フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #3 「資料室」

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まとめを更新しました。「フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #2 「超砲撃」」 togetter.com/li/1060909

2016-12-22 01:52:50
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フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #3 「資料室」

2016-12-26 01:07:28
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(前回までのあらすじ:俺は田舎町の風科(かざしな)に住んでる高校生、片桐だ。風科の北には、人食い妖怪の出る広大な禁忌の森があって、俺達僚勇会が定期的に討伐してる。ある1月の月曜、俺達は謎の霊波反応を追って森の奥に進み、謎の新種と遭遇し何とかこれをぶっ倒した。)

2016-12-26 01:11:16
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(被害者は救出できたのも含めて前例の無いくらい大人数で、敵も新種とあって本部は大騒ぎだ。俺も負担のデカい能力を多用しちまって半日ぶっ倒れて寝てた。その間に、森の奥では藤宮先輩たちが一頑張りしたり、本部では敵の正体の一端を掴んだりしてたが俺がそれを知るのはもっと後のことになる…)

2016-12-26 01:14:20
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火曜の夜。僚勇会資料室。パソコンと作業スペースのある机がいくつか並んでる。机には埋め込み式のドリンクホルダーがあって、自販機からフリードリンクを持ってこれる。ブックホルダーも備え付けてあるし、本とパソコンを付き合わせて仕事するには最適だ。暖房も暑過ぎねぇでいい感じだ。 1

2016-12-26 01:24:47
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俺は過去の妖怪のデータを探していた。隣の部屋から紙の本も揃えて調べてるが、稀覯本の写しもあるってのに成果はねぇ。。あのバケグモが合体したキメラバケグモ(この名前で決まった)の中にいた寄生虫型妖怪に繋がるモノを見つけてぇんだけどな。俺は飲み物に手を伸ばす…がある筈の場所に無い。 2

2016-12-26 01:28:32
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「はい、片桐くん。お探しの」 ホルダーに手を伸ばした俺の手の中に、マイカップが持たされる。濃い目の緑茶だった。 「空になってたから洗って変えといたよ」 「あれ、そうだったか?悪ぃ」 こいつは八代俊(やしろしゅん)。タメの高一で別のクラスだ。僚勇会では事務方をやってる。 3

2016-12-26 01:32:46
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俺に飲み物を渡した後、部屋にいた他の大人数人にも渡していく。俺みたいに色々飲みてぇのもいれば、同じのをずっと飲む人もいるが、その辺や好き嫌いも考えて渡してくれてる様だ。 「そろそろ食事時じゃないですか?」 俊が部屋全体に呼びかけた。言われてみりゃもう7時半だ。 4

2016-12-26 01:36:44
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「俺達はまだ良いかな。ちょっと食べてから来たし」 「そうよね。そもそも私達が来たのは6時だったでしょ?休憩してらっしゃいよ」 「そうそう、病み上がりなんだし、むしろもう帰ったほうが良いでしょ」 確かに俺は5時前くらいからで、俊はそれよりちょっと遅かった位からだったしな。 5

2016-12-26 01:40:15
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4時頃に軽く食べて、この人達が来た時に菓子を貰ってちょいちょい食ってはいたが、3時まで半日寝てたし…言われてみりゃ腹減ってるな俺。自覚したら死ぬほど減ってきた。 「そうだな、ちょっと外させてもらうかな。煮詰まって来たし…俊は?」 「ご一緒させてもらうよ」 俺達は部屋を出た。 6

2016-12-26 01:46:15
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食堂に着くと、客は俺達の他に6人だけだった。元々ここは六人掛けのテーブルが四つだけでメニューも少ない。開いてるのは朝十時から夜八時までと24時間体制の僚勇会にしてみりゃ短いが、朝夕は家で食う人が多いし、夜勤組は弁当か自販機の軽食だ。ピークは昼時だけみてぇだ。 7

2016-12-27 01:04:47
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それでも普段は今の倍以上はいるんだが、昨日の騒ぎの影響ってとこか? 「悪ぃな、付き合わせちまって」 「食事の話…じゃないよね。気にしないでくれよ。大事な作業だしね」 俺達はお盆を取ってカウンターに向かう。この規模だから食券なんて気の利いたものはねぇ。 8

2016-12-27 01:12:44
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「親子丼、大盛りで」 「あいよ、ぶっかけおろしうどんね」 「おい」 「病み上がりに重いもんはやめときなよ」 食堂のおばちゃんが諭すような顔で言ってくる。 「こっちゃ一食半抜いて腹ペコなんだよ…」 「じゃあトッピングの豚しゃぶサービスしとくよ」 9

2016-12-27 01:17:32
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「……余りもん処分させたいだけじゃねぇよな?」 ここの麺料理は昼は生麺、夜は乾麺だが、今テーブルの兄ちゃん達が食ってるのは全員分生麺だ。そもそも乾麺の時は値段が50円安い。 「協力してよ~捨てたら勿体無いでしょ?」 止めろ、そのウインクはせめて20年前に見せて欲しかった。 10

2016-12-27 01:22:56
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「ここは協力しようよ。ギャルゲーなら的場さんの高感度が上がるところだよ」「何で恵里本人のいねぇ所で上がるんだよ」 「的場さんも食材の無駄は嫌うだろう?」 「おう」 あいつの家の定食屋は、足の早い食材は今の時間くらいには売り切っちまう。機会損失より廃棄を出すほうが嫌だからだ。 11

2016-12-27 01:29:41
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「そういうのが本人のいないところでも影響するんだよ」 「ギャルゲー怖ぇな」 「いや、現実でも噂とかで広がるでしょ」 「現実も怖ぇな…いやアイツの好感度上げて何の特があるんだよ。現実じゃ連携技とかそうそう閃かねぇぞ」 「…君の認識も怖いな」 「は?」 12

2016-12-27 01:33:23
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「じゃあ春夏ちゃんはうどんね」 「その呼び方やめてくれってのに…まあ注文はもうそれでいいけどよ」 女みてぇな響きと安直な字面が気に入らねぇってのに、おばちゃん連中は中々止めちゃくれねぇ。注文の方はうどんでで良いやもう。夜にここで生麺食えるのも珍しいしな。 13

2016-12-29 00:44:12
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「俊君は?」 「…山菜おろしそばでお願いします」 「お前、カツカレーって言ってなかったか?無理に付き合わねぇで良いんだぞ?」 「僕も好感度稼ごうかと思って」 「恵里の?」 「…君のさ」 俊は片手を俺の肩に置いた。 「やめろ、気持ち悪い」 14

2016-12-29 00:50:03
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…正直、今眼前でカツを食われると辛いから好感度は上がっちまったけどよ。 「冗談だよ。食堂のお姉様方のさ」 「あらやだ。俊くんったら。天ぷらでもおまけしましょうか」 「じゃあ生玉子でお願いします」 「何がお姉様だよおば様だろ」 「…アンタの豚肉は生でいいね?」 「…殺す気か」 15

2016-12-29 00:55:16
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---兄ちゃん達が直前に来てたお陰か湯は温かいままで、俺達の麺は両方ともすぐ出来上がった。 「はい、お待ちどう」 俺は麺も豚しゃぶも出来立ての山盛りを受け取った。うどんは大盛りというより二人前半はある。その上、プリンまでついてる。 「良いのかよ?こんなに?」 16

2016-12-29 00:59:53
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色々文句を言ったが、これじゃかえって悪いくらいだ。 「良いの良いの。いやぁ助かったわ。今日は待機予定や訓練の人まで森に行っちゃったから、昼時のお客が普段の半分でね」 「やっぱりか。じゃあまだめっちゃ余ってんじゃねぇのか?」 盆を運びながら聞いてみた。俊は後を付いてくる。 17

2016-12-29 01:08:41
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「いや、夕方に少し人が戻ってきたのとアンタ達のお陰で、後は賄い用だけよ」 「あっやっぱ押し付けやがったんだな」 「プリンまでオマケしたんだから良いじゃないの」 「…これ、賞味期限今日だぞ」 持ち上げておばちゃんにラベルを向ける。細かいことを言うと、今日の21時だった。 18

2016-12-29 01:13:59
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---俺たちはずるずると麺を啜った。コシのある麺と出来立ての豚しゃぶの柔らかさ、俊と交換した山菜が食欲をそそってなかなか食う手が止まらねぇ。 「桐くん、その食べっぷりなら具合は大丈夫なのか?」 半分くらい食ったところで後ろの兄ちゃん達が声を掛けてきた。 19

2016-12-29 01:18:03