【深海機巧戦】

戦争の犠牲になるのは真なる事実である
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「すべてが上手くいけば、この戦いで歴史は大きく変わる。どちらにせよ、覚悟は決めておくことだ」「そうですね…!」 海艇砦が僅かに動きを見せた。敵の本隊が近づいて来たようだ。通信機から漣の慌てた声が聞こえる。シールドの解除までは今しばらく時間を要するらしい。

2016-11-21 23:30:43
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「さあ、開戦だ」海艇砦の頂上からいくつかの人影が降ってきた。その人影、深海棲艦は海中から現れた増援と合流し、一つの軍勢となってハワイに押し寄せた。 「どうかご武運を!」瑠奈花はスピーダーバイクに跨ってライトセイバーを起動し、溢れ出る軍勢の中へと飛び込んでいった。

2016-11-21 23:30:57
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花は深海棲艦が犇めくハワイの海を単騎で駆けていた。1人と見るや束になって襲いかかる敵を、瑠奈花はすれ違いざまに斬り裂いていく。彼はその間、戦火に苛まれつつも美しく煌めくハワイの海について考えていた。

2016-11-21 23:32:17
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

白亜の巨人が顕現した戦いから数週間後、瑠奈花は1度ハワイを視察したことがある。当時ハワイはまるで毒性を持った油に覆われたかのように汚染されており、立ち入る調査船の船体すら瞬く間に腐敗させてしまい、立ち入ることさえ叶わなかった。

2016-11-21 23:32:59
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

この毒性のようなものはハワイを覆っていた瘴気にも含まれており、他の追随を許さない堅牢さを誇るフライトリバティーですら侵入するのがやっとで、探索などままならない状況だった。それ程までに汚染された海が、僅かな時間でここまで浄化されるとは俄に信じ難い。

2016-11-21 23:33:41
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

魔法の類によるものか、何らかの装置か、いずれにせよ、深界の技術力は侮れない。ハワイの海が浄化された途端、海艇砦と深界軍が現れたのは偶然ではない。そんなことを考えながら、瑠奈花は深界軍と争う雪花艦隊の元へスピーダー・バイクを飛ばした。

2016-11-21 23:34:31
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

雪花艦隊最高の剣士、天龍と綾波は互いに背中を合わせ、周囲を囲う深海棲艦の相手をしていた。天龍が剣を振るうと、その軌跡が衝撃波となってその場に留まった。 「綾波、伏せろっ!」綾波は頷き、身を屈める。その背中を掠めるように、空中に静止した4つの衝撃波がそれぞれの方向へ吹き飛んだ。

2016-11-21 23:35:25
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

衝撃波は群がる深海棲艦を殲滅したが、数は大して減っていない。だがその一瞬の隙が、瑠奈花の進路を作り出した。瑠奈花はスピードを保ったまま直進し、ライトセイバーで深海棲艦を5人同時に薙ぎ払い、天龍達の前で急停止した。

2016-11-21 23:35:47
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「無事か!」「私たちは問題ありません。それよりも…」「あのデカブツへの攻撃命令はまだか!?」 開戦の火蓋が切って落とされたことで、海艇砦は徐々に攻撃モードへとシフトしていた。 「漣を待て。間もなく完了する!」「なら司令官、お願いがあります」綾波が深海棲艦を斬り捨てながら言った。

2016-11-21 23:36:46
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「どうした?」「子日さんのところへ連れて言ってください。あの子1人で戦ってるんです!」瑠奈花は頷き、綾波をバイクの後部へ乗せた。 「頼んだぜ!こっちは寧ろ1人の方がやりやすいからよ!」天龍は衝撃波を飛ばして、再び瑠奈花の進路を確保した。

2016-11-21 23:39:20
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「よし、ここは任せる。いくぞ!」 瑠奈花はフルパワーでその場を離脱し、子日の元へ向かう。 「綾波、お前達は比叡の元にいたはずだ。大分戦線が乱れているようだな」「敵の数が多いんです。この戦い、普段とは明らかに違いますよ」「そうだろうな。私も嫌な予感がする!」

2016-11-21 23:41:29
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

子日は海艇砦のすぐ近くにいた。綾波の言った通り、子日は単騎で一軍相手に戦っている。背中のジェットパックを巧みに操り、両腕を火炎放射器に変形させて周囲を焼き払う。子日は海艇砦の中心から現れた二連主砲を傍目に捉えた。

2016-11-21 23:41:46
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

アレに近づくことさえできれば…。だが数だけは多い敵兵士がそれを許さない。その時、子日の耳はスピーダー・バイクの駆動音を聞き取った。 「はあぁぁーッ!」 今度は頭上から力強い叫び声。バイクから跳躍した綾波が群れの中に飛び込んだ。

2016-11-21 23:42:50
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

綾波は華麗にレイピアを振るい、深海棲艦を次々と葬っていく。演舞のような動きで斬り裂いた後にレイピアを鞘に収め、背中を向けたまま肩に掛けた連装砲を取り、後方から襲いかかる敵を撃ち抜く。別方向では瑠奈花も深海棲艦を一掃したところだった。

2016-11-21 23:44:09
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「大丈夫か、子日!」「うん、子日は平気!」そう言った瞬間、海中から再び深海棲艦が現れる。瑠奈花と綾波はすぐさま迎え撃つ態勢を取った。 「提督!綾波ちゃん!少しだけ時間を頂戴!」「わかった」子日はその場を2人に任せ、ジェットパックで二連主砲に近づく。

2016-11-21 23:44:34
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「やっぱり、ここだけシールドに覆われてない!」二連主砲に肉薄した子日は義手をスキャニングモードに変形させ、二連主砲をスキャンした。光線が情報を読み取り、子日の義手が小型の二連主砲に変形した。その時! 『速報!海艇砦のシールド、解除された模様!』通信機から漣の声が響く。

2016-11-21 23:46:43
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「よし、全艦娘に告ぐ!海艇砦を一斉攻撃だ!」「「「了解!!!」」」 先陣を切ったのは子日だ。コピーした二連主砲で海艇砦を撃ち抜く!小型ながらオリジナルにも迫る威力で海艇砦に2つの大穴を空ける。危険を察知した海艇砦から幾つもの機銃が現れた。

2016-11-21 23:48:05
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

瑠奈花は颯爽と海艇砦に飛びかかり、現れた機銃を斬り落とした。そのまま壁を足場に器用に飛び回り、迎撃兵器を次々と落としていく。 ふと下を見ると、既に雪花軍の艦娘達が集まっていた。彼女達は再現なく湧いてくる深海棲艦を捌きながら機会を伺っていた。

2016-11-21 23:49:07
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「司令官!いつでもいいですよ!」「うむ!」吹雪の声を合図に、瑠奈花はタイミングを見計らって飛び降りた。 「よし、今だ!一斉射!」瑠奈花の退避を確認し、比叡が攻撃命令を下す!砲撃が、雷撃が、そして空からは赤城の爆撃が、一斉に海艇砦を襲う!

2016-11-21 23:51:23
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

シールドを失った海艇砦はその堅牢な壁の大半を失ったも同然。海艇砦は間もなく、大きな音を立てて爆沈した。兵士達は一斉に勝鬨を上げた。 「やりましたね司令官!」「そうだな…」瑠奈花はその様子を満足げに見つめながら、何か引っかかるものを感じていた。

2016-11-21 23:53:08
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

その嫌な予感は、すぐに的中することになる。 『…さん…皆さん!聞こえてます!?』通信機の向こうから、漣が耳を劈くような叫びを上げた。勝利に沸く雪花艦隊に、一瞬にして静寂が訪れる。 「何かありましたか?」大井が尋ねた。『何かって、さっきから何回も言ってるのに!』

2016-11-21 23:54:15
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

漣の尋常ではない慌てぶりに、艦隊全員に緊張が走る。 『今皆さんがいるところの下!何か巨大な物体の反応があるんです!今物凄い勢いで浮上してる!絶対よくない何かですよソレ!』 巨大な物体。その言葉を聞いた何人かの顔から血の気が引いていった。

2016-11-21 23:54:57
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

ハワイと巨大な物体。この2つのワードから真っ先に連想されるのはただ一つ。 「総員、直ちにハワイ島へ退避せよ!」瑠奈花の指令が引き金となり、艦娘達は脱兎の如くハワイ島に引き返し始めた。

2016-11-21 23:55:28
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