第14話 「エンドウ沖の残火 パート3」

脳内妄想艦これSS 独自設定注意
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-3-22「な…に!?」 4人の視線が音の響いてくる方向、格納庫中央に集中する。 先程破壊した機械蜘蛛の残骸の一角から、突然床を突き破るようにして何かが下から伸びてきている。 やや頼りなげな格納庫の電灯の光が、死骸の間から突き出たそれに反射する。 …それは巨大な『刃』だ。

2016-10-29 12:25:05
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14-3-23 ギリギリと耳障りな音を立てながら重厚な金属の床がその刃によって切り取られ、徐々に大穴へと変わっていく。 「構えなさい!」 五十鈴の指示に身構える4人の前で、床から伸びる刃の数が2本に増え、這い上がるようにして刃の持ち主が大穴から姿を現した。

2016-10-29 12:26:21
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14-3-24 現れたのはまたしても機械の蜘蛛…! それも先程まで戦っていた蜘蛛よりも遥かに大きく、一本の鉄脚の先から膝節までが五十鈴達の身長程もある。 「げぇ、コイツらの親玉って訳…?」 大きいのは体高だけではない。 両前脚の火器もブレードも当然体に見合った兵器となっている!

2016-10-29 12:28:02
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14-3-25 キューン、と小さな稼働音が聞こえ、『鳶』の前に立ちはだかる大機械蜘蛛のレンズの眼が此方を捉えるようにギュリギュリと不規則に動く。 「左右から行くわよ!!」 五十鈴が叫んだのと同時に、蜘蛛が鎌首をもたげるように翳したガトリング砲が稼働し唸りを上げる。

2016-10-29 12:29:33
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14-3-26 ギュィイイイイッ!! 高速回転音と共に、圧倒的な量の弾丸が4人がそれまで立っていた場所を容赦なく抉る。だが、4人は既に左右に散開済みだ…蜘蛛の向かって右側に綾波と雲龍、左側に五十鈴と浜風! 蜘蛛はガトリングの角度を左右独立で操り、弾けた鉄の飛沫が後を追いかける!

2016-10-29 12:29:50
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14-3-27 照海は舌打ちすると、先の戦いが始まった時に捨てた防弾シールドを咄嗟に拾い上げ、蜘蛛本体に向かって投げつける。 だが、シールドは蜘蛛の体に届く前に、振り向きざまに振るわれたブレードによって空中で切り裂かれた。見事に真っ二つだ。 「あれは受け止められそうもねぇな…」

2016-10-29 12:29:58
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14-3-28 蜘蛛が綾波達の居る側を向いたことで、五十鈴と浜風は蜘蛛の背中側を捉えていた。 「食らいなさい!」 二人の砲撃がメタリックな腹部に殺到する。 ガガッ!ガァンッ!! …ところが、直撃にも関わらず腹部を構成する金属には碌な傷を与えることが出来ていない! 「硬い!?」

2016-10-29 12:32:48
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14-3-29 それだけではない。安全と思われた背面だが、よく見ると蜘蛛の糸疣が小さく伸び此方に動きを合わせている。 「…避けなさい!」 反応が若干遅れた! シュルルルルッ!! 糸疣から勢いよく液状の糸が吹き出し、五十鈴と浜風に殺到! 二人はこれを辛くも横に跳んで回避する。

2016-10-29 12:33:08
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14-3-30「!?」 しかし、回避中の浜風は突然強い力で引き戻される感覚を覚えた。 何事かと振り返ると、跳んだとき後ろ手に持っていた連装砲の先端に先程の液体が付着。伸びた糸は床に着弾した液弾の塊と絡まってしまっている。 「ぐっ…!」 力を籠めて引っ張るが、糸が切れない!

2016-10-29 12:33:48
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14-3-31「接着液です!気を付けて!」 直後、蜘蛛の腹部の一部が展開し更なる小型の機銃が現れ浜風を狙ったため、彼女は貼り付けられた片方の連装砲を諦めて回避行動を取る。 背部への攻撃もさることながら、前への攻撃は更に熾烈。 強力な二本の刃とガトリング砲は前部へ集中していたのだ。

2016-10-29 12:35:03
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-3-32「危ねェ!」 照海が横に薙がれた刃を体勢を低くして避け、振り下ろされた刃をマカコで避けて距離をとる。着地地点をガトリング砲が付け狙うが、綾波が連装砲を左右の砲に連射し照海への狙いを逸らす。 今度は逆刃が綾波をターゲットにするが、照海が子蜘蛛の死骸を投げつけて逸らす。

2016-10-29 12:35:15
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-3-33 蜘蛛はまるで全方向が見えているかの如く背中側と前側の戦闘を同時にやってのけ、更に攻撃の手も緩めない。 近接攻撃は刃によって阻まれ、銃撃は硬質の体によって弾かれる… 「どうするのよこれっ!防戦一方じゃない…!」 液弾と小銃の狙いを柱の影でやり過ごし、五十鈴がごちる。

2016-10-29 12:35:53
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14-3-34「明石さんのパルスグレネード、もう無いんですか!」 同様に近くの柱の影に滑り込んだ浜風が、五十鈴に向かって叫ぶ。 「試作品だからって事で、さっきの一本きりだったのよ!あそこで使うんじゃなかった…!」 マガジンを入れ替え、直ぐさま離脱。 …直後、柱を接着液が覆った。

2016-10-29 12:38:35
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-3-35「何か勝機がある筈です!きっと何か…!」 攻め手の嵐の中で、綾波は頭の中で風見の言葉を必死に思い返す。 「(見えるもの全てが狙撃対象…弾はその時々で最良の使い方を考える…!)」 この蜘蛛を相手に狙わなくてはいけない物は、何なのか…

2016-10-29 12:39:20
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-3-36 孤島の密林の中、先刻『鳶』が通った道を一人の艦娘が息を切らせて走り抜けていく。 「もー!折角のプライベートビーチがっ!」 喚く艦娘。勿論明石である。 『抜け駆けしようと考えるからそうなるんだろうが…』 通信機の向こう側から、風見の呆れ声が聞こえてくる。

2016-10-29 12:39:53
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-3-37「それで、何でしたっけ!あの蜘蛛には『本体』が居るハズだって話ですよね!」 倒木を飛び越え、枝を払い、明石も4人が向かった先を目指していた。 『恐らくな!確か、対深海棲艦を想定した兵器の研究開発計画の中にドローンを用いて戦闘を行う兵器の案があったハズだ』

2016-10-29 12:40:29
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-3-38「だとしたら、探索に向かった皆と本体が鉢合わせててもおかしくないハズと…でも、何でソレがこんなところに居て、しかも何で私達を狙ってくるんです?それに、人の兵器じゃ深海棲艦は倒せないハズですよね!一応確認ですけど!」 次々に湧いてくる疑問を、明石は矢継ぎ早に浴びせる。

2016-10-29 12:41:03
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-3-39『…』 風見は暫しの沈黙の後、口を開く。 『恐らくそろそろ通信状態が悪くなってくる頃合いだ。こっちを狙ってくる理由は正直分からん。だが、他の部分の説明は出来ると思う…電波切れまでによーく頭に入れといてくれよ』 …風見の話を聞きながら、明石は一人木々の間を駆ける…

2016-10-29 12:42:39
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__ 第14話 エンドウ沖の残火 パート3終わり パート4に続く__

2016-10-29 12:43:31