第14話 エンドウ沖の残火 エピローグ

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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

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2016-11-13 16:56:42
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

__ 明日だけを見て生きるなんて、出来ないから __

2016-11-13 16:57:37
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__ 第14話 エンドウ沖の残火 エピローグ__

2016-11-13 16:57:43
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-E-1 あぁ、どうもモヤモヤして落ち着かない。 午前の日差しが差し込む静かな食堂の片隅、明石は手にしていた設計資料をぶっきらぼうに閉じる。とても集中して読んでいられるような気分ではない。 …エンドウ沖からの帰投から一夜明けた監獄島は鬱屈とした空気に包まれていた。

2016-11-13 16:58:52
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14-E-2 原因は勿論、先日の任務で『艦娘』の処分を行う事になってしまった事。『鳶』の任務開始以来初めてのケースだった。 綾波は今朝は朝食を拒否して自室から出てこず、浜風は昨日から夜通し工廟に居る。五十鈴と雲龍も演習場に籠りっぱなしだ。 風見も、口数少なく物思いに耽っている。

2016-11-13 17:00:40
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-E-3 明石も気持ちが乱れて物事に集中出来ないでいた。 静かな場所ならと考えたのだが、効果はイマイチである。 …今回の件には、気持ちの捌け口が無いのだ。 相手が深海棲艦なら、怒りの感情をぶつける先としては容易い。 だが今回は違う。憎む対象が居るとしても手の出しようもない。

2016-11-13 17:01:46
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14-E-4 忌々しいのは、あの時どんな選択を取っていても、後悔も後味の悪さも違った形で押し寄せて来るという事だ。 …今頃結果報告を受けた諜報部隊が内部を調べるためにあの施設に向かっている事だろう。 『鳶』が偽装を行っていなければ、艦娘の持つデータは結局軍の手中に収まる結末だ。

2016-11-13 17:04:29
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14-E-5 …今まで乗り越えてきた任務。後ろめたい任務、危険な任務。 その時も決して罪悪感や憤りが生まれなかった訳では無い。 だが今回生まれた後ろ向きな感情は、一晩で飲み込むには余りにも大きく、またこれから先もきっと皆の中で燻っていく事だろう。 「…幸薄いなぁ、私達…」

2016-11-13 17:05:28
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14-E-6 …頬杖をついて明石がぼーっと窓の外を眺めていると、不意にほんのりと良い香りが漂ってきた。 顔を前に戻すと、朝食の洗い物を済ませた鳳翔が厨房から出てきて、こぶ茶を乗せた盆を明石の正面に置いたところだった。 「あ、鳳翔さんどうも…」 鳳翔自身も明石の向かいに腰を下ろす。

2016-11-13 17:06:43
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14-E-7「作ってみたんです。宜しければ飲んでみて下さい」 鳳翔は微笑んでそう言うと、自分の湯飲みに口を付ける。 明石も言われるまま湯飲みを手に取り飲んでみる。 …漂う香りが幾何か気持ちを落ち着けてくれるような気がした。 「…鳳翔さん、あの…」 質問を遮り、鳳翔は首を横に振る。

2016-11-13 17:08:03
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14-E-8「私にも分かりません。裏の側面を知り、日陰で暮らす私達がどう行動する事が正しい、正しかったのか。どうすれば憤らず、憎まずに済むのか」 言葉にせずとも伝わる。彼女もまた、苦しんでいる一人なのである。 まして鳳翔は戦う事すら出来ない。 鳳翔は目を瞑り、またお茶を一口飲む。

2016-11-13 17:10:29
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-E-9 考える。感じる。心がある。 故に、自分のしている事が正しいと思えなくなった時、周りのしている事がおかしいと感じ始めた時、自己を支える足元がぐらついてしまう。 人も艦娘もそれは同じ。 その意味で言えば、何も知らずに居るという事は実に幸せな事とも言えるのかもしれない。

2016-11-13 17:11:17
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14-E-10「…別に好き好んで知りたくは無かったんですけどね。でも今回のはやっぱり…強烈でしたよ」 人の世界を脅かす異形の存在達を敵として目標を定め、勝利を目指して真っ直ぐに前を向いて進む本来の『立ち位置』には、自分達はもう居られない。 現実を目の前に、余計に強く感じるのだ。

2016-11-13 17:14:44
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14-E-11 揺らぎは疑念を作り、疑念は不安を生む。 そして厄介な事に今の風見と彼女達には『選択肢』が殆ど無い。 正しい訳が無い、と思っている事も強制されかねず、かと言って根本を変えるだけの『力』も『自由』も無い。 それを全員がはっきりと認識する結果となったのが今回の任務だ。

2016-11-13 17:16:20
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14-E-12「(だが、このまま全ての戦いが終わるまで我慢し続ける事など到底出来はしない。心がすり減り、生きる力まで奪われる訳にはいかない…)」 上階では、遠くの海を眺めながら風見が思いを巡らせる。 「(正直あいつらにここまで重たいものを背負わせる事になったのは失策だった)」

2016-11-13 17:16:53
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14-E-13「(『鳶』は現状、ここから外界に間接的に影響を与えられる唯一の存在…結成当初はこれで流れを変えられるかと俺も浮かれていたが、最大限注意せねば負担はあいつらに丸々伸し掛かってしまう」) 綾香、大智、杏理…本当の姿も知らない3人の事が、そして照海の事が頭に浮かぶ。

2016-11-13 17:17:57
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-E-14「…あいつらだけは、何としてもこんな役割からは…外に…」 「え?何でしょうか?」 文机で作業していた大淀が反応する。心の声が漏れてしまった。 「あぁ、いや…少し考え事だ。それより、昨日出した報告書はちゃんと誤魔化してくれたか?」 報告書を引き合いに出し誤魔化す風見。

2016-11-13 17:19:01
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14-E-15「当然です。余計な火の粉はかかってこないに越したことはないですからね…暴走した兵器と交戦、破壊した兵器は自爆、設備は兵器が破壊し情報の回収は困難…こんな筋書きです」 「上出来だ」 実際には艦娘の居た頭部は後から爆破してその存在を偽装し、設備も此方で破壊したのだが。

2016-11-13 17:20:00
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-E-16「今頃は残骸の確認に向かっているというところでしょう…ですが提督、今後ずっと誤魔化し続けるのは難しいかと思いますよ」 「…だろうな。『鳶』が担当した任務で毎度折角の貴重な情報がロストしたとなれば、疑われるのも時間の問題だ」 風見が疲れた表情相応の深い溜め息をつく。

2016-11-13 17:21:05
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-E-17「あまり駆け引きの難儀な任務が降ってこない事を願うばかりだ」 愚痴っぽくこぼすと、風見は外の空気を吸うためにやや埃っぽい執務室を後にした。

2016-11-13 17:22:18
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14-E-18「てぁああッ!!」 雲龍の突き手を躱した姿勢から、五十鈴が気合いを込めた裏拳打ちを放つ。 だが、拳が雲龍の側頭部を捉える前に彼女は身体を沈めて拳を躱し、更には腕が通過する前にこれを掴んで豪快に投げ飛ばす。 「痛っ…!」 マットに背中から叩きつけられ、五十鈴が呻く。

2016-11-13 17:23:38
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14-E-19「さっきから貴方、ずっと直線的で力任せになってるわよ」 雲龍が呆れたようにマットの五十鈴を見下ろす。 「うるさいっ!もう一回よ!」 ネックスプリングで起き上がると、五十鈴は威嚇するように雲龍を睨みつけ、再度仕掛けていく。『やれやれ』という調子で雲龍も構える。

2016-11-13 17:24:38
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14-E-20「分かってる!アンタに当たり散らしても何にもならない事くらい!」 組手を始めてからどれ程時間が経ったか、遂に抑制の利かなくなった五十鈴の激情が拳と共に、蹴りと共にボロボロと零れ始めた。 「人から艦娘にされて!一度は全部忘れて!」 雲龍は無言で聞き受け、攻撃をいなす。

2016-11-13 17:27:51