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@jopupi 今回は論文が無料公開されていたのですぐ現物を見て内容を確認できましたが、大多数の人は記事の大きな見出しだけ見て、リンクが張ってあっても論文の中身まで確認することはありません。見出しが故意か過失で「先天性甲状腺機能低下症」から「甲状腺癌」に書き換えられても気付けない
2016-10-22 09:49:51データ探しに暇がかかりましたがようやくここまで検証しました
ジャネット・シャーマンとジョセフ・マンガーノと言えば、2011年3月の東京電力福島第一原発事故後に米国北西部で乳幼児の死亡数が35%も上昇したという人騒がせな論文を出したものの、実は自分たちの主張に合うデータを選んで比較していた人たちwarbler.hatenablog.com/entry/20110629…
2016-10-29 17:50:49このシャーマン・マンガーノコンビが2013年3月に、今度は「福島第一原発事故後に米国の太平洋岸5州で先天性甲状腺機能低下症が増えた」という論文を出したfile.scirp.org/pdf/OJPed_2013… この著者らがチェリーピッキングの常習犯と知らない方々に、どこが問題かご説明します
2016-10-29 18:00:56チェリーピッキング=1) サクランボの木になっている実の中から熟した実だけを選んで摘み取ること;2)いいところだけを取る、つまみ食い;3)数多くのデータの中から自分に有利なデータだけを選んでならべ、それを根拠に自説の正しさを主張すること
シャーマン・マンガーノコンビはこの表を見せて「太平洋岸5州で2011年3月17日-6月30日の先天性甲状腺機能低下症が前年同時期と比べて28%増大したが、それ以外の36州ではそのような増大はない」と主張 pic.twitter.com/SjSpuxhBO1
2016-10-29 19:07:22シャーマン・マンガーノコンビは先天性甲状腺機能低下症(米国内すべての州で生後5-7日に行われる新生児スクリーニングの対象疾患になっている)の発生件数を全米50州とコロンビア特別区の保健当局に電話で問い合わせて調査し、そのうち回答が得られたのは41州だったと論文に記載しているが(続
2016-10-29 19:26:03(続き)回答が得られなかった10州(表の赤線)の中にはニューヨーク州やマサチューセッツ州のような年間出生数も発生件数も多い州が含まれ、論文の本文記述「回答が得られなかったのは年間発生件数10件未満の小さな州が大半」は疑問符。 pic.twitter.com/CxlborryX2
2016-10-29 19:40:29この表では太平洋沿岸の5州は青線でマークしてあり、年間出生数に大きな差があることにご注目。カリフォルニア州>>ワシントン州>オレゴン州>ハワイ州>アラスカ州の順。 インディアナ州に赤の点線を引いた理由は次のツイートで。pic.twitter.com/CxlborryX2
2016-10-29 19:49:14最初にご覧頂いた論文の表pic.twitter.com/SjSpuxhBO1 の脚注を見ると「3月17日-6月30日と7月1日-12月31日のデータ(赤枠内)のうち、対照36州の分はインディアナ州を除く」とあるので、この州をはずしたらどれだけ減ったか計算したのが下の赤字。こんなに多い?
2016-10-29 19:58:51そこでインディアナ州保健局のホームページを調べたら、1991-2010年の新生児スクリーニング結果まとめin.gov/isdh/files/NBS… が見つかり、2010年の先天性甲状腺機能低下症(CH)の年間発生件数を見ると47件。前ツイートの表の9ヶ月強で114件とは大違い
2016-10-29 20:15:09こう見てくると、表pic.twitter.com/SjSpuxhBO1 の発生件数の数字自体かなり信憑性に問題ありと言わざるを得ないけれど、新生児スクリーニング結果の全米まとめgenes-r-us.uthscsa.edu/newborn_reports は2006年分までしかネット公表されていないので検証は手詰まり
2016-10-29 20:25:27この論文file.scirp.org/pdf/OJPed_2013… (2012年10月投稿、2013年1月採択)の執筆当時はまだ州別の出生数の2010年と2011年分が未確定だったので(正式の確定結果が出るには1-2年かかる)、著者らは発生率を計算できず発生件数を比較せざるを得なかったが(続
2016-10-29 20:33:33(続き)現在は米国疾病対策センター(CDC)が全米の出生数を2014年分までオンラインデータベースで公表しているのでwonder.cdc.gov/natality.html ここで全州の1ヶ月単位の出生数を調べて(3月17-30日の分は3月分に15/31を掛けて推定)発生率を出してみた
2016-10-29 20:38:53結果はこちら。著者らは「5州では3月17-30日の発生件数が前年同時期に比べて28%増大」と述べたが、発生率でも一応同程度の変化。 pic.twitter.com/CdahfGphl5
2016-10-29 20:46:17さて、シャーマン・マンガーノコンビはこれの前の論文で福島第一原発事故前後のごく限られた時期だけでデータを比較して「事故後に死亡率が幼児の死亡数が増えた」と主張したが、その前と後まで含めたより幅広い時間範囲の変化を調べて傾向とばらつきの大きさを見た結果その主張はひっくり返った(続
2016-10-29 20:55:57(続き)今回の先天性甲状腺機能低下症の発生率でも同じことが言えないかと考えて、太平洋岸5州のデータの時間変化を州別に追ってみることにする。
2016-10-29 20:58:42太平洋沿岸の5州の年間出生数の時間変化を2001-2014年についてグラフ表示したものがこちら。カリフォルニア州が飛び抜けて多く、2位のワシントン州はその1/5弱。3位オレゴン州は1位の1/10以下 pic.twitter.com/UDTYQw8Fb3
2016-10-29 21:10:38太平洋沿岸の5州のうち新生児スクリーニング結果をオンライン公表していたのはワシントン州だけ(2009-2015年)doh.wa.gov/Portals/1/Docu… カリフォルニア州は2009-2014年分を合算で使い物にならないchhs.data.ca.gov/Diseases-and-C…
2016-10-29 21:19:28しかし運良く同じ著者の続報(カリフォルニア州限定で先天性甲状腺機能低下症の発生件数を検討)を検証した英語動画youtube.com/watch?v=DOreFp… に2009-2012年の発生件数データ(動画作者が州保健局に問い合わせて提供を受けたもの)があったので(続く)
2016-10-29 21:26:10(続き)そのデータのスクリーンショットを使ってワシントン州とカリフォルニア州の先天性甲状腺機能低下症の発生率の時間変化をやってみることができた。 pic.twitter.com/8kCwFcV9v1
2016-10-29 21:30:05結果がこちら。2009年以降のワシントン州のデータが年単位しかないため年間発生率の比較になった。カリフォルニア州は2001年からあまり動いていないのに対し、ワシントン州は2001年以降ずっと上昇傾向が続いていて、2010年から2011年の上昇もその延長線上にすぎないように見える。 pic.twitter.com/naant1lO3s
2016-10-29 21:43:35ご参考までに米国の太平洋岸5州の2001-2006年の先天性甲状腺機能低下症の年間発生率グラフをどうぞ。出生数の少ないアラスカとハワイは変動が激しい。オレゴンとカリフォルニアがあまり動いていない中でワシントンの一貫した上昇傾向が目立つ。 pic.twitter.com/szjN4Isl6p
2016-10-29 22:48:51