不知火に落ち度はない特別編　-アウターヘブンIF-（前章）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

あー、待てなにこれ。 つまり内通者ってことだったりするわけ？ 展開が急すぎて対応できてねーぞ。 つか、道中の輸送トラックはどっから出てきたわけよ。 そんなのに普通乗っけてくれるわけねーじゃん。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「そう言えばトラックの方は乗り心地どうだった、龍田ちゃん？」 「快適そのものでーす。クッションつけててくれましたからー」 「弓削曹長に後で電話しとこうか。今度飲みに行くぞってね」 「あら、それいいですねー❤」 うん。これ脅迫関係の会話じゃねーな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

さて。今の会話で龍田と有坂中佐の関係はだいたいわかったが、まだわからんところだらけだ。 何がどうなって、この状況ができあがってるんだ？ 少なくとも海ぼうずの干渉じゃねえ。 モグリのあの態度は、龍田が乗り込んでくるの知らなかった風だし。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「じゃ、兵頭さんにヒントねー。龍田はわりとパソコン得意なんだよ－？」 「いや。なんだよー、じゃなくってね」 そんなＯＬみたいなことでどう説明になるのかって、いうあれなんですけどね。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「兵頭さんのパソコンから私用データ抜き出すのも簡単だし－」 指折り龍田は数えていく。 自分の手の内を晒すように。 「そもそも、三船提督さえいなければ、そっちの秘匿文書内容はそのまま使い放題だしー」 さらに付け加えていく。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「主任のデータ検証結果もつけて信憑性上がったのも大きいわよねー」 おい。だんだん話が見えてきたぞ。物騒方向で見えてきたぞ。 「主任には、艤装のセキュリティロック解除コードも教えて貰えたしねー」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「大規模作戦前日なのも大きかったわね－。あれだけのデータを見てくれる人が大勢集まってたんだからー」 あ、はい。見えてきた。 見えてきましたよこれ。 龍田がなにやったか、ぜーんぶ判って来ちゃいましたよこれ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

つまり、龍田がやったのは、俺が念入りに詰めてた三船更迭計画の乗っ取りだ。 長門や、俺達海ぼうずが集めた情報を最大限に利用して──それらをまとめてどっかに流したってことである。 さて、その肝心のどこに流したか、っていう奴だが。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「龍田はねー。大本営の回線使って、優先度最大で流しましたー」 にっこり微笑み。 超弩級の爆弾をぶち込んだ。 そんな悪魔がここにいた。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「あとは個人的に集めてた──いろんな人の弱みも合わせて一斉送信しちゃったわー。在庫処分大セールねー」 うん。 そうか。 モ ロ に ク ー デ タ ー じ ゃ ね ー か ！ ！ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「さらに今から48時間は、大本営からの通達はとばせませーん。みんな2日間はお休みでーす」 待て。大本営のメインシステム黙らせてるのお前。 いや、電子戦にある種特化してるって話は聞いたことあっけどさ。 そんな大規模情報テロかませる資質あったんだ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「当然、龍田がやったのはもう特定されてると思うから、龍田は日本にはいられなくなっちゃったなー？」 「いられなくなっちゃったなー、って。お前ね。そんなん当たり前じゃねっすか！？」 陸海空、全部の主要端末にこの話がすっ飛んでいったわけだし。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

うっわうっわ、やべえぞこれ火の海だ。 だれがこの引き金引いたんだ。 更迭、処分の大盤振る舞い始まっちまうぞ。 関係ないとこまでぜーんぶきっちり放火して、後始末だれがやんのこれ。 「引き金は兵頭少佐だよなー」 「そうでーす❤」 俺ぇ！！！？ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「やややや、ちょっと待ってくださいな。有坂中佐、俺ただ単に──」 「艦娘の人権問題を解決しようとした。そのために殺人を犯した。だろ？」 「はい、そっすけど」 うん、すっきり答えられちゃったけどさ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「だが、そんな程度で軍規が変わるわけがないだろう？」 ぐうの音もでねえ。現実としてできたのは、天龍龍田の命の先延ばし程度だ。 恐らく総出で潰しに掛かられて、俺は獄中事故死が確定してた、ってぐらいか。 あとは海ぼうずと、後援会がどうにかする腹だった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

俺は、軍法会議で他の並ぶ皆々様に、必死で訴えかけて心情を動かし。 後は海ぼうずが、それからあちこちを当たって、改正のための情報集中を行う。 長門の後援会からは、ほうぼうからの議員やら陸軍関係者からの横槍を揃えて貰う。 俺の描けた絵図はそこまでだ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

だが、少なくともここまで焼け野原になる計画は、俺立ててねっすよ？ こんな大規模情報テロと、一斉クーデターみたいなのやったら大惨事になるのわかってるでしょ。 あっちこっちで情報の混乱と、主導権の握り合いが勃発するですよ？ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「龍田が仕返し計画を立ててた所に、詰めになる美味しいネタを兵頭さんがパスしてくれたものねー」 現在進行形で火を付けて回ってる、悪魔はぽろっとそう仰った。 お前やられっぱなしで黙ってるほど、優しくない性格してるよな。 やり返すときは徹底的だもんな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ちなみに龍田。計画いつから始めたの？」 「三船提督のところに着任して一ヶ月目ぐらいー？」 にっこり微笑みスッキリ顔の龍田。 積年の恨みが凄まじい勢いで吹き出してるんですけど－！！！ そうか、お前の怒りが今軍全体を焼き払ってるのか。 パンドラの箱か！ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「俺の行動なかったら、この爆弾いつ爆発させるつもりだったの？」 「うーん？決定的な情報が全然なかったしー。最短で10年以上かかりそうだったかもー？」 さらっと龍田はそう言ったわけで。 ははははは。 パンドラの箱を開けたの俺なのね！？ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「マジか……俺、日本に居場所なくなるってレベルじゃないじゃんこれ……マジか……」 「まあ、日本どころか世界中どこでもって感じだね。主犯は龍田ちゃんだけど」 「いえーい❤」 Ｖサインで勝利宣言する、かわいい龍田ちゃんがそこにいた。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「どうしよ、俺これ責任とれねっすよ？」 「大丈夫、私も取れないよこんなの」 なんでそんなにゆったりしてられるんですか、有坂中佐。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「でもこれ、みんなが無視してきた話なわけだし、責任は我々全体にあるんだよね」 口の端を上げる笑い方で、有坂中佐はそう言った。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「みんなって言うと？」 「みんなはみんなさ。提督も、技術者も、現場組も、上層部も、艦娘も。とにかく、軍関係者はみんな」 それは、容赦の一切無い話だった。 「みんなが殺した。戦争だから仕方ないっていう免罪符の下にね」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「だから、ちょっとずつ全体で責任を持って処理していかないと、ならなくなったわけだ」 それには、静かな怒りも含まれていた。 #不知火に落ち度はない