フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 エピローグ 「帰還」　（前半）

フォビドゥンフォレスト＠カクヨム投稿中 @fbd_forest

…おっさんはあんまり詳しいことは言わなかったが、取り敢えず恵里達は…少なくともウチの両親が知ってる範囲の仲間には死傷者は出てねぇようだ。一安心だが、生存者とクワガタに言及がねぇ。そりゃそうだろうけどよ…まあいい。自分で聞ききゃあ良いんだ。…部屋に俺の親達が入ってきた。 18

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…両親は２分ほどで出ていった。俺はその間寝直そうとしてたが、上手く眠れなかった。二人はおっさんや医療スタッフと廊下で少し話してから礼を言い、帰っていった。俺はどうしたもんかと思っていると、おっさんたちが入ってきた。 「起きた様だね」 「たった今な」 「そうかね」 19

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気分はどうだとか当たり障りの無い話をしてから本題に移る。 「…検査では異常は見つかりませんでした。予知の半暴走による…知恵熱みたいなものでしょう。明日の朝の検査で大丈夫なら、二時間目から学校に行って大丈夫ですよ。ただし脳の話ですからね。少しでも不調を感じたら診せる様にね」 20

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「…はい」 「それと、やっぱり予知は戦闘では使い過ぎないでね。君の場合、普通の予知より負担が大きいみたいだから、使いこなすまでは避けたほうが良いね」 「いや…どうも一度発動しちまうと、その後連続で発動しやすいみてぇで…」 「そうかい…完全に使うなと言いたいくらいだが…」 21

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スタッフの爺さんが苦笑する。 「難しいですね先生。今回の様に予知で命を拾う場合もありますから、例えば使いこなすまで出撃禁止、とも言い難いところです」 篠森のおっさんも苦笑で答える。 「いや待ってくれよ。出撃禁止はねぇだろ」 「例え話さ、もっとも何度も予知が暴走する様なら…」 22

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俺は両手を振って静止する。 「待ってくれって…！今ん所、追い詰められなきゃ勝手に発動はしねぇみてぇだから大丈夫だよ！今回みてぇな想定外、そうそう何度もあってたまるかよ…」 そう、何度もな…。 「そうだね…まあ、とにかく無闇に使わず、訓練でのみ使うように心掛けて下さいね」 23

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「ああ…分かってるよ」 あんまり気分の良い能力じゃねぇからな…。所詮は予測、もしくは精度の高い妄想みてぇなもんのくせに、やたら精密に自分や仲間がヒデぇことになる映像や音が出てくるし、自分の未来の場合は痛みすら感じちまう欠陥能力だ。頼まれてもなるべく使いたくねぇぜ。 24

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「さて、私は失礼しますね。スタッフも交代で休憩中ですけど、４・５人は動けますから、何かあったら呼んで下さいね。食欲があるなら軽食くらいすぐ出せますから」 爺さん先生が部屋を出て行く。頭を下げるためにゆっくり立ってみたが、普通に立てた。おっさんと二人で挨拶し、その場で見送る。 25

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「飲めそうかね？」 おっさんが焙じ茶を入れてくれた。両手で湯呑みを受け取る。温めにしてあるな。 「あ、どうも…ええと…」 「うん、どこから話したものかね。まず隊員の全員と、救出時点で生きていた生存者は全員無事た。君も含めて寄生を受けた形跡はない」 そうか、一安心だ。 26

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茶を一杯流し込む。ティーパックにしちゃ美味いな。多分葉と入れ方の両方が良いんだろう。俺が湯呑みを置くのを待っておっさんが続ける。 「元々寄生を受けていなかったのか、禊で払い落としてしまったのかは、禊の前後に採取した血液の分析待ちだがね」 27

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分析結果が出るには数日掛かる。まさかそれまで禊を待つ訳にもいかねぇ。寄生以前に瘴気中毒で死にかねねぇし、大勢をそんな長く拘束しとけねぇ。今は体調の良い奴から優先で送り返し始めてるらしい。今、この階には重症者の他数人だけで、そいつらも週末までには送り返せる見込みだ。 28

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「ここも昼過ぎまでは殺人的な忙しさだったそうだ…あの時以来、かな」 「おっさん…」 おっさんは自分の茶をゆっくりと半分飲んだ。 「私はつい２０分ほど前にようやくこちらに戻れたところだがね」 今は市長をやってるおっさんだ。それが戻ってこなきゃならねぇほどの大事なんだよな。 29

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「そして、君のクワガタの行方不明の４匹だが、２匹は衰弱しているものの生きて見つかった。残敵の捜索部隊に寄ってきたそうだ。だがまだ１匹は行方不明、もう１匹は…残念だが…ああ…遺体で…」 「いや死体でいいぜ、そこは」 死んだクワガタを遺体と呼ぶほど、俺は虫寄りの人間じゃねぇよ。 30

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「そうかね…。ともかく死体は君達が最初にマダラバケグモと戦った辺りからそう遠くない辺りで見つかった。生きていた２匹もその近くにいたらしい。木に叩きつけられ、半分溶かされていた。敵に気づかれてしまったんだろう」 「そうか…まあ仕方ねえさ…それでバケグモは？」 31

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「君達の突入後に洞穴から逃げ出したものは殆ど倒したようだが、桐葉君達から逃げた数匹はまだ見つかっていない。洞穴探索と並行して捜索中だ。当面は普段以上に人の封鎖を徹底しなければね…」 逃げた連中は子グモ。霊波探査では見つけにくい。最悪、育つのを待つほうが早ぇかも知れねぇ。 32

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まあそっちは大したことはねぇ。肝心なのは…。 「あの蟲野郎…寄生虫は？」 「まだ正体は不明だ。何分、ウチで調べるには小さすぎるし、分析班の人員が遺品と残敵の捜索、それに被害者回りの調査に取られてしまっているからね。最終的には外部に委託することになるだろうね」 33

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ウチで調べらんねぇのは癪だが仕方ねぇ。さっきも言ったが、ああいうチビ妖怪は禊で払えちまうから、細かい研究は全然進んでねぇし、当然研究設備もあまりねぇ。外に頼むのも仕方ねぇな。それにウチの後方部隊は専業者が多いが、同時に兼務も多い。あんまり同時にアレコレやらす訳にもいかねぇ。 34

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「被害者達は奴が呼んだのか？」 「むしろ私や分析班が君に聞きたいくらいだね。何か考えがあれば教えてくれないかね。思い付きで構わないよ」 おっさんは真剣な眼差しで俺を見る。俺から「正答」が出てくるとまでは思ってねぇ筈だ。人を攫った手段や被害の範囲もまだ把握出来てねぇからな。 35

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「…奴はバケグモを操る声は持ってたけどよ、少なくとも洞穴ん中じゃ人間を直接操っては…ねぇよな？」 「そうだね。君は洞穴の中の被害者に直接会ってはいないと思うが、佐祐里くん達によれば操られた様子はなかったそうだ。それと、まだ未確定だが攫われる時にクモを見た者はいないそうだ」 36

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「そうだな…」 俺は考えを整理する。妖怪が人前に姿を見せずに、広範囲から人を攫う。直接人は操れねぇ。人を操るクモを操ることで間接的に人を…被害の範囲がそれにしては広過ぎる…そうだ恵里の言っていた説をベースに…。 「現段階での…完全な憶測でよけりゃあ、仮説がある」 37

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「フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 エピローグ 「帰還」　（途中・約2/3）」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1050927

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「フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 エピローグ 「帰還」　続き

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（病室で目覚めた片桐春夏は、両親を寝たふりでやり過ごした後、医療スタッフと僚勇会リーダー・篠森の訪問を受ける。人間の仲間や片桐自身には大事無いことやクワガタの安否などを聞かされる。更に篠森は新種の正体や事件の謎についての意見を片桐に求めた。片桐が告げる仮説とは…）