「フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #17 「作戦案」(エピローグ)

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愛衣は浮かんでこない。ゆっくりと沈んでいく。 「え、おい……嘘だろ!?」 ここにある愛衣の体はアバターの様な物で、八つ裂きにされようが死にはしない。その筈だ。だから情けない攻撃を叩き込んでやったのに、何か不具合でもあったのか!?…という心配は一瞬だった。水位が下がっていく。 42

2017-02-23 21:49:47
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「おいコラ」 急速に下がる水位が腰辺りを下回り掛けた辺りで愛衣の顔を頭上に持ち上げ、手前に引き寄せる。愛衣は大量の水で膨らんだ腹を愛おしげに撫でる。 「認知…して?」 「おう。してやるともよ。それは!風呂の!水だ!」 「おぐぇぼっ!」 背に突き抜ける勢いで腹に拳を叩き込む。 43

2017-02-23 22:01:34
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愛衣は薄ピンク色の湯をドボドボと吐き戻す。 「うぇっ…」 風呂は元の水位に戻った。いや心なしか微妙に増えている気がする。そもそも入浴剤など使っていなかった筈だ。 「私の気持ちを足しておいたぞ」 「お前の気持ちは体液なのかよ…血じゃねぇよなコレ?」 「…体液だ」 44

2017-02-23 22:10:51
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片桐は悍ましさに風呂を上がろうとして腰を浮かせかけ、止めた。顔を掴む手の隙間から覗く愛衣の目線が、妙に下を向いているのに気付いたからだ。 「おい…その辺にしとけよ…ていうか何の用なんだよ」 「手を離したら話してやる」 「離したらどうする気だよ」 「当然、潜ぼ…潜水だ」 45

2017-02-23 22:18:57
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「何で言い直したんだ?…ま、良いから話せ」 押さえる位置を顔面から首に変えて会話をしやすくする。執拗に下を向こうとするのを抑えながら続きを促す。 「初心なダーリンめ…それにしてもさっきから酷いぞ…例のものを持ってきてやったのに」 「例の?」 46

2017-02-23 22:25:07
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濡れ髪をこれ見よがしに撫で付けながら、愛衣が無闇に長い袖の中から取り出したのは、手の平大の紙だった。文字列が書かれている。 「大丈夫、耐水のペーパーだよ?」 「これは…」 愛衣は拘束をぬるりと脱して片桐に顔を寄せ、耳元で囁く。 「折角、堂々と侵入出来たんで、ついでにな」 47

2017-02-23 22:31:35
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「ここのシステムは鍵を頻繁に更新するがな、この基幹部の鍵は、今年の暮れまでは使える。基幹部ゆえに更新作業と、それに伴う各位への伝達が面倒なんだろう」 「……悪ぃ」 「使わずに済めば良いな」 真剣な表情を見せた愛衣に、片桐は答えなかった。 48

2017-02-23 22:39:18
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「さて、愛の語らいが済んだところで救い料を徴収させてもらおうか」 愛衣が一転して片桐の両肩をがしっと掴み顔を躙り寄せる。 「金は要らねぇんじゃなかったのか?てか俺が払うのか?い、いくらだ?」 不穏な予感がしながらも、片桐は尋ねた。 「まっさっか~。金なんか取るわけなかろう」 49

2017-02-23 22:42:55
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「サイバーチルドレンの天才長女である私にとって一番手に入れたいモノ、それは…お前の童貞だぁっ…どぎゃ!」 最速で真下に潜ろうとした愛衣の顎に、強烈な膝蹴りが入った。 「…今度なんか奢ってやるから帰れ…」 「…ふぁい」 「あと今更だけど、今日は色々有り難うな」 「…今言う?」 50

2017-02-23 22:48:00
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今日の戦いでは、各所へのハッキングで情報収集に貢献した愛衣だが事後処理も完璧だった。ハッキングどころか愛衣が僚勇会に出現した痕跡すら完全に消えていた。片桐達は通信や映像の記録を確認したが、自然な自分達の声で、自分達がした覚えのない会話が記録されていたのは不気味だった。 51

2017-02-23 22:54:00
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篠森達責任者は、彼女の力を借りたことを外部に隠す意図はなかった。色々面倒は被るだろうが処罰される謂れまではなかったからだ。しかし、ここまで完璧に改竄された後で公表すると、恩人の愛衣に迷惑が及ぶ可能性が高い。そういう訳で彼女の介入を知る者には箝口令が敷かれた。 52

2017-02-23 22:57:42
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「お前がふざけるから、礼を言う間がなかったんだろうが…」 「…スマン」 「それに改竄したって言った後で姿を消すから、皆礼を言い損ねて困ってたぞ。明日礼を言われにいけ」 「や、やだな~礼を催促するみたいで…!?」 片桐は愛衣を帰らせると、風呂の栓を抜いた。 53

2017-02-23 23:02:39
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体と風呂の底を良く洗い直してから、脱衣所で体と紙を乾かし床につく。眠気に飲まれる前に、紙に書かれた文字列を確認する。最初にこの紙の廃棄方法を確認する。長く所持せずに、早めに焼いた後で量販店で土や石灰を買ってそれを混ぜ、4・5箇所に分けて捨てろと書かれていた。 54

2017-02-23 23:07:26
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触れた物体の記憶を読み取る能力に対抗するための術の一つらしい。科学的捜査に対する撹乱も兼ねた手段だ。大まかにそれを確認した後、二十文字の半角英数字を頭に入れようと試みるが、語呂合わせの類も難しそうだ。暗記出来るまでは数カ所に分割して転記しておくべきかもしれない。 55

2017-02-23 23:11:58
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片桐は期せずして手に入れた、もしも時の切り札…僚勇会本部の警備システムの緊急停止コードを脳内で可能な限り反芻しながら眠りに落ちていった。これを使う時が来て欲しいのか、欲しくないのかという点は考えないようにしながら…。 56

2017-02-23 23:14:43
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フォビドゥンフォレスト 3話「蝶舞の町内」終わり 4話「大規模作戦・発動!」に続く

2017-02-23 23:15:25