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yunishio @yunishio
東京ビッグサイトで2008年、上りのエスカレーターが急停止して逆走し、けが人を出した事故について、昇降機等事故調査部会の「事故調査報告書」を読んでみた。事故の直接原因は、結論からいうと「ボルトの緩み」。 →mlit.go.jp/common/0010660…
yunishio @yunishio
事故のあったエスカレーターを横から見ると、こんな感じ。本体構造(濃い青)はトラス構造になっており、頑丈そのもの。エスカレーターを上りきったところの床下に、固定ベッド(緑)という鉄枠がトラスに固定されていて、この事故ではトラスや固定ベッドに異常は見られなかった。 pic.twitter.com/V8ZBcnj0zS
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yunishio @yunishio
固定ベッド(緑)の上に、さらに可動ベッド(赤)という鉄枠がボルトで固定され、駆動機(黄色)…つまりモーターはこの可動ベッドに固定されている。駆動機から出ている歯車(スプロケット)に、駆動くさり(黒の破線)をからめ、踏み段を引っぱり上げる仕組み。
yunishio @yunishio
説明を簡単にするため、図や本文では省略していますが、実際は駆動スプロケットが踏み段を直接引き上げているのではなく、中間に踏み段スプロケットが挟まっていて、こいつが踏み段くさりで引きあげています。あと、モーターとスプロケットが直結してないとか、ブレーキとか、ぜんぶ省略。
yunishio @yunishio
固定ベッド周辺を上から見ると、こういう感じ。駆動機の歯車(スプロケット)が、片側にしか付いていないことに注意。つまり、利用者の体重はくさりを通じて駆動機の片側だけにかかっている。なので、可動ベッド(赤)をしっかり固定しなければ、片側だけが引っ張られてズレてしまう。 pic.twitter.com/iDkScuUvEw
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yunishio @yunishio
そうならないように、可動ベッドの4隅にクソぶっとい固定ボルト(水色)で固定ベッドにがっつり縫いつけ、さらに押しボルト(濃い青)をスタッドプレート(オレンジ)越しに横からも押しつけている。ガイドプレートも可動ベッドの回転防止に役立つ。
yunishio @yunishio
2008年の東京ビッグサイトでは、なにが起きていたのか。そのときエスカレーターには最大125人の利用者が乗っていた。平均体重を80kgとしても、積載荷重水平力(重みに耐える力と考えてください)は38,633Nしかかかってない。この機種なら、54,560Nまで耐えられるはずだった。
yunishio @yunishio
では、なぜ事故が起きたのか…。固定ボルト(水色)に緩みがあり、しっかり締められていなかったため、可動ベッドが重みに耐えきれずに回転していたのだ。しかもスタッドプレート(オレンジ)の厚みが薄すぎて押しボルト(濃い青)が抜け、ガイドプレートも可動ベッドにへし曲げられてしまった。 pic.twitter.com/7iHtDksn5f
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yunishio @yunishio
その結果、歯車(スプロケット)が踏み段側に40mmほどズレてしまい、駆動くさりとの隙間が空いてしまった。利用者の体重はくさりを通じて歯車にかかっているが、歯車とくさりの隙間がゆるゆるなので、上滑り状態になり、ブレーキもきかずに逆走してしまったというわけなのだ。
yunishio @yunishio
横から見た図。可動ベッド(赤)が約40mm引き寄せられたため、駆動スプロケット(歯車)と駆動くさりとの間に隙間が空いて、空回り状態になっていた。(踏み段スプロケット(水色)の方が高い位置にあり、駆動スプロケットや可動ベッドには常に斜め上に引っ張る力が働いている) pic.twitter.com/0oUJPcuBD5
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ああ、しまった。この図では踏み段側のスタッドプレートに乗り上げたように書いてしまってるけど、実際の乗り上げたのは反対側、乗降口側のガイドプレートですね。この図はもう修正しないので、詳しくは最初のツイートのリンク先「事故調査報告書」をご覧ください。

yunishio @yunishio
事故を引き起こした直接原因は「ボルトの緩み」だが、そもそもこの機種の設計そのものもマズかったようだ。さきほど54,560Nまで耐えられると書いたが、これは設計上の荷重の1.9倍にすぎない。他社の製品では、7~8倍は安全寄りに作っていた。
yunishio @yunishio
他社と同じように7倍以上の荷重(199,715N)に耐えられるように作っていれば、もし利用者125人の体重がみんな小錦クラス(280kg)だったとしても(135,214N)、ぜーんぜん余裕で耐えられたはずなのだ。
yunishio @yunishio
…というわけで、2008年の東京ビッグサイトにおけるエスカレーター事故は、直接原因が「ボルトの緩み」、根本原因が「設計上の安全係数の小ささ」によって引き起こされたということになるわけです。

コメント

山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015 2017年3月19日
僕も当時ちょっと調べたな。重量が超過しても、普通なら停止するだけで、逆走はしないはずなんだよね。
山本弘 『BIS ビブリオバトル部』 @hirorin0015 2017年3月19日
「一段に3人も4人も乗っていた」というデマも流れた。実際にはあのエスカレーターの幅は駅などにある標準的なエスカレーターと同じで、ぎりぎり一段に3人までは乗れるけど、4人乗るのは不可能だった。
第四干瓢期 @0086smart 2017年3月19日
『日経ものづくり』でも当初から「原因は安全率の低さでは」と指摘していたそうで。http://kumikomigijutsu.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-2a28.html
D-A/Zop ous @ZopPure 2017年3月19日
ボルトの緩みが無くても、2倍だと止まらずに登ってる人が一定数いたら着地衝撃で振り切れるよなぁ……
アルビレオ@炙りカルビ @albireo_B 2017年3月20日
ZopPure 全スッテップに人が乗っている状態では歩くのは無理です。登っている人がいるということはそれができるスペースがあるということ。とはいっても安全率2倍は低い気がしますね
ashen@一週間のご無沙汰でした。 @Dol_Paula 2017年3月20日
ワンフェス開催時に発生した事故だけに、当初は限定商品目当てにエスカレーターに人が殺到したからとか、警察発表のこともあってヲタ叩きのネタにされてましたな。
小花幸多 @YUKITA_OBANA 2017年3月20日
こういうのも風評被害だよねぇ
🦀小野友範🦀 @tomonori1003 2017年3月20日
コミケとワンフェスでヲタクがエスカレーターに対して学んだことは「エスカレーターで歩くと危ない」
yunishio @yunishio 2017年3月20日
事故時の状況を横から見た図を追加しました。
@6roku3 2017年3月20日
事故当時のエスカレーターで歩いてる人なんかいませんでしたよ。列がそのままエスカレーターに誘導されるんで全段に二人ずつみっちり詰まって乗るという乗り方でしたので。
Vostok @vostok7777 2017年3月20日
tomonori1003 一人も歩いていないのですが…
中秋の柴犬 @sbinnn21 2017年3月20日
事故前日までは耐えられて、当日はついに限度を超えた最後の一押しは、客が多くて「125人の荷重に耐えられなかった」事なんだけど、そういう一つの要素と「原因」は違うということですね
yunishio @yunishio 2017年3月20日
一定ラインを越える荷重があったときモーターが止まり、ブレーキがかかるってところまでが「正常動作」なのです。この事故は、(a)-1, その「一定ライン」そのものが設計不良により他社よりもともと低く、(a)-2, 整備不良によりさらに低下していた、(b) さらに設定が甘くブレーキが正常にかからず逆走した、ということみたいですね。
yunishio @yunishio 2017年3月20日
ああ、ごめん。上のコメントは無視して…。もともと他社に比べて安全性能が低かったのが、整備不良などによりさらに悪化し、当然クリアして然るべき上記ラインを割りこんじゃったってことですね。過剰に荷重がかかったときモーターが止まりブレーキがかかるところまでが「正常動作」という点は前回コメントと同じです。
@erevetan 2017年3月22日
ボルトが緩んだ原因は歩行などによる振動でしょうか?まあ適度にメンテナンスされていれば大丈夫なはずでそしょうが。
yunishio @yunishio 2017年3月23日
erevetan 「緩んだ」というよりは、「設置の段階からきちんと締められていなかった」「どのくらいのきつさで締めるというルールがなかった」という感じです。
@erevetan 2017年3月23日
yunishio 締め具合に規定がないなりに締めてはいたものの、その加減が適切ではなかったという感じだったのですね。返信ありがとうございます。
最終日本黒幕XX7SP1フレンズVer1.0 @WorldKuromaku 2017年4月8日
自転車のディレイラーのバネが経年劣化したらチェーンが飛ぶのと同じだな。しっかし規定トルクもないとはエスカレーターもいい加減なものだ
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