悠久なる世界の欠片 第二部

エクスとメルフィアの物語。 不定期 & 虫食い 連載
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夢乃 @iamdreamers

「何したの?」 ミルティアの問にエクスは答えた。 「ただの目くらましだよ。手加減する余裕はなかったから何人か失明したかもしれないけど。それより早く」 #twnovels

2015-04-11 14:38:36
夢乃 @iamdreamers

5人は倒れている兵士を乗り越え、門への15テナーあまりの距離を一気に駆けた。 「あれ、どうやったの?」 走りながらメルフィアがエクスに尋ねるが、エクスの答えはそっけなかった。 「秘密」 「ぶー」 しかし、今はそんな時でないのは判っているので、そのまま門へ向う。 #twnovels

2015-04-11 14:39:56
夢乃 @iamdreamers

「この門、どこで開けるんだ?」 ガイナンが巨大な門を前に誰にともなく呟く。 「入るときは堂々と開け放っていたのに、わざわざ閉めやがって」 「どきなさい。メルフィア、杖を貸して」 「はい」 メルフィアが持っている杖を、布に包んだままミルティアに渡す。 #twnovels

2015-04-11 14:40:35
夢乃 @iamdreamers

「はっ」 掲げた杖を振り下ろすと同時に、杖の先からミルティアの増幅された魔力が門に集中する。その力は杖と門の間の大気を震わせ、蜃気楼のように景色を歪ませた。 しかし。 その力は門の前でかき消された。 #twnovels

2015-04-11 14:41:07
夢乃 @iamdreamers

「魔力障壁!?私の力を上回るなんて」 「どうする?のんびり門を開けている暇はないぞ」 クラシスが言う。 「母さん、私、杖の力を使うわ」 「駄目。あれをこんなことに使っちゃ」 「でも」 #twnovels

2015-04-11 14:41:45
夢乃 @iamdreamers

メルフィアとミルティアが問答している横でガイナンが雄たけびを上げた。 「ぬおぉぉぉぉぉぉ!俺に任せろぉぉぉ」 それと同時に、彼がいつも背にしている巨大な荷物を右脇に降ろし、それを包んでいる布を剥ぎ取った。 現れたのは大筒だった。 「魔力砲・・・?」 #twnovels

2015-04-11 14:42:24
夢乃 @iamdreamers

グリップとハンドルを引き起こしてグリップを左手に握り、砲口近くのレバーを手元まで引き絞る。そしてハンドルに手をかけ、砲口を門に向けた。 「後ろ、気をつけろよ!」 狙いを門の中央に定め、ハンドルのトリガーを引き絞る。 砲口から閃光が迸った。 #twnovels

2015-04-11 14:43:03
夢乃 @iamdreamers

閃光はそのまま門に命中し、魔力障壁を突き破って門を吹き飛ばした。 「よっしゃ!いくぜ!」 魔力砲を戻しながら、ガイナンは吼えた。 「よし、脱出だ!」 クラシスも続く。 5人は一斉に門を抜け、屋敷の敷地から飛び出した。 #twnovels

2015-04-11 14:43:40

第二部第三話 より

夢乃 @iamdreamers

工場の立ち並ぶ一角に、自動三輪車が入ってきた。作業着にも見えるポケットの沢山ついた上下の服は、この辺りの雰囲気に溶け込んでいる。手には皮の手袋をはめ、頭にはヘルメット。その下からは薄茶色の髪が覗いている。その表情は、ゴーグルの下に隠れている。 #twnovels

2016-08-08 11:27:45
夢乃 @iamdreamers

工場の間を暫く走ったところで停めると一人ごちた。 「この辺りのはずなんだけどな~」 その声からすると、女性、それも、まだそれほど歳を取ってはいないようだ。周りを見回すと、上衣の左袖のポケットから折りたたんだ紙片を取り出した。 #twnovels

2016-08-08 11:28:39
夢乃 @iamdreamers

広げた紙片と見比べるようにして、また首を廻らす。 「うーん、わかんないなー。誰かに聞くか」 紙片を元に戻すと、ハンドルを握りなおしてゆっくりと走り出した。それほど進むことなく、小さな工場の前に自動三輪車を停めると、路上に降りた。 #twnovels

2016-08-08 11:28:54
夢乃 @iamdreamers

ヘルメットとゴーグルを外し、後ろに括りつけてある荷物の上に置くと工場の中に声を掛けた。 「すみませーん、どなたかいらっしゃいますかー」 彼女が声を張ると、すぐ近くの機械の陰から、男が顔を出した。 「ほい、何か用かい?」 「わ、びっくりした」 #twnovels

2016-08-08 11:29:11
夢乃 @iamdreamers

突然姿を現した男に、少女は思わず声を上げた。 「おっと、驚かしちゃったか。悪いね」 大きな手を手拭で拭きながら立ち上がった男はガハハと笑った。 「あ、いや、外からは誰も見えなかったから、そんな近くにいると思ってなくて。はぁ、驚いた」 #twnovels

2016-08-08 11:29:27
夢乃 @iamdreamers

少女は言いながら、息を整えた。 「それで譲ちゃん、何か用かね」 「あ、突然すみません。えーとですね、この辺りの工場でエクスって子が働いているって聞いたんだけど、ご存知ありません?」 「ああ、エクスね、知ってるよ」 「本当? どこですか?」 #twnovels

2016-08-08 11:29:47
夢乃 @iamdreamers

男は工場から道路へ出てきて、一方を指差した。 「この道を向こうに行って二つ目の曲がり角を右に曲がって真直ぐ。そのまま最初の曲がり角を過ぎたら三軒目、道路の左側の工場だよ」 「えーと、二つ目の曲がり角を右、一つ目の曲がり角を越えて三軒目、ね」 #twnovels

2016-08-08 11:30:01
夢乃 @iamdreamers

少女は頭の中で言われたことを頭の中で反芻するようにしながら繰り返した。 「おう、そうだよ。ところで、この車は譲ちゃんのかい?」 男は、少女の乗ってきた自動三輪車に近付きながら言った。 「うん、そうよ。元はお祖父ちゃんが使ってたんだけど」 #twnovels

2016-08-08 11:30:20
夢乃 @iamdreamers

「ほぉ。それじゃ結構年季入っているんだな」 男は自動三輪車の周囲を回り、あちこち触れていた。 「うん、こりゃいい仕事してるな」 「解ります?」 「そりゃ俺だって、この道のプロだからね。解るってもんよ。それに、譲ちゃんも大切に使ってるね」 #twnovels

2016-08-08 11:30:42
夢乃 @iamdreamers

「そう言ってもらえると嬉しいな。ありがとうございます」 少女はゴーグルとヘルメットをまた付けると、自動三輪車に跨った。 「それじゃ、失礼します。教えていただいてありがとうございました」 「おう。気を付けていけよ」 少女は頭を下げると、ゆっくりと走り出した。 #twnovels

2016-08-08 11:30:56
夢乃 @iamdreamers

教えられた通りに道を進むと、目的の工場はほどなく見つかった。 (こりゃ大きいね) またヘルメットを取り、ゴーグルを外しながら少女はその工場を見上げた。高さはそれほど大きくはない。周りにある工場の1.5倍程度か。けれどその幅は、向かいの工場三軒分はある。 #twnovels

2016-08-08 11:31:11
夢乃 @iamdreamers

身体を捻ってヘルメットとゴーグルをまた後ろの荷物の上に載せると、自動三輪車から降りて工場の入口と思われる正面シャッターの隣の扉を開けた。突然、大きな音が外に漏れる。 (うわっ。うるさっ。だから締め切ってんのかな) そう考えると中に入り、扉を閉めた。 #twnovels

2016-08-08 11:31:25
夢乃 @iamdreamers

「すみませーん、どなたかいらっしゃいますかー」 工場に入って見回したときから、機械の間を動き回るいくつかの人影は見に入ったが、少女に気付かないのか、気付いていても気にしていないのか、こちらを気にする様子は見えなかったので、声を張り上げた。 #twnovels

2016-08-08 11:31:38
夢乃 @iamdreamers

耳を劈くような、とは言えないまでも、これだけ煩いと誰にも聞こえないかな? と思ったが、すぐに応答があった。 「はーい、ちょっと待ってくださーい」 程なく、工場内の事務所?の扉が開いて、まだ若い、少女と同年代だろう少年が現れた。 #twnovels

2016-08-08 11:31:52
夢乃 @iamdreamers

「何か御用ですか?」 「えーっと、ここでエクスが働いているって聞いたんだけど」 「へぇ、あんたエクスの知り合い? って、こんなしゃべり方しちゃ駄目だな。えーと。エクスなら居ますよ。ちょっと待ってください。・・・あー、今は駄目だな」 #twnovels

2016-08-08 11:32:06
夢乃 @iamdreamers

「出てこられないんですか?」 「いや、いるにはいるんだけど、今、魔力機関の調整をやってるから。えーと、あと3、40ミールで終わると思いますけれど。急ぎなら呼び出しますけれど」 「あ、急ぎってわけじゃないし、邪魔しちゃ悪いから。でも40ミールか」 #twnovels

2016-08-08 11:32:21
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