第14話 「エンドウ沖の残火 パート3」

脳内妄想艦これSS 独自設定注意
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

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2016-10-29 11:49:49
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

__ 第14話 エンドウ沖の残火 パート3__

2016-10-29 11:50:01
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-3-1 配管が、床が、鉄柵が、飛沫のように押し寄せる銃弾によって次々に削り取られていく。 「走れ!足を止めるんじゃねぇ!!」 最後尾の雲龍…照海が後方に防弾シールドを構えながら、通り抜け様に配管やドアを追っ手へと吹き飛ばしていく。 効果の程を振り返って確認している暇はない。

2016-10-29 11:50:46
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14-3-2「最初に入ってきた格納庫を目指すの!急いで!」 先陣を切る五十鈴もシールドを片手に、押し寄せる弾丸から隊列を守りつつ狭い通路を駆ける。 無数の小さな光点が動き、天井の闇からも4人を小銃がつけ狙う。此方は綾波と浜風が五十鈴から受け取った機銃で対抗する。

2016-10-29 11:51:25
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14-3-3 …彼女達の前に表れたのは『蜘蛛』だ。 但し生き物ではない。身体も8本の脚も全てが鋼鉄…おまけにその内前脚2本は機銃で、2本は仕込みブレードときている。 「こんなもの作って何するつもりだったのよ!」 階段下に現れた2匹の機械蜘蛛をバッシュで退け、五十鈴が怒声を上げる。

2016-10-29 11:51:48
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14-3-4 膝の高さ位までの体高の『追っ手達』は通風口から床下、様々な場所から次々に現れて行く手を遮り、また逃げる彼女らを追う列に加わった。 天井でも壁でも意に介さず張り付き彼女らを追うその存在達は、電力を復旧した直後突然どこからか湧いて出てあっという間に空間を掌握したのだ。

2016-10-29 11:52:34
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14-3-5 まるで船の中のようなその施設の構造は、綾波達から銃撃戦の有利を奪い、対して蜘蛛達には至る所からの襲撃のチャンスを与えていた。 不利を感じた4人は直ぐさま配電室の中に転がっていた防弾シールドを引っ掴み、雪崩れ込んできた蜘蛛を掻き分け広い場所を目指していたのである。

2016-10-29 11:53:10
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14-3-6「下りたとき上りの階段は無かったから、一番上です!」 ガンガンガン…!鉄板の階段を4人が駆け上がっていく音が船内に木霊し、その直ぐ下からはガシャガシャと金属の蠢く音が迫りくる。 途中手すりに現れた蜘蛛を下層へ叩き落としながら、4人は最上層のフロアにまで辿り着いた。

2016-10-29 11:54:41
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14-3-7「この先には居ないと思いたいところなんですけどっ!」 壁を這って首を狙ってくる蜘蛛の頭部を綾波が撃ち抜く。蜘蛛はガチャンと重量感のある音を立てて地面に落ち、『生きた』蜘蛛のようにひっくり返って脚をひくつかせる。 「…まぁ、そう思いたいけど無理でしょうね」

2016-10-29 11:58:39
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14-3-8 雲龍が天井の蜘蛛に通り抜け様に拾った鉄パイプを突き立てる。 既に駆け抜けながらもかなりの数の蜘蛛を駆除したハズだが、背後の薄闇に揺らぐガラス質の眼が発する光の数は、減るどころか数を増しているようにも思える。 「この施設、何のために作られたのでしょうね…」

2016-10-29 11:59:02
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14-3-9「分からないけど…深海棲艦もココを目指してた。奴らはこの蜘蛛達にやられた可能性が高いわ!」 最初にくぐった防火扉が目前に迫る。 「奴らが目指していた物を探すのは、蜘蛛をどうにかしてからよ!」 五十鈴が防火扉に手を掛ける。 浜風は爆雷を纏めて取り出し、後方に投擲する!

2016-10-29 12:00:49
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14-3-10「入って!」 開け放った扉をくぐり抜け、直ぐさまロックをかける! ズゥンッ! …重い防火扉が衝撃で撓む。 浜風がばら撒いたのは明石が陸戦用に改良を施した爆雷で、手榴弾の代わりとして使用できた。 「…後ろは何とかなったかしらね」 息を整えながら、五十鈴が前方を睨む。

2016-10-29 12:02:10
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14-3-11 そこは最初に4人の降り立った場所。 …だが、今やだだっ広い埃を被った格納庫は、数十匹の蜘蛛達が天井も壁も床も全ての面を覆う『巣窟』と化していた。 「駆除のし甲斐があるってもんだ」 照海は不敵な笑みを浮かべると、錫杖を伸ばす。 戦いを妨げる『狭さ』から解放されたー

2016-10-29 12:03:01
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14-3-12 天井と壁の蜘蛛達が小銃を伸ばし始め、床の蜘蛛達がガチャガチャとブレードの付いた前脚を威嚇するように擦り合わせる。 「掃討するわよ!」 五十鈴と雲龍が手にしていた防弾シールドを前方の蜘蛛に投げつけ、蜘蛛達は一斉に発砲開始! 4人は別々の方向に散開し、反撃が始まった。

2016-10-29 12:03:11
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14-3-13「足を止めるな!コイツらの銃撃は此方の動きを追ってる単純なもんだ!」 切り込んできた最前衛の蜘蛛のブレードが照海に届く前に空中に吹き飛ぶ。薙ぎ払った錫杖の一撃が関節部を砕き、中身の配線や機構諸共に千切り飛ばしていた。 …しかし連撃は見込めない。銃弾の雨が降り注ぐ。

2016-10-29 12:03:40
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14-3-14「壁や天井の蜘蛛は私達で優先的に狙いますよ!」 反対側の柱に走り込んだ浜風が、もう反対側の綾波に向かって叫ぶ。 「うん、分かった!」 駆け出した二人の両の連装砲から立て続けに火花が迸り、次々に張り付く力を失った機械蜘蛛が落下してもがき、動かなくなっていく。

2016-10-29 12:04:00
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14-3-15「とびっきりの殺虫剤も貰ってるわよ!」 五十鈴は機銃での掃射に混ぜるようにして奇妙な形状の爆雷を蜘蛛の群れの中に投げ込んだ。 ギィイイン!! 目には見えぬ電磁波の波動が狭域に爆散し、蜘蛛達がよろめいて滅茶苦茶な方向に発砲を始める…試作品のパルスグレネードだ。

2016-10-29 12:04:40
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14-3-16「出来栄え上々って明石さんに伝えないとです!」 不調をきたした回路が復旧するより早く、3人の弾が次々に再起不能の鉄屑を増やしていく。 また照海は照海で蜘蛛達の間を駆け巡りながら、錫杖の届く範囲の脚を、頭を破砕して回る。 『殺虫剤』が功を奏し、相手の攻撃の手は緩い!

2016-10-29 12:05:12
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14-3-17「こいつで最後!」 照海が最後の一匹の頭部を錫杖の石突きで潰した時には、既に床は一面鉄屑の山となっていた。 「やっと一息つけそうね」 辺りから機械蜘蛛の動く気配が完全に失せた事を確認すると、五十鈴は軽く息をついてマガジンを整頓する。 …結構な量の弾を使ってしまった。

2016-10-29 12:08:59
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14-3-18「これだけ駆除したんですし、この後の展開が楽になってくれることを願うばかりです…」 各々武器に弾を込め直し、油断なく次の戦闘の準備を整える。 事実、まだ探索は始まってすらいない。 この物騒な施設が何なのか、この蜘蛛達がどこから湧いたのか、一切の見当がついていない。

2016-10-29 12:09:26
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14-3-19「一息ついたら、上から順に回っていきましょう」 荒々しさが消え、雲龍も普段の穏やかな口調に戻る。 「アンタさ…前から思ってたんだけど、何も普段からそっちの口調を使わなくてもいいんじゃない?」 五十鈴が戦闘機械の残骸を壁側へ蹴って除ける。ピクリとも動かない。

2016-10-29 12:22:08
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14-3-20「仕方ないでしょ。あまり普段から荒い口調を使おうとすると、『雲龍』が嫌がるんだから」 照海は艦娘化を経験した4人の中では一番人の要素が強く残っている。 故にどちらかと言えば普段は彼が雲龍の心に合わせて過ごしているのだが… 「要するに戦ってる時は素が出てるワケね…」

2016-10-29 12:22:14
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14-3-21「…」 そんな雲龍を何故か寂しげな目で見ているのは…浜風だ。 「…どうしたの?」 気付いた綾波が不思議そうに声を掛ける。 「いや…ちょっと羨ましいな、って」 「それってどういうー」 ー答えは聞きそびれた。 突如耳障りな金属音が響き渡り、警戒を余儀なくされたためだ。

2016-10-29 12:22:25