Side Story 6 存在しない第参型

脳内妄想艦これSS 独自設定注意 詳細は此方を参照http://www65.atwiki.jp/team-sousaku/pages/18.html
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

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2016-11-18 22:00:04
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

__ Side Story 6 存在しない第参型 前編__

2016-11-18 22:00:30
白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

SS6-1「…これにも、書いてない」 綾波は手にしていた重たいファイルを閉じた。その拍子に積もっていたホコリが飛んで眼前を舞い、顔をしかめる。 ここは監獄島の資料室。と言っても、当時の研究資料は抜かれているため、艦娘化に関する資料はその殆どが風見や扶桑が纏めた物だ。

2016-11-18 22:04:14
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SS6-2 綾波がここでとある資料を探し始めたのは、本当に単純な興味から。 今、探しているのはー… 「三…参…うぇえっ、この写真グロい…」 綾波が慌ててファイルを閉じる。 …『参』。そう、どうやら艦娘化の方式にはナンバリングが存在する。 因みに綾香や大智、照海は『第肆型』だ。

2016-11-18 22:06:46
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SS6-3 綾香が『綾波』となって目を覚ました際、病室に入って来た男が口走った言葉。鮮明に覚えている。 そして、この島に来てから『艦娘の血』による最初の変異方式『第壱型』、それから杏理が五十鈴となる際に用いられた洗脳を加えた方式『第弐型』の話は聞いた。だが、思ってみれば…

2016-11-18 22:09:26
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SS6-4「これにも…載ってない。私達が『肆』なら、その前に『第参型』があっても良い筈なのに、なんで?」 綾波は閉じたファイルを棚の元あった場所に戻す。端からここまで順に見てきたが、棚の終わりも近くなってきた。 見てない場所があるとすれば、執務室の風見の棚という事になるが。

2016-11-18 22:12:07
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SS6-5「…やっぱり司令官に聞いてみた方が確実かなぁ」 次のファイルにも見てみたい情報は無く、載っているのは過去ここに居たらしい被験者の経過観察ー 「ほう、何をご所望かな?」 「ふひゃぁあああっ!?」 唐突に後ろから聞こえてきた声に、思い切り変な声を出してしまった。

2016-11-18 22:14:38
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SS6-6「しっ、司令官、いつからそこに?」 慌てて振り返ると、綾波の真後ろにいつの間にか風見が立っていた。 「たった今だが。そこまで驚かれると自分の存在感に自信が無くなるんだがな」 風見は困ったように後ろ髪を掻く。 集中するあまり、資料室に人が入って来たのに気付けなかったのだ。

2016-11-18 22:16:46
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SS6-7「資料室に入る許可を求めるなんて珍しいからな、ちょっと様子を見に来たんだ…俺の作ったレポートなんか見て何が知りたいんだ?」 「えーっと、私達って艦娘化したときの方式が『第肆型』って呼ばれてましたよね。で、五十鈴さんが『第弐型』で」 綾香は指で4と2を作って風見に見せる。

2016-11-18 22:19:42
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SS6-8「じゃあ『第参型』もあったのかなって…ちょっと気になって」 「あぁ、その事か…なら、調べても意味は無いぞ」 風見は手近な棚の縁につーっと指を走らせ『掃除しねぇとな』という顔をする。 「どういう事ですか?」 「簡単だ。俺にも分からないからだ」

2016-11-18 22:21:41
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SS6-9 予想していなかった答えに、ぽかんとする綾波。 「え、だって…弐と肆があったら間は参…」 「俺も正直気になるところではあるんだが」 やや真剣な思案顔になって、風見は続ける。 「そもそも『壱』も『弐』も、被験者の症状を基に俺達が勝手にそう呼んでいるだけ、とは前に言ったな」

2016-11-18 22:23:45
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SS6-10 風見が前に扶桑が艦娘化を説明した時に使ったホワイトボードを前にマーカーを取る。普段誰も使わないため、あの時の説明書きが消されずそのままだ。風見は、壱~肆を示すラインを並列させて書き、二本にする。 「あちらさんも此方と同様、ナンバリングを行っているのは確かだが…」

2016-11-18 22:25:50
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SS6-11「その中であちらと共通認識なのは恐らく『壱』と『肆』だけだ。壱は初期の直接投与型を指し、肆は他ならぬ君が体験した艦娘化方式」 風見が二つのラインの『壱』と『肆』をイコールで繋ぐ。 確かに、『第肆型』という言葉をここで風見に伝えたのは、外ならぬ綾香なのだ。

2016-11-18 22:28:22
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SS6-12「だが『弐』は違う。これは此方に送られてきていた被験者のパターンから、俺が区別のためにつけた型番だ…要するに、本部側では洗脳を『弐』とは呼ばず、単なる壱の改良版としている可能性もあるし、或いは弐という失敗例が隠れていて、俺達の思う弐こそが『第参型』の可能性もある訳だ」

2016-11-18 22:29:38
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SS6-13 風見は『島』と頭に記したライン側の『弐』からもう一方のラインに矢印を複数伸ばし、『?』を書き加える。 「つまり…参も絶対あるにはあるけど、どんな方式がそれに当たるのかは、研究している人から聞かない限りは分からないって事なんですね」 「そういう事だ。しかしな…」

2016-11-18 22:32:35
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SS6-14 風見が『腑に落ちない』という表情で資料室の一角を占拠しているファイルを目で追う。 「…ここに送り込まれて来た人間達の事は皆正確に覚えている。勿論、彼らに施されていた処置も、具に覚えている。だがその中に、俺の定義づける『壱』と『弐』以外の方式は無かったように思うんだ」

2016-11-18 22:33:47
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SS6-15「それってつまり…?」 「そう、第参型は『一人もここに送り込まれていない』可能性があるんだ」 風見がホワイトボードの弐と肆の間の空白をじっと見つめる。 「最後の第二型被験者が来てから綾香君がここに送り込まれるまでの間に一時…空白の期間があったんだ」

2016-11-18 22:37:15
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SS6-16「ある時からぱったりと被験者が送られて来なくなり、そして暫くその状態が続き、突然とんで肆型だ…さぁて、これは何を意味している…?綾香君ならどう考える?」 風見が口の端を少し歪めて綾香をチラリと見る。 「え、えっと…例えば空白の期間に『第参型』が研究されてたとしたら…」

2016-11-18 22:40:02
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SS6-17「…第壱型、第弐型の被験者が、其方に回されていた、と説明できるのではないでしょうか」 我ながらこれは良い回答だったのではないか、と綾香は内心グーを作った。 「うむ、良いだろう…続けてくれ」 …風見は容赦してくれなかった。 「うぇっ!?え、えっと…その後は…」

2016-11-18 22:42:20
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SS6-18 風見が暫くその状態が続いた、と言っていたのが脳裏に過る。これはどういう事だろう?思い付くことは二つあった。 「その状態が続いた…のですから、その研究は難航して長引いてしまったか、或いは逆にとても上手くいって、失敗してしまう例が無くなった…なんてどうでしょうか!?」

2016-11-18 22:44:51
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SS6-19「うん、素晴らしい。綾香君も少し成長したな」 風見が笑顔を綾香に返す。綾香は意外にも褒められて嬉しくなる半面、心の冷や汗を拭った。 「そう、その両方が考えられる。だが、実は両方に引っかかる点があるんだ」 風見は再び手のマーカーを走らせ、空白の期間に『参』を二つ加える。

2016-11-18 22:45:55
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SS6-20「先ず、研究が難航した場合を考えよう…この場合、後に肆型が登場するのは分かる。参型は失敗し、実用化されなかった」 風見が片方の参に×を付けた。 「しかし、そうだとすると一切実用化されなかった物に型番を付けた理由と、何より『ここ』に被験者が来なかった事に違和感を感じる」

2016-11-18 22:47:30
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SS6-21 …確かにそうだ。監獄島の本来の機能を考えれば、綾香の前に被験者が居ないというのは少々奇妙な感じがする。 「では、逆に上手くいっていたと考えよう。これも、ここに第参型が来ていない事を加味して考えると、ここに送り込む必要があるような失敗は生まれなかった、という事になる」

2016-11-18 22:50:05
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SS6-22 風見がもう片方の参に◎を付ける。 「すると、今度は『第肆型』が生まれた理由がよく分からなくなる。照海の話では…第肆型の被験体の成功例は殆ど無かったという話だった。それ程までに上手く行っていたのなら、わざわざリスクの高い最新型に乗り換えようとしていた理由は何だ?」

2016-11-18 22:57:37