センディスとブロンディスの話

センディスと、彼が愛したブロンディス・フロンチェスカという女性の話。ゴルディウス・フランチェスカに繋がる物語。
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センディス @sendis_19

@goldius_m 彼女に貰った名を呼ばれて。 はにかんだ。 「レイには苗字があったけど、僕にはなかったし、何よりセンって名前が番号からついたって言ったら、ブロンディスがもっと人間味のある名前にしよう!!って」 「人間味ってなんだろって僕、爆笑しながら、ちょっと期待してたら」

2015-06-15 20:17:05
センディス @sendis_19

@goldius_m 「センに、私の名前の後ろのディスをくっつけようって。そしたら人名っぽさすごい上がるって……っふふはは!雑にもほどが!」 あまりの単純さに思い出し笑いが来た。 言葉が続けられずに声を出して笑った。

2015-06-15 20:21:01
ブリード(同盟) @goldius_m

@sendis_19 「だから、センディス、か。じゃあ私と出会えば貴様はセンディウスになってた可能性があるわけだな」 珍しく豪快に笑う彼を見て、ふむふむと興味深そうに目を細める。 珍しい、からこそ。 続きは促したくなかったが。 「…………で」

2015-06-15 20:24:50
センディス @sendis_19

@goldius_m 「センディウス……っ!!」 椅子から転げ落ちるところだった。 ひぃ、と呼吸を落ち着かせ、ゆっくりと話に戻る。 なぜこんなに楽しい話で終わらなかったんだろう。どうして続いてしまうのだろう。 「で、ね」

2015-06-15 20:30:14
センディス @sendis_19

@goldius_m 「そんな風にさ、優しくされて、僕はブロンディスに恋をしてた」 「けど」 「ブロンディスはそうじゃなかった」 どれだけ受け止めていても言葉にすると、案外苦しいものだなと、他人事のように思った。 「というのも簡単な話、レイと両想いだったんだよねぇ」

2015-06-15 20:34:58
センディス @sendis_19

@goldius_m 「ブロンディスに好きだって伝える前にそれに気づいちゃったから。僕は結局、ブロンディスに好きだって言えてないの」 少し俯く。 「でもそれでもよかった。それで、二人が仲良しで、僕もそのそばにいられるんなら、ずっとこのままならいいって」 そう思っていた。

2015-06-15 20:38:27
ブリード(同盟) @goldius_m

@sendis_19 「………………」 自己犠牲な、やつめ。 いいかけて、やめた。 「ずっと、そのままでは、なかったんだな」

2015-06-15 20:52:25
センディス @sendis_19

@goldius_m ここからだ。 ここからが僕の知る、僕の投げ込まれた地獄だ。 汗ばむ指を弄びながら、続ける。 「そのままじゃなかった」 「簡単に壊れたよ。大切に守ってきたものは」 「もともと僕らの日々は危うい均衡の上にあったんだから」

2015-06-15 20:56:51
センディス @sendis_19

@goldius_m 「話は初めに戻るけど、僕らのいた領は普通に見えたって僕言ったね」 「普通なんかじゃなかった」 「あの領は、領主とその周りの一部によって裏ではこの世界に絶望をもたらすために動かされていた」 「今なら、領主が与していた組織の名前がわかる」 「パンドラだよ」

2015-06-15 21:01:46
センディス @sendis_19

@goldius_m ふ、とひとつ呼吸を置く 「穏やかな普通の領に見せかけて、裏では勝てるわけもない戦場に軍を投入しては、いたずらに戦況を長引かせたり」 「武器や食料なんかをパンドラに関わる者へと流したり」 「民は何も知らなかった。何も知らずに貧富に嘆き、愛する者の戦死に嘆いた」

2015-06-15 21:10:25
センディス @sendis_19

@goldius_m 「巧みな情報操作とパンドラからの支援でね。全然誰も気づかず、気づいた者は消されてきたみたい」 「その中で気付きながら無事だったのがブロンディスだよ」 「本当にね、優秀だったんだ。だから領の現状に気付いた上で、改革を企んだ」

2015-06-15 21:15:23
センディス @sendis_19

@goldius_m 「そっと、そっと、毎日毎日、少しずつ、いつか悪い領主をひっくり返すために計画を練り、専属魔法師っていう領の頭脳としての立場を利用して自分の計画の種を色んな所に組み込んで」 「それでもどれだけ彼女は胸を痛めてたか。今嘆く領民を救えないことにいつも苦しんでた」

2015-06-15 21:19:13
センディス @sendis_19

@goldius_m 「………………」 「まあ僕がその苦しみをきちんと知るのは、最後の最後なんだけど」 「そういう苦しい戦いの中で、ブロンディスにとってレイの存在がどれだけ大きかったかは、言わなくてもわかるよね?」 「恋人はやっぱり心の支えだよ」

2015-06-15 21:22:01
センディス @sendis_19

@goldius_m 「なかなか進展しないどころか、刻一刻と悪くなっていくような状況に削れていくブロンディスを、僕は深い理由を知らないなりに心配してた」 「そんなある日に、僕とレイが呼ばれた。次の戦場へ、急いで戦力を投入したいってね」

2015-06-15 21:26:25
センディス @sendis_19

@goldius_m 「ついに僕らに傭兵らしい仕事が回ってきたわけだ」 「でも護衛がいなくては困るから、どちらか一人を速やかに出立させると言われて、レイと顔を見合わせた」 「僕は、ね」 「その時ちょうどブロンディスにお使いを頼まれてた」 「本当にちょっとした頼まれ事だった」

2015-06-15 21:30:09
センディス @sendis_19

@goldius_m 「レイもそれを知ってた」 「だから」 「俺が行くって、レイは言った。すぐに出なくちゃいけないなら、ブロンディスに頼まれた物ちゃんと渡せないだろうって」 「そう言って、笑って、ブロンディスに頑張って戦果あげて帰るって伝えてくれって、僕は」

2015-06-15 21:33:23
センディス @sendis_19

@goldius_m 「僕が、残って」 「レイが戦場へ出て」 「そして、レイは帰ってこなかった」

2015-06-15 21:35:02
センディス @sendis_19

@goldius_m 「この領の軍がよく絶望的な戦場に行かされることを知ってたブロンディスは、戻った僕がレイの出立を伝えた時、真っ青になった」 「けど、まさか大金はたいて雇った傭兵をむざむざそんな戦場へは出さないだろうって、そう考えた」 「そう考えて信じて待った」

2015-06-15 22:07:43
センディス @sendis_19

@goldius_m 「僕も、大丈夫だって」 「無責任に」 「だってレイは戦果あげて帰るって言ったものって、ブロンディスを励まして待った」 「でも、しばらく経って戻ってきたのは、部隊の壊滅っていう最悪の報せだったよ」

2015-06-15 22:14:55
センディス @sendis_19

@goldius_m 「そこからはもう、あっという間に崩れ落ちていくようだった」 「ブロンディスはもう、戻れないところまで絶望してたんだと思う」 「支えだったレイを失って。領の外の傭兵すら雇い入れては殺すようにエスカレートした領主にも、それを今止められない自分にも絶望した」

2015-06-15 22:19:57
センディス @sendis_19

@goldius_m 「そしてついにブロンディスは口を開いてしまった」 「領主に向かって、真っ直ぐに、その在り方を批判して」 「その場で殺されなかっただけマシだった。のかな。わからないけど。大事な専属魔法師だったこともあって、ブロンディスは殺されずに拘束されたんだよ」

2015-06-15 22:25:51
センディス @sendis_19

@goldius_m 「お屋敷の一室に閉じ込められて。何もできなくされて。無力を味わった彼女が最後にすがった希望は、僕だった」 そこから先の言葉が上手く出てこない。 語らなくちゃ。 喉の奥から絞り出した声は、みっともない呻きだった。 「その希望に、すがってほしくなかった」

2015-06-15 22:33:08
センディス @sendis_19

@goldius_m 涙が出る前に、語らなくちゃ。 「……っ突然隔離されたブロンディスに、僕は当然不安になって、でも彼女に会うことは出来なくて」 「それでも我慢できなくなった僕は、その後の処罰も覚悟で、隙を見つけて、警備を昏倒させたりもして、ブロンディスに会いに行ったんだ」

2015-06-15 22:42:17
センディス @sendis_19

@goldius_m 「整えられた部屋の中で、自殺の術すら奪われたブロンディスは静かに笑ってた」 「決死の覚悟で飛び込んできた僕に、待ってたぞって笑って」 「抱きしめてくれた」 「僕はもうその時、ブロンディスを攫ってこのまま逃げてしまおうって、そう思った」

2015-06-15 22:47:28
センディス @sendis_19

@goldius_m 「でも」 「こんな領逃げだしてやろうよって言う僕に、ブロンディスは全部話してくれた」 「この領の真実も、ブロンディスが今までやってきたことも、全部全部」 「ぽかんとしてる僕を抱きしめたまま、ブロンディスは最後の希望を僕に話して、縋った」

2015-06-15 22:50:57
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