天上院照樹の憑魔録 1~TRUE END~

――――そして、少年は退魔師としての一歩を踏み出す。物語の終わりにして、新たな始まり。
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たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

……母さんの言うとおり、だと思う。俺は……1人じゃきっと、退魔師なんてできないよ。 弱気にもとれるその発言に、読詠は静かに頷きました。死にそうな思いをした照樹君です、そう思うのは仕方ありません。 「あぁ、その通りだよ。だから、アンタは……」 #憑魔録

2016-12-22 20:21:12
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

……でも。俺には、ミコトがいる。1人じゃできないけど、二人ならできる。そうだろ? 『――――――っ!!』 「あんた……!!」 しかし。それでもなお、照樹君ははっきりと読詠の目を見て言いました。 #憑魔録

2016-12-22 20:21:55
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

俺は多分、どうしようもなく弱い。怪異なんて今日知ったばかりで、知恵もない。それに……やっぱり、今でも怖いよ。 ぎゅっと握る照樹君の手は、震えています。さっき思い出したばかりの恐怖を、ぬぐいきれていないのでしょう。 #憑魔録

2016-12-22 20:22:33
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

だけど、お前が力をくれる。お前が知識をくれる。戦ってくれる時は、いつだって一緒に。 ――――そうだろ?ミコト。 それでも。その言葉は、とても力強いものでした。 #憑魔録

2016-12-22 20:23:19
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

もちろん、母さんも。俺1人じゃきっと、どうにもできない。だけど、あんなのがいると知って……ほっときたくも、ない。だから、力を貸して欲しいんだ。 照樹君は、顔をあげます。恐怖を飲み込んで、それでも自分のしたい事を伝える為に。成したいと思った事を、成すために。 #憑魔録

2016-12-22 20:25:19
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

読詠は、言葉をなくしました。目を逸らした彼女が何を考えているか、照樹君にはわかりません。 もしかして、反対される……? そんな考えがちらりとよぎりだした、その時。 「――――よく言った!!」 バチン、と肩に加わる重み。読詠が、笑顔で照樹君の肩を叩いたのです。 #憑魔録

2016-12-22 20:27:01
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

「臆病風に吹かれると思ったら、なんだいなんだい!!案外、言うもんじゃないか!!うんうん、あんたも男の子だったって事か!!アッハッハ……!!」 それは、なんとも豪快な笑い方でした。しかしそれは笑い飛ばすようなものではなく……1人の男の成長を、喜ぶもの。 #憑魔録

2016-12-22 20:29:29
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

むー……なんだよ、その言い方…… とはいえ、やんちゃ盛りの照樹君にはそこまで感情の機微を読み取る事はできません。 「あー、悪い悪い。つい、ね」 唇を尖らせて文句を言うと、読詠は笑いながらも詫びます。 #憑魔録

2016-12-22 20:30:32
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

「けど、あんたの気持ちはわかった。いいよ、そういう事ならあたしも、手伝ってやらなきゃね。あんた1人に任せるのなんて、まだまだ危なっかしくて見てらんないし……」 でも、と。照樹君が反論しようとするのと同時に、読詠は言います。 #憑魔録

2016-12-22 20:32:21
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

「これであんたは、今日から退魔師だ。この街を……気合い入れて、守んな!!」 力強い言葉は、それだけその重みを照樹君に実感させます。 だけれど、それでも。照樹君は、そう言うのです。 大丈夫……ミコトが、一緒だから!! #憑魔録

2016-12-22 20:32:50
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

『はっは……お主は、よっぽどの阿呆なのか?』 その言葉を、遮るものがありました。 『黙って聞いておったが……やれ信じるだの、一緒にだの。怪異を、なんと心得る?人へ仇なす為に出ずる儂等を信じて、どうするのじゃ。まさか……儂がこのまま、大人しく従うと思っておるのか……?』 #憑魔録

2016-12-22 20:33:52
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

脳内に響く、確かな威圧感を持った声。 人に仇なす。この声の主はきっと、何のためらいもなくそうする。そう思わせるだけのものが、その声音には秘められていました。 けれど。 ――――うん。俺は、ミコトを信じるよ。 照樹君はそう言い切りました。 #憑魔録

2016-12-22 20:34:53
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

ミコトが前に立っていたならば、きっと彼女を真っ直ぐに見据えて。 明日からよろしくな、ミコト。一緒に、あいつら倒そう!! そんな事を能天気に言いながら、彼は歩き出すのです。そこに迷いや、ごまかしがあるようには思えません。照樹君は、心の底から彼女の事を信じていました。 #憑魔録

2016-12-22 20:35:45
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

【――――この匂い……怪異か!!】 そう言って駆け出した、彼女の事を。自分を、見知らぬ人を――――人間を。からかい混じりに心配してくれた、ひねくれ者の狗神。彼女は、信じてもいい怪異だと。 だから、照樹君はミコトの札を剥がそうともせずに歩き続けるのです。 #憑魔録

2016-12-22 20:37:35
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

――――ミコトは不意に、思いを馳せます。 【ふんっ、俺が貴様を利用してやるだけだ!!心など一寸たりとも許すものか!!】 【こんな化物の姿で戦うなんて、嫌ぁ……!!なんで、なんで私だけ……!!】 天上院の家に囚われてから、身の安全と引き換えに退魔師へ協力した日々に。 #憑魔録

2016-12-22 20:38:16
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

『………………』 改めて、彼女は理解しました。照樹は、天上院の歴史の中でも――――特別な、阿呆者なのだと。 #憑魔録 『――――ありがとうの、照樹』 照樹君は、脳内でそんな声を聞いた気がしました。

2016-12-22 20:45:32
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

―――― そこは、夜の街でした。 一面に灯る明かりが、夜に負けないようどこでも輝いていました。 しかし、全ての闇を消す事はどれだけ人間が足掻こうとも不可能です。 その闇には、何かがいました。 人を襲い、食らい、糧とする『何か』。 人には知覚さえできない、人ならざる者。 #憑魔録

2016-12-22 20:48:11
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

それを捉える、一つの影がありました。 その影は、電信柱の上から静かにそれを見下ろしています。 それも間違いなく、人ならざる者に違いありませんでした。 #憑魔録

2016-12-22 20:49:15
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

人のような形をしながら、獣の特徴を持った異形。 白に覆われた体に赤い線を走らせた体に神へと仕える女の装束を纏った、その姿。人が見れば、ある種の神聖ささえ感じる事でしょう……最も、人がその姿を目にすることがあればの話ですが。 #憑魔録

2016-12-22 20:49:47
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

「さぁ、ここからは……儂の時間を、始めようかの」 美しい女性の声と共に、その影は立ち上がります。本来人が立てるようにはできていない電信柱の上で、事もなげに。 「違うだろ、ミコト。ここからは……」 その声に反論したのは、他でもない『その声自身』でした。 #憑魔録

2016-12-22 20:51:11
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

二人の人間が会話をするような自然さで、その影は自分自身に答えます。 「……俺達の時間だ!!」 そうして『彼女』は、少年ように無邪気な笑みを浮かべて。 「――――アォォォォォォォォォン!!」 夜空にその遠吠えを、響かせます。何よりも強く、自分はここにいるぞと主張して。 #憑魔録

2016-12-22 20:52:46
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

―――――――そして彼女は、夜の闇の中へと飛び込んでいくのでした。 #憑魔録 天上院照樹の憑魔録第1話 了

2016-12-22 20:55:05

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