フォビドゥンフォレスト2話「バケグモ大進撃」 エピローグ 「帰還」 (前半)

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俺は残りの茶を飲んだ。 「結論から言うと、あの寄生虫野郎と別に主犯がいる。多分、風科の外の野良妖怪だ。ソイツが空を飛ぶとかして人間を集めて森に運んで、クモに食わせたんだ。クモを育てて食う為にな」 「…なるほど、あの洞穴はその妖怪の牧場だったという訳かね」 「ああ」 38

2016-11-21 22:46:20
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少し回りくどいようにも感じるが、人間を食わない妖怪や、体の構造上そもそも食えねぇのもいる。少数派だけどな。 「とすると、あの寄生虫は」 「その新種の手先…牧場の番人、みたいなものじゃねぇかな。家畜を操ってテメェらの番をさせちまう訳だ」 「ある意味、合理的かも知れないね」 39

2016-11-21 22:50:40
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「その説を採用する前に一つ良いかね。確かバケグモには人を操るものもいただろう。クロバネバケグモというのが有名だったかね」 子グモを撒いて、そいつらに人を操らせる奴だ。操り系の奴では一番対象範囲が広い種類だな。 「ヒモ野郎がクロバネ共を操ったってのは無理があんな」 40

2016-11-21 22:55:15
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おっさんは無言で続きを促した。 「クロバネの補足範囲はせいぜい数キロ先だ。それ以上は上手く子グモが飛ばねぇし、運良く30キロとか先についてもガキのほうが親を見失っちまうんだ。今回の被害範囲、広いんだろう?」 確か隣の県とか数十キロ先までだった筈だ。おっさんが頷く。 41

2016-11-21 23:00:14
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「なるほど。何十匹もいないと今回の範囲はカバー出来ない訳か」 そして1・2匹ならともかく、そんな大量のバケグモが森の外に出ても気付かねぇほと、ウチの監視は無能じゃねぇ。その辺はおっさんのほうが承知の筈だ。特に言及はしねぇ。かと言って、風科の外に元からいたって線もまず無い。 42

2016-11-21 23:07:42
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復習になるが、森の奥の「大風穴」は数百年前に日本中の邪気を一箇所に集めて、妖怪の発生を集中させ、討伐をしやすくする為に作られた、とか言われてる。それでもマジで全ての邪気を集めた訳じゃねぇから、森の外にも妖怪はいる。でもB級越え妖怪がゴロゴロいるのはウチの森だけだ。 43

2016-11-21 23:11:31
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風科の周りの魔術組織もアホじゃねぇから、森の外に妖怪がゴロゴロいりゃ、ぜってぇどっかが気づく。隠蔽能力に長けた未知の新種1・2匹だけならまだしもな。 「ここまでは分かったよ。だが君の説を採用するとして、もう一つ大きな問題があるね」 「その新種がどこ行ったかってことだよな…」 44

2016-11-21 23:17:14
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「君達の活躍でエサを取り損ねて、人知れず餓死していれば幸いだが…なんとも言えないね。今は分からないことが多すぎる。被害者が拐われた、或いは催眠や幻術にかかった時の状況や、寄生虫の分析、洞穴の調査…全て途中だからね」 「全然大外れかも知れねぇからな。あんま気にしねぇでくれ」 45

2016-11-21 23:22:25
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所詮は仮説。それも虫食いだらけの方程式を当てずっぽうで埋めたみてぇな杜撰な解だ。おっさんも最初に言ってたが、現時点で答えが出せる筈もねぇ。本気で期待してた訳じゃねぇだろう。俺の頭の調子を診るついでに、頭の体操か暇つぶしをしてくれる気だったのかも知れねぇ。 46

2016-11-21 23:28:12
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「単にヒモ野郎に、超広範囲の人間を操る力があった!…ってだけってオチも全然あり得っからな…」 「はは…流石にそこまではないだろうけどね。ともかく参考にはなったよ。君が捕獲してくれたサンプルの件と併せて評価させてもらうよ」 「…え?」 47

2016-11-21 23:32:34
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「私の一存で決める訳ではないから断言は避けるが、最低数万円は期待してもらっていいと思うよ」 おっさんは茶の残りを飲むと、悪戯っぽい笑顔で立ち上がった。 「いや待ってくれ。俺は」 会長の指示を無視して洞穴に突っ込んだんだ。評価してもらえる道理がねぇ。 48

2016-11-21 23:38:00
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「ふむ。君は佐祐里くんが危険を承知で出した指示に従って、突入を敢行。結果として、その時点での生存者の全員救出に見事成功した、と聞いていたが何か違ったかね?佐祐里くんが日高くんへ残した伝言記録もあったし、報告でも彼女の決断と聞いていたのだが…」 「いや、あ…」 49

2016-11-21 23:42:23
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「危険覚悟での突入は確かに褒められたことではない。だが隊長がそう決断して部下が従ったのならば仕方のないことだ。部下に独断専行される隊長よりは、自分の意志でリスクを選ぶほうが良い。そうは思わないかね…?」 「…思い、ます…」 汚ぇ…暗に会長の評価が下がるぞと言いやがった…。 50

2016-11-21 23:50:28
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「宜しい」 「…やり方が汚ぇぞ…流石政治家…」 「何の話かは分からないが、酷いな…まあ市とはいえ政界で揉まれれば色々とやり方も身につくさ」 「え?元々政治家に向いてたんじゃねぇの…?」 「む…」 俺はそのつもりで言ったんだが、心外だったっぽい。少し拗ねたような顔になった。 51

2016-11-21 23:54:36
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「それともう一つ」 「お、おう」 「僚勇会を預かるものとして…こんなことは言ってはいけないのだろうが…私は見ず知らずの他人よりも、隊員達…特に君達のような若者の命が大事だと思っている。くれぐれも…くれぐれも無茶はしないで欲しい」 「……ああ」 52

2016-11-21 23:59:34
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「でも勘違いしねぇでくれ、勝算はあったんだ」 「そうか」 「奴がクモを操るのは想定外だったが、じゃなきゃクモ共がビビってる隙に、二人が被害者を連れ出してくれると思ったんだよ。説明の暇はなかったが、本当ならそうしてくれてた筈だぜ」 「なるほど…考えがあってのことなら良いんだ」 53

2016-11-22 00:09:15
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「ああ、俺も、瑠梨が巫女でいるウチはくだばる気はねぇよ」 「…もっと志は高く持ってくれたまえ」 「んじゃあ、おっさんを揺するネタが出来たことだし、コイツをいつ使うかゆっくり考えさせてもらうぜ」 「ん?…アッハッハッハ。困ったねコレは。ハハハ」 54

2016-11-22 00:15:50
まとめ フォビドゥンフォレスト2話「バケグモ大進撃」 エピローグ 「帰還」 (後半・完) フォビドゥンフォレスト2話「バケグモ大進撃」 まとめ http://togetter.com/li/1024051 1話 「英雄たちの遺産」まとめ http://togetter.com/li/1020459 2話「バケグモ大進撃」まとめ http://togetter.com/li/1024051 登場人物紹介: http://togetter.com/li/1020993 1086 pv 1