「軒猿」「簷猿」について

備忘用まとめ。ついでに「飛加藤」関連の発言も追加。
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森瀬 繚@ブライアン・ラムレイ〈幻夢境〉シリーズ @Molice

上杉の忍びといえば軒猿だが、そういえばちゃんと調べたことがなかった。80~90年代のうちに『萬川集海』を揃えられなかったのはかえすがえす痛いなあ。今ではおそろしいプレミア本だ。(当時はまだ書泉グランデに一部残ってた)

2009-04-26 20:40:19

その後、2015年に国書刊行会から『完本 万川集海』が刊行されました。

完本 万川集海

国書刊行会


森瀬 繚@ブライアン・ラムレイ〈幻夢境〉シリーズ @Molice

「『北越軍談』に、軒猿(上杉家の忍者集団)が西条山のふもとで武田方の三ツ者(忍者集団)を捕らえたという話がある」という文章を読んで、『北越軍談』を確認したところ、該当しそうな記述は「甲州透波が裏切りの書状を運ぶ者を川中島の川下で捕らえた」という武田家内のすったもんだのみだった。

2015-09-19 20:08:45
森瀬 繚@ブライアン・ラムレイ〈幻夢境〉シリーズ @Molice

@Molice なお、速水春暁斎『甲越軍記』の方には、上杉の間者が武田の透波20数名を捕らえたという話があるので、こちらとの混同というのはありうる。

2015-09-22 14:53:32

森瀬 繚@ブライアン・ラムレイ〈幻夢境〉シリーズ @Molice

年明け早々に續群書類從と取っ組みあい、かねて懸案の「軒猿」の出典をついに確認。上杉家に仕えた忍者集団「ではない」ことは確定しました。これで、2015年からの宿題をひとつ消化。

2016-01-02 13:55:47
森瀬 繚@ブライアン・ラムレイ〈幻夢境〉シリーズ @Molice

歴史小説や忍者の解説本などで、上杉謙信の抱えた忍者とされる「軒猿」について改めてまとめてみる。『萬川集海』巻第一の忍術問答中に、日本での「忍び」の呼び名のひとつとして「簷猿(のきざる)」が挙がり、「軒下に猿のように潜んで敵の内証を探る役であり(中略)、忍びとは少し違う」とある。

2017-01-22 14:25:49
森瀬 繚@ブライアン・ラムレイ〈幻夢境〉シリーズ @Molice

@Molice なお、『萬川集海』を典拠として「軒猿というのは忍者の始祖である軒轅黄帝に由来する」とする文章をたまに見かけるが、『萬川集海』には「黄帝ニ至リテ盛ンイ行ハレタ」とあるだけで、「公孫軒轅」の名は出ていない。軒猿の由来を軒轅と考えたのは読者の側(史家や研究者を含む)。

2017-01-22 14:29:37

修正:「盛ンニ行ハレタ」の間違い。

森瀬 繚@ブライアン・ラムレイ〈幻夢境〉シリーズ @Molice

@Molice 一方で、『川中島五戦記』『上杉三代日記』『越後軍記』など上杉関係の軍記物やら何やらに出てくる忍びは、「夜盗組」「伏齅」「聞者役」と呼ばれる。敵方である真田家史料の「一徳斎殿御事蹟稿」にも「越後方夜盗組の物聞共」の一文があるものの、「簷猿」「軒猿」は見当たらない。

2017-01-22 14:32:40
森瀬 繚@ブライアン・ラムレイ〈幻夢境〉シリーズ @Molice

@Molice 軍記物を読み漁って、ようやく見つけた「軒猿」は『北條記』(『続群書類聚』版)のこの箇所。由井源蔵は北條氏照の別名。つまり、ここでは北條方の忍びが軒猿と呼ばれている。大橋山城守は北條氏康配下の御旗本四十八番将衆に名前があり、風間一党のような盗賊崩れではない模様。 pic.twitter.com/UwFBDYvoTr

2017-01-22 14:37:59
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森瀬 繚@ブライアン・ラムレイ〈幻夢境〉シリーズ @Molice

@Molice そんなこんなで現状、「軒猿は東国での忍者の呼称のひとつ。北條が用いた斥候が「軒猿」と呼ばれることもあった、かも」以上の情報がありません。上杉方という話は歴史小説由来かと。司馬遼太郎氏が「武田方の間者が軒猿と呼ばれている」なんて話をサラッと書いていたりもして……。

2017-01-22 14:43:15
森瀬 繚@ブライアン・ラムレイ〈幻夢境〉シリーズ @Molice

めも・司馬遼太郎「上杉謙信の軍法では、忍者を「草」といい、武田家は「軒猿」といった」 shinchosha.co.jp/books/html/115…

2015-09-17 21:47:24
森瀬 繚@ブライアン・ラムレイ〈幻夢境〉シリーズ @Molice

@Molice ここで「かも」とした理由は、『続群書類従』版とは別の本では「軒猿」の箇所が「斥候(ものみ)」になっていたり、そもそも筆者ないしは書写者がここで「軒猿」という字を使っただけのことであって、北條家中でそのように呼ばれていたかどうかはわからない、などの理由からです。

2017-01-22 14:49:16

森瀬 繚@ブライアン・ラムレイ〈幻夢境〉シリーズ @Molice

いわゆる「飛加藤」は、15~18世紀の文献では「とび加藤(『甲陽軍鑑』末書結要本)、鳶加藤(『北越軍談』『近江輿地志略』)、飛加藤(『伽婢子』)」と書かれ、幕末の『繪本甲越軍記』あたりでようやく「段蔵」や伊賀出身などの設定が生えます。この過程を抑えた文献を見たことがありません。

2017-01-20 10:41:21
森瀬 繚@ブライアン・ラムレイ〈幻夢境〉シリーズ @Molice

@Molice ちなみに、『北越軍談』『伽婢子』の鳶加藤・飛加藤は常陸出身です。前者では、小田原の風間次郎太郎(つまり風魔一党ですな)から幻術を学んだとされる。

2017-01-20 10:47:12