スピノザ『エチカ』に他者は存在しない? 國分功一郎氏のレスポンス

否定が存在せず、他者が存在しないなら、《社会性》はあり得ないように思える。スピノザ哲学において、個人はいかに社会化されるのだろうか。
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四谷(YOTSUYA) @Boyakimasse

僭越ながら個人的見解を申し上げさせて頂くと、『神学政治論』のメインは聖書解釈学であり、宗教思想ではないと思います。むしろ宗教思想なるものを政治の前で封印するものかと思います。また、『エチカ』には他者は徹底的に存在しないというのが特徴ではないかと。@naoshiy

2011-02-26 16:40:25
山脇直司 @naoshiy

これは大きな争点だと思います。國分功一郎先生に追究してもらいたいです。@Boyakimasse 『エチカ』には他者は徹底的に存在しないというのが特徴ではないかと

2011-02-26 18:17:20
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse 名前を挙げていただけたので、私なりのコメントをしますと、この問題は二段階で考える必要があります。『スピノザの方法』の第一章で書いたとおりデカルトが他者の説得を第一目標にしているのに対し、スピノザは真理を説得の対象とは考えていません。

2011-02-26 18:59:47
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse したがって、その意味では、デカルトに取り憑いているような他者はスピノザには欠けていることになります。

2011-02-26 19:00:22
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse 以上が第一段階です。さてここで、デカルトの説得の対象が懐疑論者たちであると同時に、懐疑論者のように何もかも疑ってしまう自分でもあることに注意することが必要です。デカルトが説得しようとしているのは実は誰よりも自分なのです。

2011-02-26 19:01:25
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse デカルトは病的に疑ってしまうわけですから。すると、デカルトが説得しようとしている他者とは、もしかしたら彼自身の中の他者であるかもしれないのです。デカルトの考える他者が本当に他者と言えるのかどうかという問題がでてきます。

2011-02-26 19:02:53
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse スピノザは真理を説得の対象とは考えていません。真理に到達したひとだけが真理を理解できる。ですので第一段階としてはスピノザには他者が欠如しているかもしれない。でも『エチカ』は部分と部分の調和や合致について語っています。

2011-02-26 19:05:25
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse ここはいまちょうど私自身が勉強しているところなのですが、『エチカ』に言われる調和というのは、単に二つのものが共通項をもっているから一致できるということではなくて、一つの共鳴として考えられるのです。

2011-02-26 19:08:56
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse 共鳴というのは、AとBがあるとして、Aの元の運動とも、Bの元の運動とも異なるあらたなCという運動が生まれることです。ここで私は非線形科学における同期現象について考えています。

2011-02-26 19:09:41
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse この点については安冨歩先生の『経済学の船出』に強烈なインパクトを受けて考え続けているところです。このことについては、もしよろしければ私のブログをご参照ください。http://p.tl/NMv2 http://p.tl/yfl6

2011-02-26 19:11:41
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse さて、もしスピノザが共鳴のようなことを考えていたとすると(スピノザはホイヘンスと仲良しだったので、ホイヘンスの同期実験について知っていた可能性が大です)、スピノザはまさしく他者について考えていたと言えます。

2011-02-26 19:12:36
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse もちろん「他者」という語の意味によるのですが、一つの実体にすべてを解消するというのとは違う、個体同士の共鳴と同期をなんとか理論化しようとしていたとも考えられるのです。

2011-02-26 19:13:26
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse スピノザはすべてを実体に解消する一元論ですけど、同時に、諸様態が相互関係の中で新しい運動(AでもBでもないC)を生み出す現象を見ようとしていたとも言えるわけで、ここにはスピノザ独自の他者論があるように思います。

2011-02-26 19:14:31
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse スピノザは他者を考えているか、すべてを実体に解消してしまうのか、これについては先週新宿のジュンク堂で行われた千葉雅也さんとのトークショーで語ったことなのですが、その模様は3月3日に動画配信されますので、こちらも一応紹介させてください。

2011-02-26 19:16:22
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse とにかく『エチカ』に他者が存在しないかどうかというのはものすごく緊迫した問題で、まさしくいま私はそれについて考えようとしています。

2011-02-26 19:17:06
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse ここまで興奮して書いてきて今ハッと気づいたんですが、もしかして「『エチカ』には他者が存在しない」というお話は、「スピノザは、文化間対話のカギを握る思想家」という主張への反論だったのでしょうか?

2011-02-26 19:19:22
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse さっき紹介させていただいたブログ記事でも書いたのですがスピノザには人類が一七世紀にもしかしたら選択できたかもしれない、もうひとつの科学や知の可能性があるかもしれないんです。

2011-02-26 19:21:14
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse 安冨歩先生の説を用いながら、私はデカルト=ニュートン的な知とスピノザ=ホイヘンス的な知を対立させられるのではないかと思いました。文化間対話はもちろん、一七世紀以降の知のありようそのものを根底から覆す可能性がスピノザにはあると思います。

2011-02-26 19:23:09
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy @Boyakimasse まぁそれぐらいスケールのでかい哲学者でなければ研究対象にはできないなぁと思っております。すみません、いつもの癖で連投してしまいました。参考になれば幸いです。

2011-02-26 19:24:56
四谷(YOTSUYA) @Boyakimasse

@lethal_notion 大変参考になりました。「スピノザが異文化理解の鍵」なんていったらドゥルーズだったら腹を抱えて笑うだろ、ととっさに思ったもので、早書きしてしまいました。スピノザと他者については、なるほど、なるほど、と。ありがとうございました。影ながら応援しております。

2011-02-26 22:57:26
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

ブログ更新しました。「立花隆に耳を傾けずに立花隆著『サル学の現在』を読む」http://p.tl/vRtQ 生態学的なものの見方を分かりやすく説明してみたつもりです。むかし授業で話した内容です。当時もこの生態学的なものの見方をスピノザに結びつけ、デカルト的分類学と対立させました

2011-02-27 00:02:43
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@Boyakimasse 「異文化」「文化」「間」といった言葉全てについてスピノザから考え直すことができると思うんですね。だから或る意味でカギなんだと思います。いえいえ、こちらこそこれからもよろしくです。

2011-02-27 00:05:12
山脇直司 @naoshiy

大変に重い内容をツイートしてもらい、深謝です。RT @lethal_notion @Boyakimasse まぁそれぐらいスケールのでかい哲学者でなければ研究対象にはできないなぁと思っております。すみません、いつもの癖で連投してしまいました。参考になれば幸いです。 .

2011-02-27 00:16:48
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy とんでもございません。一度書き出すと止まらないタイプでしてすみません。DMはこちらから先生にはお送りできない仕様のようです。私はいつも先生のメッセージをありがたく受け取っております。お目にかかる機会をいただけたらうれしく思います。

2011-02-27 00:21:21
KoichiroKOKUBUN國分功一郎 @lethal_notion

@naoshiy すみません言葉足らずだったかもしれません。Boyakimasse さんが「『エチカ』には他者が欠けているのでは」と仰ったのは、山脇先生が「スピノザは文化間対話のカギ」と仰ったのに対する反論であったのだろうか?と連投の最後になって気づいたという話でした。

2011-02-27 00:24:29