こじらせていたリーマン不定期更新2

2
前へ 1 ・・ 13 14
こじらせていたリーマン @ro1xrc3

「なーチョロ松。鍋ってさあ、水につけといて後で……、寝てる?」 「寝てない。目つむってただけ」 おそ松を見ると、部屋着に水が跳ねて、跡がついていた。あと泡もいくらか。不器用だなあ。お前の分のエプロンも欲しいね。

2017-02-18 14:53:11
こじらせていたリーマン @ro1xrc3

「ふふ」 「なに笑ってんだよ」 ゴム手袋をしたおそ松の、生活臭がすさまじくて、なんだか笑ってしまう。 「いや、ただ。……ずっとお前と、こうしていたいなあって、思っただけ」 するりと、自然に、声が漏れた。それは言葉じゃなくて、感情、気持ち、そのままの温度をしていた。

2017-02-18 14:54:04
こじらせていたリーマン @ro1xrc3

おそ松は、きゅっと何かをこらえるような顔をして、キッチンに戻った。あ、あれ?どう思われたんだろう。一瞬不安に感じたけど、おそ松はすぐに戻ってくる。どうも、ゴム手袋を外しにいったらしい。

2017-02-18 14:55:04
こじらせていたリーマン @ro1xrc3

そのまま僕に寄ってきて。ぎゅっとだきしめてくる。ふわりと、洗剤の匂い。 「……皿洗いは」 「きゅーけー!」 「まだ10分も経ってないのに」 思わず笑って、抱き返した。とろとろ。お前も、僕も、しあわせのバターになって、ホットケーキの上で溶けるみたいに、ひとつになれたらいいのに。

2017-02-18 14:56:03
こじらせていたリーマン @ro1xrc3

「チョロ松。俺からも、プレゼントがある」 「……なに?」 「それこそ、あげたつもりだったんだけど。…これ」 体をすこし離して、差し出された掌の上に、銀色の鍵。 「玄関に置いてただろ。これはもう、お前の。俺の家の鍵、持っててよ。好きな時に来て」

2017-02-18 14:57:05
こじらせていたリーマン @ro1xrc3

「そんでさ。今すぐは、難しいけど。一緒に住もうよ」 「う、え…?」 「いや?」 「いやじゃ、ない……」 「だろ?」 おそ松はまた、にかっと笑う。やっぱり晴れている。太陽。きらきらしてる。おそ松。僕の恋人は。

2017-02-18 14:58:05
こじらせていたリーマン @ro1xrc3

「会社の近くでさ。家賃半分ずつならもっといい部屋住めるよ。お互い家具も家電も持ってるし……今はちょっと、仕事忙しい時期だから、あれだけど。なあ、絶対。一緒に」 おそ松は、再び僕を抱きしめた。

2017-02-18 14:59:07
こじらせていたリーマン @ro1xrc3

僕は銀色の輝きを大切に握って、ありったけの想いをこめて、頷いた。 僕もお前と、暮らして、生きたい。

2017-02-18 15:00:11
こじらせていたリーマン @ro1xrc3

暖かい腕に抱かれながら、明日はおやつにホットケーキを作ろう、なんてぼんやり思った。 できれば、チョコレートをひとかけ添えて。こんな僕らのバレンタインを、ささやかに、あらためて、もう一度。

2017-02-18 15:01:12
前へ 1 ・・ 13 14