第14話 エンドウ沖の残火 エピローグ

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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-E-21「…人の記憶が戻ったと思えば!こんなとこに閉じ込めて!」 雲龍が突き出された腕の動きに乗じて五十鈴に体落をかける。五十鈴は床に倒されるも勢いを殺さず一度転がり、腕の力で跳ね起きる。 「良いようにこっちに重責を投げつけて!自分達は高みの見物ってワケ!?」

2016-11-13 17:28:26
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14-E-22 間髪は入れない。起き上がりの足のバネを力に飛びかかり、食い下がる。 「深海棲艦に勝つためだかどうだか知らないけど…!自分達の良いように人間も艦娘も使い潰して…!!」 涙が溢れてくる。右拳に全力を注ぐ… 「こっちの殴れない場所でコソコソと、気に食わないのよっ!!」

2016-11-13 17:29:07
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14-E-23 バシッ!! …怒り、不安、悲しみ、そんな様々な想いの乗った直線的な一打を雲龍は両手のひらで受け止めた。敢えて躱そうとはしなかった。 足先が地面を擦り、体が後ろに下がる。重い一打だ。 「はぁーっ…はぁーっ…」 荒い息遣いの後、五十鈴は膝から崩れ、がっくりと項垂れた。

2016-11-13 17:30:31
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14-E-24「…ごめん」 俯いていて雲龍には彼女の顔は見えないが、床にはほた、ほたと染みが増えている。 「…構わないわ。あの時貴方がやらなかったら、私がやっていただけ。貴方はあの時、良く決断した方よ」 顔を伏せたままの五十鈴の脇を、コツ、コツと雲龍の足音が通り過ぎていく。

2016-11-13 17:31:26
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14-E-25 コツッ やや後方で足音が止まった。 「この位の事で良ければいつでも付き合ってあげる。少しは貴方の痛みを分散なさい」 …雲龍はズキズキと痛む掌をまじまじと見る。 「(いつまで受け止めきれるか分からないけどね)」 最後に五十鈴に一瞥くれると雲龍は演習場から立ち去った。

2016-11-13 17:32:26
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14-E-26「…人も艦娘も、アンタ達の都合の良い駒にさせてなるもんですか…」 一人、演習場の真中で拳を握り締める。 「今に見てなさい、深海棲艦だけでなくアンタ達にも、吠え面をかかせてやるんだから…!」 …その時、ふいに後ろで扉が開く音が聞こえた。 慌てて涙を拭い、立ち上がる。

2016-11-13 17:33:32
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14-E-27「五十鈴さん」 雲龍と入れ替わりで入って来たのは浜風だった。 五十鈴は顔が見え辛いように少し暗がりに立ち、努めて平静を装う。 「あ、あぁ貴方だったの。どうしたの?訓練なら今さっき終わった所なんだけど」 「それなら、丁度良かったです」 浜風が手に持っていた小袋を探る。

2016-11-13 17:34:56
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14-E-28「(本当、鈍いんだから)」 さっきまで酷い顔をしていた事に気付かれずに済んで安心した半面、気付いて貰えなかった事に少々の不満も湧いた。我ながら我儘な感情だとは思った。 「これを渡したくて」 浜風は取り出した硬貨程のサイズの物を手の平に乗せ、笑顔で五十鈴に差し出した。

2016-11-13 17:35:39
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14-E-30 大智の手に乗っていたのは、鳶を模り、グラスや鉱石の欠片を埋め込んだブローチだった。 綾香は指先でブローチを転がして、まじまじと見る。 「すご…これ、一晩で作っちゃったの?…って、だから目の下そんななのね…」 一晩中起きていたのか、大智の目の下には隈が出来ている。

2016-11-13 17:37:16
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14-E-31「折角の可愛い顔が台無しだよ?」 「さっき五十鈴さんにも同じ事を言われたよ。でも可愛いはやめてくれ…」 少し顔を赤らめて、大智が目の下をこする。そうは言われても、見た目には完全に浜風なのだから仕方がない。 「明石さんにも手伝ってもらって作ったんだ。これは、綾香に」

2016-11-13 17:38:23
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14-E-32「材料が十分な量無かったから、先ずは2つだけ…」 大智が空になった小袋を折り畳み、ポケットにしまう。 「もしかして、私と五十鈴さんのため?」 「…まぁ、ね。特に…」 綾香の手の平の上で、ブローチを立てて側面を見せる。 円形の基部を囲う透明なグラスが嵌め込まれていた。

2016-11-13 17:39:10
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14-E-33「この一個は特別なんだ。これは…あの艦娘の形見。彼女が着けてた指輪だから」 大智がグラスの部分を指でなぞって言う。綾香の目が驚きで大きくなる。 「えっ…」 「変な勘違いするなよ?盗んだんじゃなくて周りの人に確認したし…綾香はあの時そんなの聞ける状態じゃなかったけど」

2016-11-13 17:40:42
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14-E-34「俺達はこれからも色んな戦いに駆り出されていく。そうしたら、きっとまたどうしようもない現実とぶつかることもある…葬り去られてしまう現実もある。でもせめて、忘れずにいよう。助けられなかった人達の、命の重さを、その顛末を」

2016-11-13 17:44:01
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14-E-35「…うん」 綾香は小さなブローチを両手で握り、胸に当てる。境遇は私達と似ていても、私達のように生きる事の出来なかった小さな命。忘れはしない。 生き残った私達は前に進むのだ。 行き止まりとなってしまった運命の分も、精一杯。

2016-11-13 17:44:16
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14-E-36「…だけど、そうね…」 監獄島地下の隠された研究室。 机に突っ伏した扶桑の艶やかな髪が、机の端から流れ零れる。彼女自身は、自分の目の前に持ち上げた試験管を指先で回し、中身の赤黒い物体にぼんやりと視線を注ぐ。 「このままではいつまで経っても私達は鎖に繋がれたまま…」

2016-11-13 17:45:45
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

14-E-37「それこそ、生き延びている限りは、ね」 …扶桑が自嘲気味にクスッと笑っている目の前で、撹拌された液体が小さく反応を起こしていた…

2016-11-13 17:46:24
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__ 第14話 エンドウ沖の残火 終わり 第15話 暴走 -Berserk- に続く__

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