センディスとブロンディスの話

センディスと、彼が愛したブロンディス・フロンチェスカという女性の話。ゴルディウス・フランチェスカに繋がる物語。
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センディス @sendis_19

@goldius_m 日も落ちる頃、相棒の部屋の戸を叩く。 「ゴルディウス、いる?」 いると分かりきっているのに。 緊張のせいだろうか。

2015-06-15 17:51:09
ブリード(同盟) @goldius_m

@sendis_19 数瞬間をおいて、ガチャリ、と扉を開ける。 「……どうした?」  少し前まで眠っていたからか、ひどくぼんやりとした声が出た。片方しかない視界で、少し不安そうなセンディスの表情を見て、頷く。 体を扉の脇に寄せて、無事な左手でどうぞ、と促す。

2015-06-15 17:53:58
センディス @sendis_19

@goldius_m 「あ、ごめんね、寝てたの」 相変わらず体の半分くらいが植物に覆われ、やはり不自由そうな挙動が気になるが、そのまま部屋に入った。

2015-06-15 17:58:00
ブリード(同盟) @goldius_m

@sendis_19 「うん……まあ、大丈夫」 扉を閉めて、ベッド脇の小机に近づく。置いてあったティーポットから紅茶をついで、センディスを椅子に座るように促した。 自分は、ベッドに座る。 「……で? 何か話したい事でもあるんだろ」

2015-06-15 18:02:45
センディス @sendis_19

@goldius_m 植物の匂いが満ちた空気に、紅茶の香りが広がって、ほう、と息をつく。 ベッドに腰掛けたゴルディウスの方へ、視線を向けることすら上手くできずに、しばし。 一つ呼吸をして、口を開いた。 「ずっと、話せてなかったことを話しに来たんだ」

2015-06-15 18:07:04
センディス @sendis_19

@goldius_m 「ブロンディスの、ことを」

2015-06-15 18:07:29
ブリード(同盟) @goldius_m

@sendis_19 「……そういえば、お前から聞く前に、私たちはここに飛ばされたんだったな」 ふっと苦笑いをして、頷いた。 「あぁ、そうだな。教えてくれ。お前がどのようにして、ブロンディス……姉さんと出会ったかを。そして、姉さんの最後を。死の理由を」

2015-06-15 18:10:20
センディス @sendis_19

@goldius_m 「そう。本当なら、こんなところに来てなければ、とっくに話してたはずの話だから」 僕の罪とか、罰とか。そういうもの。 窓を叩く風の音が思い出されるあの日に似ていて、嫌になる。 「ブロンディスに会ったのは、何年も前、連合のとある領だったよ」 →

2015-06-15 18:15:45
センディス @sendis_19

@goldius_m 告げた領の名前は聞いたことがあるかもしれない。 「彼女がアカデミーを出て、初めて仕えた……そして、最後に仕えた領だよ」 「僕はそこの領主に雇いこまれた傭兵だった」

2015-06-15 18:18:46
ブリード(同盟) @goldius_m

@sendis_19 「……うん」 のんびり、相槌をうって、言葉を促す。

2015-06-15 18:22:07
センディス @sendis_19

@goldius_m のんびりとしたいつもの相槌に、少し安堵した。 「普通の領に見えた。そう大きくはない、貧富の差もある、軍もあって、戦で死んで帰ってくる人もいる、普通の」 「僕はてっきりそこのまあ強くない軍に組み込まれて、戦力になるもんだとばかり思っていたんだけど、違った」

2015-06-15 18:31:16
センディス @sendis_19

@goldius_m 「仕事場だって案内されたのは、領主のおっきいお屋敷の一室で。その中にいたのが、ブロンディスだった」 「僕と、その時一緒に雇われたもう一人の傭兵くんは顔を見合わせたよ」 「僕らの仕事は、よりによって戦場なんかには出ない、一人の魔法師の護衛だった」

2015-06-15 18:34:31
ブリード(同盟) @goldius_m

@sendis_19 「……あの姉さんに護衛か」 口元を押さえてくすくすと笑った。 「好きものだな。まあ、魔法師の価値は高い。私のような木偶でなければ、そのような扱いを受けるのは当然ともいえるか。そこで会ったわけだな」

2015-06-15 18:36:44
センディス @sendis_19

@goldius_m おかしそうに笑うゴルディウスにつられてくすり。 「ふふ、わかる。今なら僕もそう思うよ。あんなのに護衛なんてって」 「でもあの時は何も知らなかったから、ただのかわいい女の子に見えたし、なるほど、これは守らなくちゃって思ったよ。その後すぐ認識を改めたけど」

2015-06-15 18:42:05
センディス @sendis_19

@goldius_m 「それに君の言うように、領主はブロンディスを大層丁寧に、大事に大事に扱ってた。若くしてアカデミーを出た優秀な魔法師であるのもあったけど、絶対に個人的な好意の欲目もあっただろうなって思う」 「ブロンディス、綺麗だったから」

2015-06-15 18:46:42
センディス @sendis_19

@goldius_m 胸も大きかったし、とは言わないでおいた。そこは個人の趣味だ。 「まあとにかく、僕ともう一人の傭兵二人組はそんなお姫さまみたいなブロンディスの護衛として、おそらく彼女の一番身近な位置に置かれた」

2015-06-15 18:52:04
センディス @sendis_19

@goldius_m 「僕ら二人、もう一人の傭兵である男の子はレイって名前だったけど、そいつと二人で一瞬テンションは上がったよ。可愛い女の子相手かって」 「でもすぐに打ち砕かれた」 「……ブロンディスったらものの二日くらいで素のあの雑な本性を見せてきたんだもの」 酷い話だった。

2015-06-15 18:54:51
ブリード(同盟) @goldius_m

@sendis_19 「……ぎゃっはっはっはっは!!」 聞き入っていたが、最後の言葉を聞いて、手を叩いて爆笑した。 「むしろよく2日持ったなあ、おい」 あの姉の雑な影を思い出して、目を細める。大人しくする事でも覚えたか。 「成程、成程な。可愛い魔法師様は手元に置いておきたいと」

2015-06-15 18:57:16
ブリード(同盟) @goldius_m

@sendis_19 「私も、アイツの三つ子でよかったと思っているよ。この顔は気に入っている。籠絡に便利でな」 冗談めかして肩を竦め、センディスの顔をちらり。 大体、分かってきた。 「それで? その『可愛い女の子』はどうなったんだか」

2015-06-15 18:59:12
センディス @sendis_19

@goldius_m 笑いながら語る。僕と、レイと、ブロンディスで過ごした馬鹿みたいに騒がしかった日々を。 「可愛い可愛いブロンディスは散々僕らをからかったり悩ませたりしてくれたよ、ほんと」 「でも、僕はそんなブロンディスが好きになった」

2015-06-15 19:09:04
センディス @sendis_19

@goldius_m 「好きにならないわけがないんだよ。ブロンディスは、雑で全然女の子っぽくなくて悪戯好きでメイジのくせに馬鹿みたいに肉体派だったけど、本当に優秀で優しかったんだから」

2015-06-15 19:15:14
センディス @sendis_19

@goldius_m 「領民にも人気だったしね」 街を歩くだけで、大人から子供まで色んな人に笑顔を与えていた。その後ろについて歩いていた時の晴れやかな気持ちを今でも覚えている。 「学のない僕に、暇つぶしと言ってあれこれ知識を詰め込んだのはブロンディスさ」

2015-06-15 19:17:45
センディス @sendis_19

@goldius_m 「領の頭脳として毎日忙しかったのに。その間を縫っては遊んで学ばせてくれた」 まあ、彼女の事だから、単純に息抜きとして楽しんでたとは思うけどね、と笑う。 本当に大事なものばかりもらっていた。

2015-06-15 19:24:06
センディス @sendis_19

@goldius_m 「あ、そうそう」 「この名前を僕にくれたのもブロンディスだよ」 「ブロンディスに出会わなければ、僕は今でも、セン、だっただろうね」

2015-06-15 19:24:52
ブリード(同盟) @goldius_m

@sendis_19 「私の姉がつけた名前を呼んでいたわけか、私は」 目を丸くして、じっとセンディスを見返す。そのうちに、楽しくなって、ふふっと笑みをこぼして呼んだ。 「センディス」 「いい名前を付けたものだな、あいつは」

2015-06-15 20:12:54
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