12:12
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ただ、患者と付き合う中で、それら全てを失っただけだ」 「ほう──」 こく、と酒を飲み干して。 日向はグラスに酒を継ぎ足す。 #不知火に落ち度はない

2016-09-03 10:13:49
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