【完結】図書館大戦争(仮)

思いついたはいいけど書いている時間がないのでプロットだけ垂れ流すことにした文アルオールキャラ全員強制潜書大乱闘なんちゃら的なやつ 2017/09/10 完結しました 閲覧ありがとうございます
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シロ@〆最新節済 @siro_xx

直哉はムシャと共に「森」の中を駆けた。注意して見れば周囲の木々は全て文字でできている。「っとと」「志賀、前見て!」転びそうになったところで直哉の後をついてくるムシャからそう声が上がった。「わかってる!」直哉はそう返し、敵の姿を探した。木、木、木、木、木……羽。

2017-02-01 20:02:35
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直哉は足を止めた。紅の羽をした鳥のようなものがそこにいた。「あれが敵か?いつもの敵とかなり違うな……」直哉の呟きに応えるように鳥の羽が揺れ、その一枚一枚が敵という文字に変わっていった。直哉は刃を構えた。敵もまた刃を構えた。死神の鎌のようなおどろおどろしい武器だった。

2017-02-01 20:11:37
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「行くぞ、ムシャ!」「うん!」敵はその一体だけのようだった。二対一なら数の上ではこちらが有利だ。直哉は土という文字を強く踏んで跳び、その鳥に斬りつけた。鳥は咄嗟にその鎌で直哉の攻撃を防ごうとしたが、直哉のほうが"強かった"。鳥も反撃に出たが、直哉にはかすり傷一つつけられなかった。

2017-02-01 20:16:47
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「どうした、そのデカい鎌は飾りか!?もっと真面目にやったらどうだ!?」勝負と呼ぶにはあまりにも一方的だった。ムシャが攻撃に参加していないことに直哉は気づいていたが、一人でもこのまま倒せそうだったので気に留めないことにした。胴体を貫かれた鳥が絶叫を上げた。「これで終わりだ――」

2017-02-01 20:20:39
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バンッ!バンッ!バンッ!直哉が刃を振り下ろす寸前、立て続けに三発の銃声が響いた。直哉は咄嗟に攻撃を中止して伏せた。「逃げろ!太宰!」何者かの声がした。「え」と顔を上げた直哉の目の前には、ぼろぼろになった太宰治がいた。紅の羽は彼が常に羽織っているマントに変わっていた。

2017-02-01 20:31:19
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治は直哉に対して何か言いたそうな顔をしていたが「早く!」と続いた声に急かされてその場から走り去っていった。直哉はその背を呆然としながら見送った。闖入者も去っていったようで、直哉の前に姿を見せなかった。「……どう、いうことだ。今のは……なあ、ムシャ」直哉は親友を振り返った。

2017-02-01 20:35:06
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「どうしたのさ志賀」直哉は青ざめた。つい先程まで"武者小路実篤"だと思っていたその相手は、よくよく見れば「ム」「シ」「ャ」という膨大な量のカタカナが人の形をとっているだけの存在だった。「どうしてとどめを刺さなかったのさ?あんな烏一羽に志賀が負けるはずがないのに」

2017-02-01 20:41:05
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気づけば木だったものが「小説の神様」「エゴイズム」という文字に変形し、直哉と「ムシャ」を囲う檻と化していた。「志賀は本当にすごいと思うよ。僕も友達として誇らしいな」「やめ……ろ」「僕達に不可能なんて何もない。僕達が一番強いんだ。そう思わない?」「本物のムシャはどこだ!!」

2017-02-01 20:45:33
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「ムシャ」は答える代わりに「シ」の字の棒を大きく曲げた。それはまるで人の笑いのようであった。そしてその刃を、直哉に向けた。「先に言うけど、志賀は僕には勝てないよ。だって志賀は僕を斬れないから」文字がぶれ、再び親友そっくりの姿に変わった。「――畜生!!」直哉は檻の中で叫んだ。

2017-02-01 20:50:10

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「死体」はむくりと起き上がった。モノクルを直し、それから、己の身体にべったりと貼られた「死体」という文字を剥がそうとした。剥がれなかった。「ワタクシが死体になるとは……なんという皮肉でしょう」死体は……乱歩はそう呟くと、床の上に座り込み、正面を見た。

2017-02-02 09:03:29
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まず、東側の壁には窓があった。螺子式の古い窓だが、壊れた様子もなくきっちりと鍵が閉まっている。乱歩は右横を見た。「被害者は自殺」「人妻への恋」「苦悩」……そんな言葉がびっしりと書かれた壁があった。乱歩は腰を少し上げ、更に右横を見た。壁に「種も仕掛けもない」と書かれていた。

2017-02-02 09:09:34
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最後に乱歩は北を見た。扉があった。サムターン式の鍵は閉められ、チェーンロック、そしてあろうことか扉の隙間という隙間を塞ぐように大量のガムテープが貼られていた。……密室。そんな言葉が乱歩頭を過ぎった。 「なるほど、ワタクシはここで自殺……いえ、自殺と見せかけて殺された……と」

2017-02-02 09:13:04
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乱歩は自然と状況を飲み込んでいた。自殺した覚えも殺された覚えもない。であればここは本の中だろうという察しはついたのだ。何より、推理小説で描かれる密室を現実の殺人でやることはあまりにも手間がかかりすぎる。 「まあ、犯人探しは後にしましょう。まずは……」

2017-02-02 09:15:31
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「この密室の謎を解き、自殺者というレッテルを剥がさないことには」乱歩は立ち上がった。先程まで乱歩が倒れていた床にチョーク線で人の形が描かれ、乱歩の身体に「探偵」の文字が増えた。「ワタクシ自身がこの部屋に閉じ込められたままになってしまいます」乱歩は独り笑った。

2017-02-02 09:29:10
シロ@〆最新節済 @siro_xx

「どなたかは存じませんが、この江戸川乱歩に推理勝負を仕掛けようとは面白い。受けて立ちましょう!」 恭しく一礼しながら「どこかにいる犯人」へと、乱歩は芝居がかった口調で高らかに宣言した。

2017-02-02 09:36:27

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「うう……」もともとそれほど大きくもない身体を更に縮こまらせながら辰雄は歩いていた。彼がここまで怯えるのには理由がある。一つは単純に独りであること、一つはつい数分前まで図書館の廊下だった場所がすっかり広大な森に変わってしまったこと、そしてもう一つは……。

2017-02-02 19:00:25
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「ひっ!」辰雄は喉を引きつらせて声を上げた。前方の茂みから動物の死骸が転がっていた。森である以上ある意味で自然なことではあったが、それは彼の精神を酷く弱らせた。「嫌だな……早く図書館に戻らないと……」彼は死骸から視線を逸らすと再び歩き始めた。それが正しい道かは、わからなかった。

2017-02-02 19:04:22
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そう思った時だった。辰雄の足下に「蛇」が現れた。辰雄は声をあげ損ねた。蛇は二匹になり、三匹になり、逃げ道を塞ぐかのように辰雄を取り囲んだ。やがてそれらは洋墨となって混じり合い、嵩を増し、彼の背を越えるほどの大蛇となった。「うわあああっ!!」辰雄は尻餅をついた。

2017-02-02 19:26:07
シロ@〆最新節済 @siro_xx

辰雄は咄嗟に頭を――そこを守ったところでどうなるわけでもなかったが――腕で守ろうとした。大蛇が口を大きく開き、辰雄に噛みつこうとした、その時だった。「足下に蛇が現れた。……全く陳腐なレトリックだな!」「そっちは任せたぞ!」聞き慣れた声が、辰雄の耳に届いた。

2017-02-02 22:51:46
シロ@〆最新節済 @siro_xx

「堀君を頼みます、菊池さん」優しくも頼もしい響きに辰雄は顔を上げた。白く輝く薙刀の一閃が蛇を真っ二つに裂いていた。「あっ……!」「見なくていいぞ。苦手なんだろ、ああいう生き物」辰雄の横から寛が囁いた。「怪我はないか?」

2017-02-02 23:05:28
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「だ……大丈夫です」辰雄が頷くと、寛がその腕を取って立ち上がらせた。辰雄はなるべく大蛇を視界に入れないよう注意しながら利一の戦いを見守っていた。「古い表現の寄せ集めに負けてはいられないからな!」半分になっても尚もがいていた大蛇がぼとっぼとっと崩れ落ちた。利一は息を吐いた。

2017-02-02 23:12:54
シロ@〆最新節済 @siro_xx

「あの……ありがとうございます。また、助けられてしまいましたね……」「気にしなくていい。それに手前も、先程菊池さんに助けられたばかりだ」「俺が通りかかったのはたまたまだぜ?……なんて話は一旦後か」寛が後頭部を軽く掻きながら言った。

2017-02-02 23:16:53
シロ@〆最新節済 @siro_xx

「図書館が急に森になったり訳のわからん化物が襲ってきたり、ここが有碍書の中であることは間違いなさそうだが……」「僕もそう思います。でも、潜書した覚えが……。それに、最初におかしいなって思った時には確かにここは図書館だったのに、急に森に変わって……」「手前も同じだ。妙だな、ここは」

2017-02-02 23:19:44
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