このことは,親の学歴等をコントロールした場合に,高所得の父親においては,同居する子が就業しない可能性があることを示している。つぎに,父親の職業ダミーに着目すると,男性の場合,専門的・技術的職業従事者ダミーがマイナスに有意になっている。それに対して,
2017-01-11 23:52:21「生産工程・労務作業者」のダミー変数に関しては,男女いずれもプラスで有意な結果が得られている。本分析結果も,父親の職業が専門的・技術的職業従事者のようなホワイトカラーである場合に,同居する子の就業がマイナスの影響を受けることが示されていることから,興味深い結果が得られている。
2017-01-11 23:52:40〔モデル4〕における分析結果(表4)を見ると,表3と同様に,父親の個人所得をコントロールしても,親の学歴と同居する子供の就業形態にマイナスの関係が見られる。その一方で,父親の個人所得ダミーについては,とくに高所得のダミー変数において,男女いずれもプラスに有意な影響が出ている。
2017-01-11 23:53:40具体的には,「700~999万円」,「1000万円以上」のダミーにおいて,男女いずれも回帰係数がプラスに有意になっている。この結果は,就業状態を被説明変数とする〔モデル3〕の結果とは異なり,親の所得が高いほど,同居する子供が正規雇用する傾向にあることを示唆している。
2017-01-11 23:53:54このように本分析結果では,2007年調査において全般的には父親の個人所得と同居する子の就業形態に明示的な関係があることが確認されており,伊藤(2008)の分析結果とは異なっている。なお,
2017-01-11 23:54:07父親の職業ダミーについては有意な結果が出なかったことから,父親の職業と同居する子の就業状況との間に明示的な関係は見られないことがわかる。
2017-01-11 23:54:21表5を見ると,親子の学歴の交差項をモデルに含めた場合でも,男性については父親の大学・大学院卒ダミーにおいてマイナスで有意な結果が得られていることが確認できる。また,
2017-01-11 23:55:18父親の個人所得ダミーについては,「500~699万円」,「700~999万円」,「1000万円以上」のダミーにおいて,男女のいずれも回帰係数がプラスに有意になっている。その一方で,
2017-01-11 23:55:32親子の学歴の交差項に着目すると,男性の場合,子供が高校・旧制中卒と父親が高校・旧制中卒の交差項においては,マイナスに有意な結果が得られているだけでなく,子供が大学・大学院卒と父親が大学・大学院卒の交差項はプラスに有意となっていることがわかる。他方,
2017-01-11 23:55:50女性の場合,同居する母親の学歴ダミーはマイナスに有意であり,高学歴ほどマイナスの値が大きいことが確認されているが,子供が大学・大学院卒と母親が大学・大学院卒の交差項においては,プラスに有意になっている。
2017-01-11 23:56:07〔モデル5〕における結果は,男性に関して言えば,本人の学歴が相対的に高い場合には,親の学歴との交差項を考慮することによって,父親の学歴が子供の就業に及ぼすマイナスの影響が相対的に小さくなることを示している。また,
2017-01-11 23:56:21女性についても,子供が大学・大学院卒と母親が大学・大学院卒の交差項がプラスで有意な結果を示していることから,本人が高学歴である場合には,同居する母親の学歴の高さがもたらす子供の就業へのマイナスの影響がより小さくなっている。
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