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51. *** セクハラで訴えるか付き合うか。 半ば恐喝まがいの究極の二択を迫ることで、俺らの社内恋愛が極秘に始まった。 「お先でーす」 「お疲れ様でした」 典型的なイエスマン…ウーマン? そんな彼女は村上に言われるがままに、いやむしろ自ら進んで毎日のように残業。
2016-06-04 23:01:52![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
52. これは付き合う前からのこと。 変わったことといえば。 「お疲れ」 「お疲れ様です」 会社から少し離れたコンビニの駐車場。 それも、こんなとこにまで駐車場あるん?っていうぐらいコンビニの陰になってるような場所。 車に乗り込んだ彼女が小さなため息を一つ。
2016-06-04 23:02:01![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
53. 「今日もこき使われてたな」 「いえそんな!任されるって嬉しいじゃないですか」 健気やな。 村上の前でそれ言うたらほんまに過労死するまで使われるで。 「何食う?」 「えっと…」 あの告白から1ヶ月、最近わかったこと。 彼女はグルメである。
2016-06-04 23:02:09![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
54. 彼女のお気に入りという和食屋は落ち着いた店構えながらも、意外とボリュームのある定食や一品料理のメニューが充実しとった。 「あのさ」 「あ、レモンかけましょうか?」 看板メニューだという塩唐揚げに、レモンを絞る。 ありがたいけど、正直俺は今、レモンどころちゃう。
2016-06-04 23:02:16![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
55. 「1個聞いてもええ?」 「はい、どうぞ」 それはどっちの意味やろう。 唐揚げを取り分けてくれながら首をかしげる。 「俺のどこが好きなん?」 何かこんなん聞いたら女々しいっていうか、重い男みたいに思われへんかと思って今まで聞けんかったけど。
2016-06-04 23:02:25![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
56. もう1ヶ月も様子見たし、それでもどうしてもわからんのやから聞いてもそろそろええやんな。 「………」 「…え」 やっぱ聞いたあかんかった? 目を真ん丸にして、箸で掴んだ唐揚げは皿の上に落ちた。 「えっ、と…」 告白された時からそうやったけど、ほんまに掴めへん。
2016-06-04 23:02:31![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
57. 一筋縄じゃいかんとはまさにこのこと。 彼女には、俺の常識が通用せーへん。 「…手、ですかね」 「て?」 て?てって、手? 手? 「え、手って…」 「ハンドです」 はんど… 確かに手ぇ綺麗ってよく言われるけど自分じゃよくわからんしなぁ…
2016-06-04 23:02:38![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
58. てか、そこ? 「あ、もちろんそこだけじゃないですけどね!」 俺の考えてることがわかったんか、慌てたように付け足す。 「あと、色白なとことか…」 「…おん」 規格外、が俺の認識を遥かに超えすぎている。 「えっと…」 「あ、ええよもう。何かごめん」
2016-06-04 23:02:49![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
59. 「いえ!まだまだもっとあるんです!」 「や、ええねん。食べよ。何か恥ずかしなってきた」 恥ずかしい、というよりは。 これ以上聞くのが怖いというか。 …怖い? 何で? 俺は、彼女に何て言ってほしかったんやろ。
2016-06-04 23:02:57![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
60. *** 「ごちそうさまでした。すみませんいつもご馳走になってしまって」 「そんなん気にせんといて。その…年上なんやし」 彼氏なんやし、って言うのはまだ怖くて。 上司なんやし、って仕事上の関係を意識させたくもなくて。 「ありがとうございます」
2016-06-12 21:55:15![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
61. にっこり笑った彼女を、素直に可愛いと思った。 「そういえばさ、もう1個聞いてええ?」 車やから酒飲まれへんかったけど、これ素面で聞くん結構キツいけど。 「はい、何でしょう」 「その…何で、こんなコソコソせなあかんのかなって」 仕事中は上司と部下。それは当然。
2016-06-12 21:55:25![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
62. 会社の人間には付き合ってることは言わない。まあわかる。わざわざ言う必要もないし。 かといって。 「毎回コンビニの陰で待ち合わせして、遠くの店までメシ食いに来て」 彼女が行きたがる店は、いつも会社からかなり離れた場所。そして個室。
2016-06-12 21:55:31![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
63. 最初は偶然かなぁ思てたけど、最近どうも不自然に感じるようになってきた。 まあそれでドライブする時間が長くなるし、個室の方が落ち着くから好都合っちゃあ好都合やねんけど。 それにしても、忍び方がもはや芸能人やん。俺らどっかで写真週刊誌にでも狙われてんの?って思うぐらい。
2016-06-12 21:55:38![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
64. 「嫌ですか…?」 「や、全然そんなんちゃうねん。俺も冷かされんのとか恥ずかしいからむしろありがたいぐらいやねんけど」 別に社内恋愛が禁止されてるわけちゃうし、むしろうちの会社は多い方やと思う。 それにも関わらず、この徹底的なまでの社内バレ防止対策は。
2016-06-12 21:55:45![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
65. 「やっぱりその、まだ自分みたいな新入社員が…とか思てんのかなって」 告白された時、彼女がこだわっていた新入社員という立場。 新入社員が社内恋愛したらあかん、みたいなん思てるんやろうか。 隠すのは別にええけど、俺との関係を悪いことしてるみたいに思ってんのかなって。
2016-06-12 21:55:51![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
66. 「あ、そういうのじゃないです」 あっさりと返事が返ってきた。 「社内恋愛って、ややこしいじゃないですか。関係ない人にまで気遣わせちゃったりするし」 「ああ…まあ…」 仕事に私情挟むような奴らやったら、わからんでもないけど。
2016-06-12 21:55:57![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
67. 「喧嘩したー、とか。別れたー、とか。本人達より周りの方が気まずい思いするのって何か違うと思うんですよね。本人達は覚悟してても周りはそんな覚悟なんてしてないし」 「わ、」 別れた… 喧嘩ならまだしも、別れるて… あれ?俺らってもしかしていつかは別れる前提?
2016-06-12 21:56:02![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
68. 今時の子ってそれが普通なんかな… 付き合うとか別れるとか、もっとカジュアルな感じなんかな。 付き合ったなうー、別れたなうー、みたいな。 あかん、オッサンわからへん。 この子に限ってそんなことはないやろと思う反面、ジェネレーションギャップ以上のズレも感じているわけやし。
2016-06-12 21:56:07![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
69. てか。 こんなにもこの子のことで必死になる俺って。 正直、好きって言われて舞い上がって、急に目の前の女の子が可愛く見えて付き合った…みたいなつもりやったけど。 あれ、これ俺、意外とマジなんか…? ***
2016-06-12 21:56:11![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
70. *** 「横山さんって、**さんと付き合ってるんですか?」 「!?、あっつ!!」 庶務の女の子が淹れてくれたお茶を俺のデスクに置きながら唐突にそう言って。 動揺のあまり、その淹れたてのお茶をこぼすというベタなハプニング。 「あーあ、何やってるんですかもう…」
2016-06-19 21:57:01![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
71. 今日コーヒーじゃなくて良かったですね、と布巾を差し出す。 やたら渋い湯呑みに入った玄米茶はきっと村上のリクエスト。 「あっつ…え、で、さっき何て」 ズボンの上にこぼしたお茶を布巾で擦る。 ちょっとあかん部分まで濡れてもーたやんけ。しかも玄米茶ってとこがまた…
2016-06-19 21:57:07![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
72. 「ああ。経理の**さんと付き合ってるんですかって聞きました」 あっけらかんと答えられて、今度は布巾を落としそうになった。 「な、何でそう思うん…」 絞り出した声、震えてへんやろうか。 「いや、なんとなくですけど。最近**さん綺麗になったし」
2016-06-19 21:57:14![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
73. 「横山さんも最近**さんのこと見てるし」 「え…」 バレてる? てか、俺見てんのあいつのこと? 自分でも気付かんかった… 「まあ、ただの勘なんですけどね」 「ああ…」 鋭いな。これが女の勘ってやつか。 「今の横山さんの反応で確信になりましたけど」 「え」
2016-06-19 21:57:20![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
74. 「大丈夫ですよ、誰にも言いませんから」 周りを見渡せば、丁度みんな外回りやら会議やらで席外してて俺らしかおらん。 「え、っと…」 「**さんが横山さんのこと好きなのは結構前から気づいてましたし」 「え!!!」 「ちょ、大きい声出さないで下さい」
2016-06-19 21:57:26![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
75. 会議を終えたらしい村上や他のメンバーがぞろぞろと戻ってくる。 「え、ちょ待って今の話もうちょい詳しく…」 「はい、また次の機会に」 えええ… ばっさりと断られて、彼女は会議から戻ったメンバーにお茶を持って行った。 あの子が俺のこと好きって。知ってたって。
2016-06-19 21:57:33