【本日の父上】

佐藤龍一 @RyuichiSato

【本日の父上】面会に行った姉が担当の先生と面談。肺炎が再悪化していること、腎臓がんからくる慢性の腎不全が悪化していることなど。足の付根からカテーテルを挿入することになった。

佐藤龍一 @RyuichiSato

父から預かった家の鍵。8年前に亡くなった母の写真のキーホルダーが付いていた。愛していたんだね。俺には自分が死んだ後のことを細々と指示し、姉には「治ったら温泉に行きたい」と希望を告げる。俺たちは家族だ。 pic.twitter.com/bbyWdqSFKm

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佐藤龍一 @RyuichiSato

愛する事ができるのは常に現在に於いてであって、過去や未来を愛することはできない。心配や後悔や希望や危惧は愛ではない。 現在とは永遠の別名である。それは時間の中にはない。

佐藤龍一 @RyuichiSato

父から電話で（ほとんど毎朝ある）見舞いに来る上の姉に何かを持って来てほしいというが聴き取れない。姉はもう家を出てしまった。父は難聴でこちらの声は届かない。だか「今日は気分がいいので心配しないでいいよ」と言っていた。きょうはきょうでかけがえのない一日。

佐藤龍一 @RyuichiSato

病院にいる姉から電話があって、何も食べていなかった父が、昼食を食べたうえ、さらにクリームパンを買って来てくれと言ったとか。痛み止めが効いたのだろう。持って来てくれと言ったのは小さなラジオだった。大相撲が気になるのだろう。だが今日も明日も俺は仕事で行けないんだよ、父ちゃん。

佐藤龍一 @RyuichiSato

【本日の父上】12時半に面会、調子は比較的いい。ベッドも起こせるようになった。病院食5品を各小さじ2〜3杯、持参したフリーズドライのカニ雑炊、磨りおろし林檎を少々。牛乳。食欲はある。足を拭き、足指先から太腿までマッサージ。気持ち良さそう。カバヤのミルクコーヒーを所望、売店で買う。

佐藤龍一 @RyuichiSato

愛ってやつは、時にはサンドバッグになることを要求します。マゾヒスティックな喜びがあります。

佐藤龍一 @RyuichiSato

【本日の父上】この数日、胸の痛みを訴え食事も取っていない。先ほど担当医から電話で、検査の結果心筋症だとのこと。心臓専門の病院に移してカテーテル手術をするか、薬物投与で様子を見るか判断を求められる。高齢なので後者を選択。腎臓癌に肺炎に心筋症。秒読みが始まっているのかもしれない。

佐藤龍一 @RyuichiSato

あみだくじだよ、人生は。 （時と場合によってはね）

佐藤龍一 @RyuichiSato

1月27日（金）曇天、風強し。9時半に父が入院する病院からの電話で起こされる。先生から話があるから早めに来てくれとのこと。父の反応は鈍くなっているという。急いで支度して家を出る。昨日「心筋症」と書いたが「狭心症」の間違いだった。心筋梗塞まではいっていない、という話だった。

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父に対して「ああしてください」「こうしてあげてください」という意見をよくいただく。その人自分自身の経験から、親の死に対する後悔から忠告してくれるのかもしれない。その気持ちはわかる。だが俺はすでに奥さんと母親を見送っているのだ。何ひとつ後悔することなく。

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父と俺は言葉に出さない深い信頼で結ばれていると思う。長い時間をかけていざとなったらどうするかの話合いもしてきた。俺と父は担当の先生を信頼している。合意もできている。迷いはない。願いはひとつだけ。少しでも苦しくないように。痛みを感じないように。

佐藤龍一 @RyuichiSato

寒空の中、病院行きのバスはまだ来ない。こんなときに限って仕事が立て込んでいる。今月中の編曲の締め切りが3曲、自分の主催するライブが一本。締め切りはずれ込んで2月の頭までは宅録の鬼になっていることだろう。運命よ、かかってきなさい。俺はあなたの友達だ。

佐藤龍一 @RyuichiSato

【本日の父上】入院24日目。父は昏睡したまま、浅くて早い呼吸をしている。手を握り、写真を一枚。主治医の話では肺炎と腎不全は改善したが狭心症に加え呼吸機能の低下、意識はもう戻らないでしょうと。危篤状態だ。意識がないから痛みもない。老衰。早ければ今晩にでもお迎えが来るかもしれない。

佐藤龍一 @RyuichiSato

外に出て食事をしていると、容態が急変したとの知らせ。病室に戻り、機器に囲まれた意識のない父に声をかけ手を握る。顔面蒼白だがまだ呼吸している。午後2時、下の姉が到着。父の意識があるうちに家族や兄弟と話ができたのは良かった。船と岸とはテープで繋がり、魂の汽笛が鳴っている。

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父の見守りを姉の息子（父の孫）に任せて、一旦帰宅する。父の意識があれば「帰れ、帰って仕事しろ」と言うに決まっているからだ。何かあればすぐ駆けつける体勢。父の何か、炎のようなものが乗り移ったような妙な気分だ。俺と父は一体化している。耳の側で何かをごしょごしょ言う必要もない。

佐藤龍一 @RyuichiSato

病院にいる姉から電話があって、父の呼吸がかなり弱っているからきた方がいいとのこと。これからタクシーで病院に向かう。間に合え。

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間に合いました。父は個室に移され、今はやや安定している。呼吸は浅い。万感の思いで手を握る。暖かい。 pic.twitter.com/6yUm5X3mAC

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佐藤龍一 @RyuichiSato

担当の先生がたまたま当直で、オールナイトの監視体制になってる。意識のある時にはついに聞かれられなかった「越えきし山」を聞かせる。父が書いた自叙伝と同名の歌。「記憶も夢も幻も歌も涙も温もりも天に昇って星になれ」。それから姉が「江差追分」をかける。父が軍隊の野営で披露したという歌だ。

佐藤龍一 @RyuichiSato

担当医が「いつ呼吸が止まってもおかしくない」と言ってから６時間、父はまだ呼吸をしている。意識が戻ることはないだろう。だが生きている。一世紀近い時間を旅し、自分を在らしめてくれた存在が、ここに横たわっている。父と共にある。不可逆な時間が過ぎて行く。

佐藤龍一 @RyuichiSato

人の誕生が祝福されるべきものならば、死もまた祝福されるべきものではないかと俺は思う。不謹慎な考えだろうか。人の死が悲劇であるならば、誕生は悲劇の始まりになる。だが俺はそうは思わない。ひとつながりの命、その全体が有難い僥倖、分け与えられた奇跡だと思うのだ。特に寿命を全うする時には。

佐藤龍一 @RyuichiSato

昇る陽は生命に力を与え、沈む陽は慈愛に満ちている。

佐藤龍一 @RyuichiSato

耳の側で話しかけてくださいと、数えきれないほど沢山の人に言われている。だが父は寡黙で余計なおしゃべりが嫌いだ。俺たちはただ共にあることを楽しんできた親子なんだ。そういうコミニュケーションがあることは想像し難いかもしれないが。

佐藤龍一 @RyuichiSato

呼吸も脈拍も急激に落ちてきた。

佐藤龍一 @RyuichiSato

5時47分。父上、臨終いたしました。大往生でした。ありがとう。