「神への参与は、ボエティウスの信ずる所では、地上的なものを徒らに逃避し・忘却することによって得られるのではなく、進んで之と正面から闘うことによって得られるからである。従って本書の至る所に於て目立つのは、理性を以ってあらゆる内なる感情と外なる嵐とを克服しようとする現実的態度である」
2016-10-28 00:17:50「哲学の慰め」(ボエティウス)が届いた。訳は、岩波文庫から出ているスピノザの著作の翻訳で有名な故畠中尚志さん。なんとなしの直感ではいたが、やはり、ボエティウスとスピノザの神と現実(肉体)と理性(精神)の三つ組の関係が似ている。
2016-10-28 00:21:10この思想は「謂れなき破門(エクスコムニカチオ)」を身を持って経験した者特有の感覚からくるものなのだろうか。他にも、自然を神のあらわれだと説き、火刑にあった汎神論者ブルーノ、決定論において人間の自由が内在されていることを説き、学問と宗教を厳しく分け、革命に参与し、毒殺されたピコ。
2016-10-28 00:32:24スピノザの思想には、プラトン主義を汎神論によって乗り越えようとした中世の異端さ、そして、精神的までではなく、肉体的迫害にまで発展するような時代的に過激な思想を説いてきた者たちの思想が伏流しているのではないか。
2016-10-28 00:35:39ドゥルーズは「スピノザこそ哲学者たちのキリストであり、そしてもっとも偉大な哲学者たちでさえも、その使徒にすぎないと言ってよいだろう」と述べ、ヘーゲルは「スピノザ哲学か、それとも哲学じゃないかだ」と述べ、シェリングは「スピノザ主義以外は哲学ではない」と述べた。
2016-10-28 00:47:38スピノザへの絶大な評価とその系譜はしばしば説かれるし、そのスピノザの思想の成立を彼の類を見ない半生から解読されたりはするが、哲学史的な成立として読む文献をわたしはまだ知らない。彼以前にも彼の思想形成の決定的な機会となった「破門」に似た境遇に置かれたものたちはいた。
2016-10-28 00:51:29そして、今なお、その力は至るところで違ったカタチで現象している。にもかかわらず、われわれはその微細で数多で人間を内から蝕んでいくようなものを見ないし、見ようともしない。ただの「不遇」として片付ける傾向にある。それこそ現代社会の「不穏さ」の正体なのではないか。
2016-10-28 00:54:30