『この世界の片隅に』弾薬雑考その1(高角砲着色弾)

『この世界の片隅に』に登場する日米の弾薬についての解説です。第一回目は高角砲の爆煙を着色するメカニズムについて。
太平洋戦争 日本軍 この世界の片隅に 空襲 弾薬 武具・兵器史
tamaya8901 47276view 33コメント
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  • たまや @tamaya8901 2016-11-20 23:49:33
    高角砲の色付きの爆煙、これを出した映像作品って殆ど前例が無いんじゃなかろうか。弾薬を調べている立場からいえば、絵を描くの関係させる例の表現は屈指の名シーンだと思う。#この世界の片隅に pic.twitter.com/MYo8TzkK3a
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  • たまや @tamaya8901 2016-11-18 22:12:03
    高角砲の弾丸の爆発煙、赤、青、黄色などになっていたが、 これのメカニズムについてちょっと解説しようか。 #この世界の片隅に
  • たまや @tamaya8901 2016-11-18 22:15:42
    日本海軍の砲弾で、対艦用の一式徹甲弾が着弾観測の便のために風帽内に染料を入れていたことは良く知られているが、対空用の高角砲弾にも色素が入れてあって、爆発するとまさにこの映画の描写のようにさまざまな色の爆煙が空中に咲いた。
  • たまや @tamaya8901 2016-11-18 22:23:01
    これの開発は相模海軍工廠が当たった。爆煙を着色するには、そのキャンバスたる元の煙を白くする必要がある。その元になる物質を弾丸に仕込んで、一緒に爆発させることにしたが、次のような条件がもとめられた。
  • たまや @tamaya8901 2016-11-18 22:24:58
    1、弾丸の中にあって安定かつ安全なこと。 2、高温高圧の爆発に耐えること。 3、爆発の威力を落とさないこと。 4、製造容易なこと。 そこで、無水硫酸や塩化亜鉛を検討したが この条件は簡単に満たすことは出来なかった。
  • たまや @tamaya8901 2016-11-18 22:30:20
    そんな折、リンが高温高圧の空中で酸化され、極めて吸湿性の高い無水リン酸になることがわかった。すなわち、リン酸を爆発物と一緒に爆発させると、発生した無水リン酸が空気中の水分を吸湿し、リン酸水溶液の水滴からなる白い雲ができるというわけである。これで、着色するキャンバスの用意はできた。
  • たまや @tamaya8901 2016-11-18 22:35:04
    次は、着色する絵の具である。 一式徹甲弾などとは違って、一般的な染料を使うと爆発の際に燃えてしまって黒い煤になってとても使えない。要するに、爆発で燃えずそのエネルギーが物質の昇華に使用され、リン酸水溶液に着色できる必要があったのだが、この選定ではなかなか適当な物を見出せなかった。
  • たまや @tamaya8901 2016-11-18 22:39:54
    しかしそのうち、この条件に合う物質が見つかった。赤色のものだと、コンゴーレッド(顕微鏡用プレパラートを作る時に細胞質や赤血球を染色するのに用いるもの)がこれにあたる。この物質を赤燐と一緒に混合して爆発物と一緒に爆発させると、極めて良好な着色煙を得られることが分かったのである。
  • たまや @tamaya8901 2016-11-18 22:44:49
    この原理で、同様な特性を持った種々の色素を赤燐と混ぜて爆発させれば、好きな色の爆煙が作れるようになった。 具体的な砲弾への装填方法は、赤燐と色素を混合したものをプレス成形し、ベークライトと真鍮の二重の容器に封入して弾丸底部に挿入した。
  • たまや @tamaya8901 2016-11-18 22:52:04
    試験は亀ヶ首、鹿島にて12cm高角砲弾で行い、煙の発生状況や着色状況、弾片の大きさなどを確認し、十分に威力と効果があると認められて採用され、相模海軍工廠第一火工部で量産に移った。この着色弾は、映画で見たように大戦末期に実戦投入され、戦後米軍から製法等の質問があったという。(終)
  • たまや @tamaya8901 2017-02-11 13:08:50
    米軍が調査した日本海軍の高角砲の着色弾について補足。これは、戦後米軍に鹵獲された12.7cm砲弾用の着色剤容器の写真である。外観は黒色で、写真では見えないが、製造日を示す白色のラベルも貼付してある。 #この世界の片隅に pic.twitter.com/yYfhB7rt7I
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  • たまや @tamaya8901 2017-02-11 13:09:11
    寸法は、長さ3と3/4インチ(約95mm)、直径3と1/8インチ(約7.9cm)。重量1.25ポンド(約570g)と記録されている。
  • たまや @tamaya8901 2017-02-11 13:10:07
    ついでにここでもう一枚の写真を見て欲しい。2つの容器が写っていて、特に「B」のほうは着色剤容器によく似ている。実はこれ、砲弾に入れる毒ガス容器なのである。陸軍では、砲弾自体にガス液を入れたが、海軍では特薬缶という容器にガスを入れてハンダ付けで密封し、それを砲弾に入れた。 pic.twitter.com/jwA1XbInrc
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  • たまや @tamaya8901 2017-02-11 13:10:49
    Aは15cm砲弾用のもので、長さ4 1/2インチ(約11.4cm)、底径3.3インチ(約8.4cm)、重量1.28ポンド(約580g)、Bは12.7cm砲弾用のもので、長さ3と3/4インチ(約95mm)、直径3インチ(約7.6cm)、重量1.38ポンド(約630g)、とある。
  • たまや @tamaya8901 2017-02-11 13:11:40
    内容物のガスはいずれもCN、すなわちクロロアセトフェノンである。 こうした化学兵器は、着色弾と同じ相模海軍工廠で研究が行われていた。12.7cm砲弾用の着色剤の容器は、化学剤容器とよく似た形と寸法をしており、開発の参考にした可能性もあるが、直接それを裏付けるような証言は知らない。

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