クズ鉄のミサキの冒険 第四夜「物語のように」

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Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

退屈なときは異なる世界の話をしましょう。

2011-02-25 02:34:02
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

クズ鉄のミサキは決意を籠めて里長への謁見を希望しました。

2011-02-25 02:34:47
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

「里長よ、停滞竜のカブトを退治しましょう」

2011-02-25 02:36:58
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

停滞竜のカブトとは【遺物族】の住む里の近くの山に生息する【ドラゴン族】です。 その姿は誰も知りません。

2011-02-25 02:38:58
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

停滞竜のカブトはその姿を見た人間を意思にする能力があるのです。 数年に一度山から下りてきては木や石になった動物などを食べて山へ帰っていきます。  彼によって何度となく里は全滅の危機に陥りました。

2011-02-25 02:41:24
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

しかし、何人もの犠牲の上に成り立つ観察の結果、停滞竜のカブトの行動には周期性があることがわかったのです。 今では彼がいつ山から下りてくるのかわかるためにその前に食料などを溜めて彼が山から下りてくる数日の間一切外にでないことで死者はもう出ません。

2011-02-25 02:43:18
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

「しかし里長、我々が【鳥獣族】の雛を受け入れたことによってこの里は昔に比べ大きく外との関わりを持っています。【鳥獣族】が定期的に立ち寄ることによって貿易は徐々に盛んになっています。停滞竜のカブトがいてはこれ以上里が発展する際に必ずや障害になりましょう」

2011-02-25 02:45:57
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

昔は里は里だけでほぼ完結していました、だからこそ里の時間を止めることができたのです。 でも今はもう無理です。 外と大きく関わりを持った今は数日の間里の流通、生産を止めてしまえばそれだけ外との差は開きます。

2011-02-25 02:47:04
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

「ミサキよ……お前の言うことはわかる。だが、ワシにはそれを決断することはできない。ワシはこれまで大きな失敗もせず里長としてやってきた。だが、ここで停滞竜のカブトを倒すことを決断して大きな犠牲を出して失敗すれば後生のものはワシをなんという?」

2011-02-25 02:49:08
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

「ですが里長、彼を捨て置けば必ずやこの里の発展の邪魔になります!里長は後生の人々にその障害を放置したまま代替わりするつもりなのですか?」

2011-02-25 02:50:31
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

「それでもワシはリスクを負うことはできん……。ワシにとっておそらくお前が考えている以上に里長としての評価という物は大きいのだ、それはワシの人生の評価と等価なのだ。ワシは後生の人に愚かな里長として名を残したくはない……」

2011-02-25 02:52:31
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

「わかりました。……しかし里長、せめて彼を退治した物に褒美を与えることを宣言しましょう。もしそれで誰かが停滞竜のカブトを退治すれば後世の人は貴方を賢者だと褒め称えるでしょう、仮に誰も退治しなくても失う物はありません」

2011-02-25 02:55:32
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

「そうだな、そうしよう。しかし、ミサキよお前がそこまでこの里のことを考えていたとは意外だったぞ」

2011-02-25 02:56:08
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

実のところこの謁見の成果はクズ鉄のミサキにとってまったくの予想通りでした。 ミサキにとって「後々のためにリスクを負うべきである」と思ったまま「今リスクを負いたくない」となにもしないで時が流れる感覚は非常に想像に容易く、それ故に里長の返答もまったく想像通りだったのです。

2011-02-25 02:59:33
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

ミサキは【鳥獣族】の雛たちに物語を聞かせるために多くの本を読み【ドラゴン族】についても多くのことを知りました。 その上でミサキが知ったのは【ドラゴン族】は一人では倒せないということです。

2011-02-25 03:02:00
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

英雄と呼ばれる一人で【ドラゴン族】を倒した人間も多く語り継がれています。 しかし、彼らが【ドラゴン族】に勝てたのは多くの被害が出て、それによって【ドラゴン族】の情報を得られたからです。 

2011-02-25 03:04:11
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

たまたま「【ドラゴン族】を倒す」という役割を英雄が果たしただけであり、彼らの勝利というのは集団の勝利です。 【ドラゴン族】というのはそれだけ強大で、まさしく大陸に住む全ての生き物にとっての災害なのです。

2011-02-25 03:05:12
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

しかし、停滞竜のカブトは多くの情報を得ていても「数日の間外に出なければ死者はでない」ということで誰も倒そうとしなかった【ドラゴン族】です。 すでに退治されるだけの情報はおそらく揃っている、とクズ鉄のミサキは考えました。

2011-02-25 03:08:52
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

もしクズ鉄のミサキが【ドラゴン族】を倒し褒美を得ることができればミサキは安心して里を出て行くことができ、好きなだけ《善行》をこなすことができます。 彼を縛っているのは「働いてお金を得なければ生きていけない」というそれだけのルールなのですから。

2011-02-25 03:12:30
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

だからこそ彼は里長に停滞竜のカブトを倒した物に褒美を出させることを約束させたのです。

2011-02-25 03:13:18
Sin・蝉ミキサー12thグーラ @sm_12th_Gula

@sm_14th_Invidia 随分と行動的で前向きなんだな。 一夜で自殺を考えてた人間とは思えないな。

2011-02-25 03:16:23
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

@sm_12th_Gula 彼は死ぬことを選んだときとは違うもの。 今の彼は黒い雲のヒジリに好かれているから。

2011-02-25 03:18:44