- yajikita_douchu
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旅行用心集はtoggeterにも随時まとめています。 togetter.com/li/1070108 pic.twitter.com/j7R9kwbsfH
2017-01-17 06:47:13【中の人からのお願い】旅行用心集は、1810年当時の医療・交通レベルや常識が前提のガイドブックです。21世紀において同様の行いをすると、薬事法や道路運送車両法その他の法律に抵触するおそれがあります。実践を試みる場合は専門家の指導に基づいてください。
2017-01-19 21:05:43旅行用心集 自序 人はそれぞれ、仕事の合間に時間を見つけて、伊勢神宮へ旅をしようとその準備をし、一緒に旅をする人とのスケジュール調整を行い、いつ旅立つのが吉かを確認してあちこちから餞別をもらい、旅の出発に向けてどんどん気持ちが高ぶってきます。
2017-01-09 21:20:40いざ出立の日になれば、親せきや友人がやってきて、町のはずれまで見送りをしてくれますし、宴会まで開いてくれたり、旅に関する注意ごとを書き記したものを親切に持たせてくれ、その光景ははた目に見ていてもうらやましいものです。
2017-01-09 21:20:47旅行のみならず、出張であっても全国へ旅立つ人々はみな老いも若きも張り切っていて、これほど頼もしいことはありません。
2017-01-09 21:20:54東からの旅人は、伊勢に始まり奈良、京都、大阪、四国、九州まで、名所・旧跡・神社・仏閣を巡り、西からの旅人は伊勢に始まり東京、鹿島神宮、香取神宮、日光、東北松島、象潟、信州善光寺までの隅々を参拝することをぜひお勧めします。
2017-01-09 21:21:01そして、家内息災にて家業繁昌。主人はもちろんその家族親族や奉公するものにいたるまで、伊勢参宮での願い事が成就することは、この日本のご利益にもなるでしょう。
2017-01-10 19:26:52そもそも士農工商というものはあっても、皆それぞれが自分の務めを日々しっかりと行えば、一日も貧しい思いをすることなく、生涯平穏に楽しく暮らすことができる、これは神仏の教えを守ることにつながるのです。
2017-01-10 19:26:59その中には、お金持ちであっても病気がちで心の弱っている人もいるでしょうが、ご自分の足で旅行し、新鮮で珍しい景色を見ながら山越えし大山霊場へたどり着くことが大事です。
2017-01-10 19:27:06病身だからと金に物を言わせて駕籠で旅行するようでは、貧しくとも健康である人たちの楽しさにはとうてい及ぶことはないでしょう。 つまり、貧乏であっても裕福であっても、旅行ができる健全な体を持っていることが一番の幸せなのです。
2017-01-10 19:27:16さて、旅行をしようとする人には出発の日から守ってほしいことがあります。たとえ家来付きでの旅行だとしても、服を着たり草鞋を履いたりするときは自分で準備をしてください。旅行中の食事も、常に食べられるとは限らないことを覚悟しておいてください。これもいい修行だと思うようにしましょう。
2017-01-11 19:30:10旅行先では、その土地によって塩加減などの味付けが、自分が普段食べているものとは違うことがよくあります。このことは事前に知っておいてください。
2017-01-11 19:30:20旅行中は雨風の強い日があったり、宿泊の都合で早朝の濃霧の中を山越えしなければならなかったり、宿の布団が薄く寒かったり、旅行仲間とケンカしたり、足を痛めて遅れる人がでたり、地方の寒暖がもとで病気になったりと、さまざまなトラブルが予測できます。
2017-01-11 19:30:30病気や怪我に関しては、自己療法に頼らないようにしてください。 長旅にトラブルがつきものなのは言うまでもありません。 旅は若者のよき修行といいます。また、ことわざにも「かわいい我が子に旅をさせよ」とあります。
2017-01-11 19:30:47旅行をしない人は、身分にかかわらず旅の苦労を知りませんから「旅行なんてただの道楽」と勘違いしているため、人情にうとく、人への接し方を知らないタイプの人間になりやすいのです。陰で指を差され、笑われることも少なくありません。
2017-01-12 20:18:27大名、公家などの身分の高い人であっても、旅路での荒天や河留めは自分の思い通りにならないため、平民と同じようにわがままを言わず耐えています。
2017-01-12 20:18:36世の中の人は、困難を乗り越えることによって人情を勉強し、他人を思いやることを覚えます。「良い人」と言われ出世をし、子孫繁栄につなげるのです。「可愛い子には旅をさせよ」とは、まさにその教えのことを言うのです。
2017-01-12 20:18:45筆者である私は、若いころから旅行を好んでおりましたので、旅行へ出る友人知人からアドバイスを求められた折には、都度旅における諸注意をしたため持たせておりました。ただ近年は歳を取り、筆を手にするのもだんだん億劫になってしまい、なかなか指南することもできません。
2017-01-12 20:18:53そこで、これまでいろんな人にアドバイスしてきた内容をまとめ、本にすることにしました。これを「旅行用心集」と名づけ、これから旅行をしようとする皆様の助けにしたいと思います。 文化庚午六月 八隅蘆菴
2017-01-12 20:19:02江戸時代の旅について補足を少々。 当時の旅行はほとんどが歩き旅を指しますから、当然遠方であるほど宿泊費をはじめいろんな経費がかかり、現代よりもずっと大金が必要でした。
2017-01-09 23:19:02ですからほとんどの庶民は一生に一度旅行ができればよいほうで、今でいうクラウドファンディング (見返りは土産) のように出資を募ることも多く行われています。これを当時は「講」と呼んでいました。 そのため出発の日には、大勢の出資人が見送りに押しかけ、宴会などを開いてくれたのです。
2017-01-09 23:19:12また、現在でも結婚式で大安吉日が喜ばれるように、当時は旅行の出発日についても日取りを大切にしていたのです。これは江戸時代末期まではごく普通のことでした。
2017-01-09 23:19:19道中用心六十一ヶ条
【原文】一、初て旅立の日ハ足を別而静に踏立、草鞋の加減等を能試、其二、三日が間は所々にて度々休、足の痛ぬやうにすべし。出立の当坐には、人々心はやりておもはず休もせず、荒く踏立るものなり。足を痛れば、始終の難義になることなり。兎角はじめハ足を大切にするを肝要とす。
2017-01-13 19:18:20【現代語訳】1. 旅の出発の日は、足のコンディションを万全にし、草鞋の履き心地などをしっかりと試します。初めの二、三日間は、休憩を多めにして足を痛めないように注意してください。旅の初めはどうしてもテンションが上がって休みなく歩き続けてしまいがちです。
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