KMD奥出直人教授による高等教育についての発言まとめ

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) 奥出直人 教授による高等教育についての発言をまとめました。
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Naohito Okude @NaohitoOkude

すこし間が空いた。漢字の改革である。戦後の漢字改革は焚書坑儒である。多民族を支配するときに文化的伝統を断ち切るのは当然の戦略であり、僕たちは戦前の知的伝統から切り離された。だからといって、戦前に戻るべきだと言っているわけではない。切り離されていると自覚して進むしかない。

2011-02-28 04:52:22
Naohito Okude @NaohitoOkude

小説家丸谷才一氏も同じことを言っていて、新しい教養をいかに作るかを主張している。IBはブルジョワ家庭のハビタスを教育制度にして提供する試みである。さて、「教養」を大学生のときにたたき込む。ここがアメリカの大学の特徴だと話をした。ではなぜ日本の大学はそうしないのか?

2011-02-28 04:55:40
Naohito Okude @NaohitoOkude

さらに何故シンガポールは、インドは、中国は、台湾は、韓国はそうしないのだろうか。近代化がこれまでの答えである。追いつくためにというわけだ。だが追いついてしまった。長生きをするようになり、生活を楽しむことが大事だと知った。だが、近代化といわれていた啓蒙的な知識の体系に答えはない。

2011-02-28 05:04:30
Naohito Okude @NaohitoOkude

アメリカの一流大学の教養育成は確かにたいしたものだ。だが結局のところ、そこで身に付けた能力で世界を支配している。ルールを自分で決めて、そのルールで戦うことが上手い人間を育成している。それは強いよね。で我々が考えている高等教育はこの水準には届かない。近代化の方程式の先に答えはない。

2011-02-28 05:07:38
Naohito Okude @NaohitoOkude

近代化の方程式だとおもっていた教育体系の最後の答えがない。これがいまのアジアの大学の焦りだ。それは無いはずだ。そもそも植民地支配の中間層を形成するために押しつけられていた教育体系だからだ。この体系をいきなり否定することは出来ない。近代的なシステムが壊れる。

2011-02-28 05:10:55
Naohito Okude @NaohitoOkude

エリートは一部の大学でのみ教える。とうぜんエリートではない連中もそこでの教育を求める。なんらかの方法で入学の基準を明示化する。統一テストの点数だ。そしてその点数を上げるために競争が激烈になる。そして、アメリカに限ればその競争に勝った人間に「教養」を教えようとする。

2011-02-28 05:14:16
Naohito Okude @NaohitoOkude

その教養が身につかなければ「寛容」のない下劣な人間とされる。実際多くのこうした名門校卒のエリートは「身も蓋もない高慢ちき」というのは、このレベルの人間と仕事をした人であれば分かっている話だ。もちろん「すばらしい」人もいる。そうなるべく教育をしているからね。

2011-02-28 05:15:59
Naohito Okude @NaohitoOkude

植民地時代は終わっている。にもかかわらず、高等教育の中に残っている言われたことをやって評価をまつ人材しか作れない。これが僕らを含めて多くのアジアの高等教育の抱える本質的な問題だ。二番煎じと業績主義。どこかでこの連鎖を断ち切らないと先に進むことは出来ない。

2011-02-28 05:21:37
Naohito Okude @NaohitoOkude

アメリカの社会学者が『ブラックブルジョワジー』という本を出している。ギリシャ語からはじまり西洋音楽を含めヨーロッパの正しいとされる教養を身に付けた黒人のブルジョワジーだ。彼らが黒人の地位向上に役立たないことを批判的に書いている本だが、ブラックブルジョワジーの気持ちは分かる。

2011-02-28 05:23:41
Naohito Okude @NaohitoOkude

ルールの通りにしっかりと能力を身に付けた。だが結局約束された地位は提供されない。この苛立ちが公民権運動となり、アメリカは変わった。シンガポールではきちんとした教育を英語でおこなうというやり方にあまり抵抗感のない子供はそのまま英語で能力をみにつけてアメリカに行ってしまう。

2011-02-28 05:26:51
Naohito Okude @NaohitoOkude

日本の文脈で言えば帰国子女状態だ。母語ではないが英語が第1言語になっている。そのあと帰国してくる者も多いだろうが行ったきりの学生も多い。だが、アメリカでのびのびと人生が送れるのか?という疑問がある。要するに、僕たちは何をやろうとしているのかが解らない。

2011-02-28 05:29:26
Naohito Okude @NaohitoOkude

我々は伝統的世界からは切り離され、一方でもはや植民地支配はない。自分たちのことは自分たちで始末を付ければいい。だがその方法が解らない。これが現状である。大英帝国は終わった。でもそれはそんなに昔ではない。アジアにいると50年もまだ経っていない。アメリカの時代が終わろうとしている。

2011-02-28 05:33:39
Naohito Okude @NaohitoOkude

次はアジアの時代だ。それは解る。でもどうすればいいのか?日本がいま直面している閉塞感はすくなくとも高等教育ではアジア全体が直面している問題と同じだ。自分たちで自分たちが納得いく世界を作りそのなかで争いをすることなく生きていく。こうした世の中を創造することが急務なのだ。

2011-02-28 05:37:08
Naohito Okude @NaohitoOkude

そうおもって周りを見てみる。すると、ハーバードやケンブリッジをでて「優秀」とされている人が自分からは何もすることが出来ない役立たずだ、と唖然とする。自分がケンブリッジで勉強していたときの屈辱を味あわせたくないと、子供の教育を心がけた。ところがその子供達が役立たずだ。

2011-02-28 05:39:29
Naohito Okude @NaohitoOkude

あるいは骨のありそうな奴は国をでていく。これがシンガポールの悩みである。インドは自分で考える人間が作れない。インドの外に新しい大学を作ろうとしている。そのくらい創造的な人材が不足しているのだ。近代化教育の悲しさで創造性の「先生」をまたアメリカやヨーロッパに求める。

2011-02-28 05:42:34
Naohito Okude @NaohitoOkude

だがその答えはない。自分で作るしかないのだ。いまの世界を動かしているルールで戦うしたたかさも必要だろうし、自分でルールをつくって楽しい世界を生みだし、様々な人を誘うのも手だ。アジアの我々の日常生活はこうした可能性に充ち満ちている。だが、目がここに向かない。

2011-02-28 05:45:16
Naohito Okude @NaohitoOkude

さて、このくらいにしよう。アジアの高等教育は自分たちの「教養」をつくる時期に来ている。生きのびるための近代化は終わった。平均寿命も衛生状態も食糧事情も乳児死亡率も可処分所得も改善した。読み書き能力も普及した。基本的なところは充実しているのだ。次の一手は我々はどのように生きるか。

2011-02-28 05:49:06
Naohito Okude @NaohitoOkude

インドネシア、中国、シンガポール、韓国、台湾の若い研究者と勉強していると彼らの人生に対する気持ちは日本の若手の研究者と同じだ。この優秀な若者がのびのびと自分の人生を生きていける環境が必要だし、彼らが世の中に貢献する仕組みも必要だ。

2011-02-28 05:51:34
Naohito Okude @NaohitoOkude

KMDではチェコやレバノンの学生も教えているが彼らも同じだ。自分で考える。自分で世界を作る。自分の立身出世(そんなものは幻想なのだが)だけを考えてはいけない。友達をつくる、家族を作る、社会を作る。人生を楽しむ至福の時間を持つ。人類がこのような贅沢な目的をもてるのは初めてだ。

2011-02-28 05:53:51
Naohito Okude @NaohitoOkude

そろそろお終いにしよう。点取り主義受験戦争は終わっているという意見もあった。これは別の問題だ。愚民政策というものがある。支配するにはあまり人民は利口でない方がいいという考え方だ。身体をたっぷりと活用した「詰め込み」教育は国民の権利だと思う。これはでも別の問題。いつか議論したいが。

2011-02-28 05:57:07
Naohito Okude @NaohitoOkude

Facebook創業者がどのようなやつか?あったことがないから解らないが状況はトム・ウルフの小説『虚栄のかがり火』に描かれている状態と同じだと思う。「教養」を身に付けていないことがばれる恐怖というかそれとたたかうのが現状なので、「教養ない」と映画では描かれているわけだ。

2011-02-28 05:59:27
Naohito Okude @NaohitoOkude

僕は教養は大事だと思うが教養主義者ではない。ギリシャ語もラテン語も漢文も出来ない。だがそうした「教養」がなくてもストリートの生活から教養を構築することが出来る。情報社会とはそいういうことだ。ピッツバーグに生まれた大学ドロップアウトのケネス・バークは若い頃の僕のヒーローだ。

2011-02-28 06:03:07
Naohito Okude @NaohitoOkude

知識はストリートに、つまりは公共図書館に、(いまではインターネットに)ある。それをどのように身に付けるかの身体性が教養につながる。だが同じことを大学で行った方が友達もいるし無駄がない。ハイカルチャーだけではなくてローカルチャーというかポップな世界にも教養のネタは溢れている。

2011-02-28 06:05:50
Naohito Okude @NaohitoOkude

じっくり自分の周りをみわたして教養をみにつけたときに、決して世界のトップには立てない立身出世主義の道具とおもわれていた能力が生きてくる。それは数学だったり英語だったり物理だったり経済学だったりする。まず必要なことは自分で莫大な知識をかきわけて教養を身体的にみにつけること。

2011-02-28 06:10:19
Naohito Okude @NaohitoOkude

ここがポイントである。本来ブルジョワ階級の再生産につかわれていたIBがグローバルな視点から見た次世代のエリートを作る教育システムとして注目されている。このほうほうは英語がメインなのが欠点だが、これを日本語で行ってもよい。文部科学省も検討を始めているはずだ。

2011-02-28 06:12:10