考古学者xガイドの軽率なホモを書いていく

大火事だよこんちくしょう。 火元は八鼓火先生@Hachikobiです。
13
前へ 1 ・・ 21 22 次へ
でこのひと🔞 @moi_deco

ふと現実に帰ったように先生は振り向き、それから照れたように笑った。「なんだい?ダビッド。なにか見つかった?」相変わらず仕事熱心な人だ。そんな先生が好きだったが、しかし俺はといえばその仕事にまで嫉妬している。本末転倒だ。

2017-07-11 20:42:18
でこのひと🔞 @moi_deco

「いんや。でもセンセったら、夢中になってどんどん行っちまうからよ」それらしい理由を口にしてから肩を竦めて見せれば、先生は少しバツの悪そうな顔をした。それから、「ああ、そうだな。せめてガイドの目の届くところに居ないと」と言った。カスタマーとしては優秀な極めて回答だ。

2017-07-11 20:42:29
でこのひと🔞 @moi_deco

だが俺としては、何だか面白くない回答だった。仕事中なのに、ビジネス・パートナーとして見られたくなかった。「俺ぁ、好きなアンタが、怪我でもしないか心配で堪らないだけなんだが」本音がつい漏れてしまう。先生は面白いように赤くなり、それから昼間のことを思い出したのか、口籠ってしまった。

2017-07-11 20:42:44
でこのひと🔞 @moi_deco

くだらない嫉妬で仕事への集中力を削いでしまった俺の方こそ、ただの運転手兼ガイドとしては三流だなと、心のなかで自嘲した。先生の意識はいまや完全に俺の方へ向けられていた、得も言えぬ優越感と幸福感は、積もった寂しさをどこかに追いやっていた。

2017-07-11 20:42:55
でこのひと🔞 @moi_deco

棒立ちになってしまった先生へ歩み寄る。先生の周りは、さっきまで邪魔なほど茂っていた灌木が無く、黄金色の立ち枯れた草が疎らに生えるだけだった。まるで舞台のように拓けたそこの真ん中で、俺達は向き合っていた。

2017-07-11 20:43:07
でこのひと🔞 @moi_deco

俺達はまるで不器用が極まっている。馬鹿のひとつ覚えみたいに手を握った。10歳の女の子だってもっとマセた恋愛ができる。幼稚で、凡庸で、どこまでも馬鹿げた関係だ。それでも、俺はこれしか選択肢が見つからなかったし、先生もこれしか知らないのだ。

2017-07-11 20:43:21
でこのひと🔞 @moi_deco

当たって砕けろ。思い切ってハグでもなんでもしてしまえばいいのに。きっと何かが起きて、先生が目の前から消えてしまったら。絶対に後悔すると思っていても、この先に進むことを躊躇ってばかりいるのだ。チキンのタマナシ野郎だ。しかしカマを掘られるんだからいっそそれで正解なのかも知れない。

2017-07-11 20:43:47
でこのひと🔞 @moi_deco

暫くそうして、それから「私も、す…………好きなキミに迷惑を掛けないように、気をつけないとな」と言った。今度は俺が放心する番だ。先生は照れ隠しに振り向いて、俺の手からするりと抜けていった。そうして注意散漫なまま、一歩前に踏み出す。「あっ」間抜けな俺の声が響いた。

2017-07-11 20:44:03
でこのひと🔞 @moi_deco

「先生、大丈夫か?」次の瞬間、俺達は穴の中にいた。まるで蟻地獄だ。不安定な均衡の上で成り立っていた地面が、あっけなく崩壊したのだ。今思えば、この辺りだけ草が少ないのは、定期的に崩落していたからに違いなかった。積もっては風で埋まって、土の重みが支えきれなくなり崩落するのを繰り返す。

2017-07-11 20:44:58
でこのひと🔞 @moi_deco

その証拠に、俺達の足元は細かい土で覆われていた。赤茶けて、粒子の細かい、風で流されやすい土だ。穴はそれほど深くはない。足場は不安定だが、自力で登れる程度の深さだ。先週見た古い映画で、登れないから奥に進むといったシーンを思い出して安堵する。こんな遺跡の奥に、出口があるわけがない。

2017-07-11 20:45:09
でこのひと🔞 @moi_deco

運がいいことに、土が柔らかかったお陰で怪我はなかった。先生も、怪我よりシャツに入った土を気にしている。大丈夫そうだ。そこまで確認すると途端に安心してしまい、思わず先生を抱きしめた。ついさっき後悔するかもと言ったが、全くその通りだった。やっぱり俺には先生が必要なんだ。

2017-07-11 20:45:34
でこのひと🔞 @moi_deco

「ああ、良かった……死ぬかとおもった……」生きてる。良かった。そう口にして、先生もまた、俺の首に腕を回した。一線を超えればあとはもうなし崩しだ。抱きしめて、生還を喜んで、それから見つめ合って、触れるだけのキスをする。初めてのキスはいつも吸ってるタバコと、土の味がした。

2017-07-11 20:45:47

026

でこのひと🔞 @moi_deco

ドク、ドク。まるで全身が心臓になったようだった。その日の夜、いつもの様にベッドに入った。あまりの距離の近さに目が冴えて仕方がない。物理的には昨日までの距離と全く同じだというのに、あまりに気持ちの距離が近づいてしまった。振り向いて手を伸ばせばそこに先生がいるという状況の重みが違う。

2017-08-17 21:15:55
でこのひと🔞 @moi_deco

現実逃避に仕事のことを考えようとしても、出てくるのは昼間の、すこし赤く日に焼けた先生のはにかんだ笑顔と、土と土と土の味がしたキスのことだけだ。それから、愛おしい気持ちが溢れて、それでまた血圧が上がって心拍数が増える。落ち着き始めた心臓がまた煩く鳴りはじめた。

2017-08-17 21:16:35
でこのひと🔞 @moi_deco

きっと、先生も同じだ。先生は仕事に打ち込み始めたら、きっと俺を蔑ろにすると言ったが、多分今日のアクシデントでそれは逆転している。気がついたら視線を感じるし、写真を整理するときも、食事の時も上の空だった。ガイドとしては失格だ、と改めて思い直していた。

2017-08-17 21:16:53
でこのひと🔞 @moi_deco

明日は朝早くから道具を用意し、本格的な調査に移る予定だった。まだホセには知らせていない。なぜなら彼にこのことを教えたら、きっとホームワークをやらない子供みたいにプレゼンテーションの草稿を放り出して、フィールドワークに参加するに決まっているからだ。

2017-08-17 21:17:06
でこのひと🔞 @moi_deco

それなのに極度の興奮で寝付けなかった。寝返りを打つと、年相応にカサついた先生のかかとに触れてビクリとする。先生もまた同じように竦んで、それから恐る恐る俺のつま先を脚でなぞった。今までも幾度となくあったことだが、妙に意識してしまう。

2017-08-17 21:17:21
でこのひと🔞 @moi_deco

先生の肌は滑らかだった。キメが細かい素肌に、細い毛が生えている。毛は案外多く、男の脚然としている。それがさわさわとして心地よい。それが何度も往復して、俺の剛毛と、先生の細い毛が交差する。

2017-08-17 21:17:38
でこのひと🔞 @moi_deco

二人してクスクスと笑って、それでようやく俺たちは向き合った。「眠れないな」先生はようやく緊張が溶けたような声色でそう言った。先生の声はいつも俺に染み渡るように低く響いて広がる。それで俺もまた、今まで変に緊張していた気持ちが楽になったようだった。

2017-08-17 21:17:51
でこのひと🔞 @moi_deco

「ああ」それだけの短い言葉で返して、腕を伸ばして先生の体に触れた。肌触りの良い肌着は汗ばんで少ししっとりしていた。「ダビッド」先生が俺の名前を呼ぶ。家族でも友人でも街の知り合いでも、全員"ダビ"と呼ぶから、この世界で俺のことをダビッドと呼ぶのは先生位のものだ。

2017-08-17 21:18:05
でこのひと🔞 @moi_deco

それに思い当たり、ことさら嬉しい気持ちになった。腕を上手いこと動かして近づき、遂に先生の熱が伝わるほどの距離にやってくる。すこし日に焼けて赤みを帯びた頬を撫ぜて、肩を辿って腰に腕を回す。ここまで来て今更、先生が嫌がっていないかなんて躊躇いが俺の手を止めた。

2017-08-17 21:18:18
でこのひと🔞 @moi_deco

先生は変わらず俺のことを見つめている。薄い緑色の瞳が熱を孕んで揺れている。「君は相変わらず、いい匂いがする」先生はそう言って俺の首元に顔を埋めた。温かい吐息を感じる。今や最早先生は俺の腕の中にいる。俺はその状況に、たまらなくクラクラとした。

2017-08-17 21:18:29
でこのひと🔞 @moi_deco

思わず掻き抱いて、今にも爆発しそうな鼓動を感じた。耳の奥から脈が聞こえる。先生は俺の胸元に額をつけたまま、低い、全身が共鳴するような声で「君の匂いが好きだ」と言った。こういうのは一度踏ん切りがついてしまうと際限のないものだった。その薄い唇を奪って、吸い付いた。

2017-08-17 21:18:41
でこのひと🔞 @moi_deco

正直なところを言うと、俺はキスについてあまり意味を見いだせて居なかった。勿論過去の彼女達とも、こういったことはした。だがそれはある意味、形式張った行いであって、俺はそこに義務感だけを感じていた。ただ漠然と”恋人なのだから、キスはするものだ”という先入観だけで行われていた。

2017-08-17 21:18:53
前へ 1 ・・ 21 22 次へ