フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 #21 「回収」

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（限界近くまで消耗した俺だが、援軍が駆けつけてくれたことで何とか持ち直した。義奥の兄ちゃんやラッタ、ノゾム達に先輩、そして恵里…総力を結集してやカキな新種にとうとう止めを刺した！）

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「せりゃあああああああああああっ！！！！！！」 絶妙なタイミングで伸ばした重力の刃が見事に奴を両断する。俺達を散々苦労させた謎の新種はあっさりと真っ二つになった。ラッタが追い打ちのビームで念の為に手足の残りを焼き払っていく。先輩の援護を受けて兄ちゃんが残る雑魚に止めを刺した。

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「ああああぁぁぁぁっっ・・・………」 恵里は勢い余って西側通路の岩壁をぶち抜いていった。

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フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 #21 「回収」 実況・感想タグ： #禁森実況

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－禁忌の森・入口。ツクヨミ隊車内。 「はる君！？」 瑠梨が椅子から腰を上げる。声量は小さかったが、この数分静かに森の奥を見つめていた彼女が急に動いたものだから同乗する３人は驚いた。 「どうしたの瑠梨ちゃん…！？」 「あ…良かった。終わったんだ…」 1

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顔に安堵を浮かべ、浮かせていた腰をゆっくりとシートに戻す。 「…前に報告しとくかい？」 運転手の提案は断った。今見えたのが遠隔視か予知かが判断出来なかったからだ。つまり戦いが今終わったのか、これから終わるのかが分からない。彼女が受ける神託…或いは霊感はそう都合良くはない。 2

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どの道、後援は急いでくれているのだし、曖昧な情報を与えて混乱させるより、そのまま進んで貰った方が良い。ただ、これで瑠璃は安心出来た。 「あの…終わったようなら炊き出しを手伝ってから、迎えの準備に移ろうと思うんですけど」 瑠梨の隣、円が提案する。 3

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現在地の駐車場は狭い。予想外に救助対象が増えたことで、急遽炊き出しと増援の送り出しの為に場所が空けられ、車は周囲に散った。今はこの車一台しか場内にはいない。隊員も車の護衛と周囲の警戒要因以外は慌ただしく動き回っている。戦いが終わったのなら彼らを手伝うべきだろう。 4

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「まだ前から正式に終戦報告は来てないんですけど…」 「まあ良いんじゃねぇか？迎えの儀も考えたらこっちは長く手伝えねぇだろうし」 迎えの儀はここから３０分ほど離れた、出陣の儀と同じ場所で行われる。出陣の儀の時にも後の用意は整えてはいるが、それでももう２０分近くは時間はかかる。 5

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帰りは除雪済みの下り道で、後援が出したブルームもある。早ければ４０分前後で戻ってくる者もいるだろう。炊き出しも手伝うなら急いだほうが良い。 「万一まだだったらコイツが呼ぶから行こうぜ」 「俺が待機ですか…！？」 難色を示す助手席に前との連絡を任せ、運転手も降りた。 6

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「瑠梨ちゃん…どうしたの？」 「え？」 運転手の先導で炊き出しテントへ歩いて行く。軽く吹雪いており、寒気が肌を刺す。 「戦いは…終わったんでしょう？」 「そう。なんですけど…」 隊員に誰一人死者・重傷者を出すことなく終わった、或いはこれから終わるのは間違いない。 7

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それでも全くの無傷というわけでは無さそうなのが、瑠梨には気掛かりだった。表情に出したつもりはなかったが、やはり円には分かってしまう。 「…皆がちゃんと休めるように準備しておきましょうね」 「ええ、そうね…」 8

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－洞穴東。 恵里は壁をぶち破った勢いで西にいた援軍と話し合い、礼太と共に残敵の掃討に向かった。西側と連携して北側で挟撃する。新種の突撃と移動で糸が吹き飛んだ南半分と違い、北はだいぶ糸が残っており慎重に進まねばならない。その分時間は掛かるが、親グモ数匹程度なら危険はない筈だ。 9

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「…さっき先輩が気配を消してたのは、イワダマシの術だったんですね」 「ええ」 「レコード」のレコード。魔術や妖術を記録する為の使い捨て用。必ず記録出来るとも限らず、出来ても使いこなせるかは未知数。挙句に記録した術は時間経過で蒸発してしまう三重苦だが、今回は上手くいった。 10

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「…俺は良いですけど、普通に自分の勘を磨いたほうが早いと思いますよ」 苦々しい顔で昔を思い出す。虫の言葉が分かると説明しても、からかわれるならマシで可哀想な者を見る目を向けられたこともしょっちゅうだった。クワガタを操って見せても餌やフェロモンを使ったと思われてしまう。 11

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クワガタ語を解説したことも一度や二度ではないが、他の人間には分かって貰えなかった。今でこそ魔術的能力として僚勇会の面々には認知され、頼られてもいるが、クワガタ語を教えろと言われると二の足を踏んでしまう。何度か教えてみた経験からすると、そもそも彼以外に理解出来るのかも怪しい。 12

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「そんなことを言わずにお願いしますよ。エイジ君に残っている私の胸の温もりを堪能しても瑠梨ちゃんには内緒にしておきますから。瑠梨ちゃんと比べたら誤差レベルの胸ですみませんが」 「し、しねぇ…しませんよ！」 図星だった。まあ科学的に言えばとうに残っている筈もないのだが。 13

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「あのぅ。そろそろ決めたいのですが…結局これ、どの部分をサンプルにしましょうかね」 義奥が口を挟んだ。東側に残った３人は話しながらも新種の検分をしていた。 「あまりに堅過ぎましたし、内部構造も変質しているのかも知れませんね。体組織の一部だけでも持って帰りたいところですが」 14

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新種の残骸をコンコンと叩く。今回は突発的な事態だった為、この新種はおろか、普通のバケグモを丸ごと一匹持ち帰れる用意すらない。普段から最小限の回収装備は携行してはいるが、それは体の一部を回収する為の小さなものである。今回の場合、どの一部を持ち帰るのかが問題だ。 15

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変質しているとはいえ、新種を構成する一節一節は通常種の体だ。持って返った結果、普通と同じでした、とか変異の原因は分かりませんでしたでは困る。だがあまり考える時間もない。捕食量や体の大きさにもよるが、妖怪の死体は煙となって消えていくからだ。今回の場合、あと数分で消えるだろう。 16

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「兄ちゃんの言う通りだ。こいつは単に合体しただけじゃねぇ。一節一節の能力まで上がってやがった。それにシラヌイの治療糸がヤリの体から吹き出してきた」 「少なくとも循環系は同化していたと言うことですか？」 「だと思うぜ」 片桐はクワガタ達に巻き付いた糸を指で巻取りながら答えた。 17

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シラヌイバケグモの治療糸は、体外から出す以外に循環系を通して出す事も出来る。それを隣接したヤリバケグモの体から出した以上、内部も融合している筈だ。そしてそこまで融合しておきながら、自切による切り捨てが決断的過ぎる。人間が手足を切り離すようなものだ。そこに違和感を感じた。 18